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サラーの代わりを完璧に務められるのはザネか。リヴァプールがドイツ代表ウイングに興味を示す理由

移籍市場が閉まる直前、モハメド・サラーを欲しいというアル・イテハドのオファーをリヴァプールがすべて拒否することを決めたのは、まったくもって当然のことだった。現在リヴァプールがプレミアリーグの上位4チームに復帰し、タイトル争いという夢に進めている主な理由のひとつは、エジプト代表の王たるサラーなのである。

サラーが、今現在のユルゲン・クロップ監督のチームに重要な選手であるとしても、リヴァプールは避けられないことを単に先延ばしにしただけだという感もある。1月の移籍市場でサラーが移籍するというのは、テーブルの上にどれほどの大金が乗せられても依然として難しいことだろうが、それでも来年の夏になれば話はまったく違ってくるかもしれない。

結局のところ、サラーは来年の6月で32歳になり、リヴァプールとの契約もたったの1年しか残っていない。リヴァプールが遅まきながらチームの得点源を現金化しようとしても、それは完全に理にかなっていると言えるだろう。もちろん、彼の代わりを見つけることは容易なことではない。たとえいくつか素晴らしい選択肢があるとしても。

現在、他のほとんどの選手に比べて特に移籍の噂が多く生まれている選手は、リロイ・ザネである。そして、サラーの後継者として理想的な人物として、リヴァプールがそのバイエルン・ミュンヘンの選手を見ているとしたら、その理由は容易に理解できる。一方で、サポーターたちの間に、ある程度の懐疑的な見方があることも理解できるのだ。

  • Leroy Sane Pep Guardiola Manchester City Getty

    リヴァプールの天敵

    リヴァプールは、ザネがどれほど危険な選手になりえるか、よく知っている。ザネは、マンチェスター・シティ時代にレッズ戦で4得点を挙げている。負けたのはたった一度、2018-19シーズンのプレミアリーグでだけだ。そう、彼は史上最大にして最も接戦となったタイトルレースのひとつの結果において、極めて重要な役割を果たしたのだった。

    だが、ファンは、エティハドでのあの歴史的な戦いを前に、すでにザネが絶対的なレギュラーでなくなっていたことも、記憶し続けるだろう。あのシーズン、ザネは自身のキャリアにおいて最多の16得点を記録したにもかかわらず、チームを去りたがっているという憶測はすでに始まっていたのだ。

    グアルディオラ監督は、2017-18シーズンにPFA年間最優秀若手選手賞を受賞したザネがチームにいても、まったく嬉しくないという事実を隠そうとすらしなかった。問題はザネの運動量だった。グアルディオラ監督は、若いザネが、非ポゼッション時に守備の仕事を果たしていないと感じていた。かの有名なザネの怠惰な態度に苛立っていることを認め、そのせいで実力が後退していると思っていた。

    「私は彼に多くを要求しており、時には彼に厳しくすることがある。彼の才能はみな知っている。試合でもっとコンスタントにその才能を発揮する手助けがしたいんだ」

    だが、その点においてグアルディオラ監督は失敗し、ザネは2020年、ついにバイエルンへの移籍を果たした。この契約は、前年のコミュニティ・シールドでリヴァプールと対戦した際、膝に重傷を負ったせいでご破算になってしまっていたのだった。

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  • Leroy Sane Hansi Flick Bayern Munich Getty

    ミュンヘンでのさらなる苦闘

    舞台が変わってもザネをめぐる疑念はほとんど払拭されなかった。それどころか、ミュンヘンの関係者の多くが、このウイングはそもそもバイエルンに合っていないと感じており、疑念は増す一方だった。ザネにはアリアンツ・アリーナで必要とされる根性、決意、勝利のメンタルが欠けていると思われたのだった。

    ザネはバイエルンにいた最初の3シーズン、全公式戦で二桁得点を記録していったが、輝きは単発的だった。

    バイエルンに来たばかりの頃、ザネは当時のハンジ・フリック監督のもとでプレーできて嬉しいと熱狂的に語っていた。フリック監督と初めて出会ったのはドイツのU-21代表になった時だった。しかしながら、後に、フリック監督がザネではなくティモ・ヴェルナーと契約するようクラブにプッシュしていたことが判明する。つまり、これは、まさにハサン・サリハミジッチらしい取引だったのだ。ザネ自身も認めたように、「最初の瞬間から取引の後ろに」このスポーツ・ディレクターがいたのである。

    こうした状況下で、当然のことながらザネは苦労しただろう。フリック監督は常に労働倫理を説き続け、ザネを90分フルで使うことはほとんどなかった。

  • Leroy Sane Julian Nagelsmann Bayern Munich Getty

    ポジション問題

    ユリアン・ナーゲルスマンが監督に就任し、ザネはアリアンツ・アリーナでの転換点を迎えたかに見えた。新たな若き監督はザネに内側の左の役割を与え、ザネは時にウイング、時に背番号10の役割を堪能した。事実、2021-22シーズンの前半では、ザネは真のスーパースターとなる完璧な選手のように見えた。ウィンター・ブレイク前に10得点し、その半分がチャンピオンズリーグのグループステージで、しのぎを削る試合で決めたものだった。

    ところが、自分でも認めているように、バイエルンでのシーズンは大きな悲鳴とともに止まってしまった。ビジャレアルに敗れ、センセーショナルに敗退したのである。多くの専門家が、4-2-3-1から3-4-3にフォーメーションを変えたナーゲルスマン監督の決断を批判した。右サイドに移ったザネは得点力が劇的に落ちこみ、クリスマス以後たったの4得点。それまでとは別人のようだった。

    ザネもフラストレーションを溜めているのは明らかで、ザネがあきらめたような顔をすることにファンは怒り始めた。ミュンヘンを出ていくと発言し、それもまた、今年早々にナーゲルスマン監督の解任が発表されたことでファンの怒りをあおる結果となった。

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  • Thomas Tuchel Leroy Sane Bayern MunichGetty

    うってつけな時にうってつけの監督か

    3月、電撃解任されたナーゲルスマンに変わってトーマス・トゥヘルが監督になったことがザネの成長にプラスだったのかマイナスだったのか、初めははっきりしなかった。ボルシア・ドルトムント、チェルシー、パリ・サンジェルマンで監督を務めたことがあるトゥヘル監督は、守備面についてフォワードの選手たちに多くを求めるという評判であるが、同時に、ネイマールやピエール=エメリク・オーバメヤンのような難しい性格の選手から最高に近い結果を引き出すことに成功していた。

    トゥヘル監督も、最初の数週間はザネを主に右サイドで起用していた。最初は大した改善は見られなかったが、舞台裏では2人は絆を強めていた。

    このところの移籍の噂にも関わらず、トゥヘル監督は、ザネはチームで重要な役割を担っていると強く主張している。自分は、サッカー界でまだ発揮されていない偉大な才能の持ち主のひとりから、最大限の力を引き出すのにうってつけの監督だと確信しているのだ。

    ザネを左に戻したのは確かにうまく行ったが、それ以上の意味があることが明らかになった。2人の間にはトゥヘル監督が言うところの「良い化学反応」があったのだ。それゆえ、ブンデスリーガを制するために監督がザネを起用したとき、このウイングはそれに従ったのだ。

    ザネはすでに、これまでの1シーズンでの最多得点(8点)を塗り替える勢いで来ているおり、2023-24シーズンは10試合で7得点を決めている。インターナショナル・ブレイクの直前に3-0でフライブルクに勝った後、トゥヘル監督は興奮した様子でこう言った。「このくらい自由に、貪欲に、ポジティブなボディ・ランゲージを使ってプレーし続ければ、ザネは違いを生みだすことができるのだ」。

    ザネはトゥヘル監督が「バイエルンにうってつけの人物」だとは思っていない。だが、選手としてのわきまえはある。「監督とはたくさん話した」と、最近、ザネは語っている。「監督は僕をとてもいい気分にさせてくれるし、大いに信頼している」

  • Harry Kane Leroy Sane Bayern Munich 2023-24Getty

    ケインという要因

    しかしながら、ザネが大いに活躍しているのは、トゥヘル監督の采配のおかげだけではなく、彼の戦術の傾向により、バイエルンが比較的深く引いて、相手ディフェンスの裏に俊足の選手たちが突進できるスペースを多く生みだすことができるからだ。夏にハリー・ケインが加入したことも、調子が突然戻った主な理由のひとつであることは否定できない。

    英語が流ちょうに話せるザネは、トッテナムからやって来たストライカーがバイエルンのロッカールームに馴染むうえで、重要な役割を果たしている。報道によると、2人は良い友情関係を築いているようだ。ケインは現代のサッカー界で最も賢く、機動力のあるフォワードのひとりであり、その動きはザネに思いがけない幸運をもたらしている。イングランド代表のケインはたびたび敵のセンターバックを中盤からサイドへ引っ張りだし、仲間のフォワードたちにやすやすと攻撃できるエリアを提供しているのだ。

    「我々のプレースタイルには、真の背番号9の存在が重要だが、ハリーは深いところへ降りてこられるので、我々はうまく回転することができる」と、最近ザネは指摘している。「僕は、リズムよく中盤の攻撃から前線へ動くのが好きだ。何回かハリーとうまくやれた。もっとたくさん試合や練習をすれば、絶対にもっと良くなる」。

  • Leroy Sane Bayern Munich 2023-24 Getty

    ヨーロッパ最高の破壊力を持つドリブラー

    得点という結果が出ているザネは、これまでのキャリアの中で最高の時を楽しんでいると言えるかもしれない。ケインとのコンビがうまく行っているだけではない。かつてないほど頻繁にゴールを決めているし、プレーを楽しめているようだ。

    試合でプレーする喜びを再発見し、2017-18シーズンのザネと同じくらい自信満々に、選手たちを追い越している。事実、今現在、サッカー界の最高レベルにおいて、ザネほど破壊力のあるドリブラーはいない。27歳のザネは今シーズンこれまでで、45回驚異的なドリブルを決めている。ザネの次に来る選手との差は12回も開いているのだ。

    「彼がどれほどコンスタントに力強いパフォーマンスができるかを見られて、感動している」と、ヨズア・キミッヒは言う。「彼がしているハードワークに見合う結果が出ている。彼は楽しんでいるし、それは僕ら他の選手たちにも影響している」

  • Leroy Sane Bayern 08102023Getty

    レッズにうってつけの選手なのか?

    だが、ザネは、リヴァプールで、来年の夏、サラーの代わりになれるだろうか。

    マンチェスター・シティでのキャリアから外れ、ミュンヘンでの時間の大半であのような苦しみを耐えたのと同じような道をたどるという懸念があるのは明らかだ。とは言え、バイエルンでザネは大人になったと言われており、今こそ、ピーク時のポテンシャルを遅まきながら発揮するのにうってつけの時だ。ザネの才能に変わりはなく、今や、スターに必須の気質も身に着けたようである。守備時のサボリもある程度改善されてきており、クロップ監督のもとで活躍する姿も想像できるようになった。

    ザネにはもっと自由な役割が必要なのは明らかで、戦術を考える必要があるのも確かだ。ザネはひとつのサイドにじっとしていられる選手ではない。バイエルンでは、キングスレイ・コマンと頻繁に左右を交代しており、中央のエリアに入りこむこともある。だが、ほとんどの時間右サイドにいるサラーも、タッチラインに縛られているわけではない。自由に動くことを許されており、リヴァプールにはピッチを縦横無尽に走りまわれる選手が大勢いて、その前線がヨーロッパで最も流動的なもののひとつであるという指摘にも価値がある。

    だが、結局はザネ次第である。長い間欠けていた、コンスタントなプレーができるかどうかなのだ。それができれば、リヴァプールがザネをターゲットにしない理由は完全になくなるだろう。

    ファンはまだ、キリアン・エンバペとの契約を夢見ているかもしれない。だが、コンスタントなプレーができるようになったザネの方が、アンフィールドでのサラーの後継者にふさわしいというのが現実である。

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