そんなリヴァプールにとって、2024年夏は大きな転機だった。
9年間チームを指揮して数々のタイトルをもたらし、その熱狂的なキャラクターで絶大な人気を誇ったユルゲン・クロップが退任。新たにアルネ・スロットを迎えた。多くのクラブ同様、長年チームの顔だった指揮官が去ったことで苦戦を強いられると予想した人は少なくない。だが蓋を開けてみれば、第6節からほぼ首位の座を譲らず。234日間に渡って順位表のトップに立ち続け、圧倒的な強さで5年ぶり2度目のプレミアリーグ制覇を達成している。
イアン・ラッシュ氏は、こうした強さの背景に「ファン・サポーターを含めてチーム全体が1つになってきた歴史がある」と指摘する。またクロップとスロットの関係について、リヴァプールの伝説的な指揮官の名前を挙げて説明した。
「チームスピリットであったり、サポーターの声であったり、みんなが1つとなって戦うことが重要です。これは連勝している時は簡単ですが、苦しいときにこそ1つになり続けるのは本当に難しい。でも、みんなが1つになれば大きな結果を残すことができます。例えば、昨季序盤の試合で0-1で負けていた時、それでもファン・サポーターを含めた全員が諦めずに戦って、2-1と逆転勝利することもできました」
「私が『1つになる』と話しているのはピッチ上の話だけじゃなくて、ピッチ外でも一致団結することが必要になります。それが具現化した時、アンフィールドは(相手にとって)非常にプレーするのが難しい場所になりますね」
「クロップとスロットは、私の時代で言えばビル・シャンクリー(※)とボブ・ペイズリー(※)のような関係だと思います。両者ともチームスピリットや基礎を築くことに重きをおいてチーム文化を築き上げましたが、2人とも異なるコーチングスタイルを持っていました」
「クロップやビル・シャンクリーはどちらかと言えば指示をたくさん叫んだりして、タッチラインでも熱意を全面に出すタイプでした。スロットはどちらかと言うとボブ・ペイズリーのように、落ち着いていてあまり声を荒げない。異なるスタイルではありますが、共通しているのは全員がチームスピリットを大切にすることですね。2人の名将のように、良い移行ができたと思っています」
※ビル・シャンクリー(1959~1974):リーグ優勝3回、FAカップ優勝2回、UEFAカップ優勝1回
※ボブ・ペイズリー(1974~1983):リーグ優勝6回、リーグカップ3回、UEFAカップ優勝1回、UEFAチャンピオンズカップ優勝3回