2022-23シーズンは、2000年の優勝以来の好成績となるセリエA2位フィニッシュを達成したラツィオ。今夏の移籍市場でも、日本代表MF鎌田大地らを獲得するなど積極的な補強を敢行し、マウリツィオ・サッリ監督体制3シーズン目となる新たなスタートに向けて準備を進めてきた。
今回は、2023-24シーズンの躍進に期待がかかるラツィオの注目選手たちを紹介する。
(C)Getty Images2022-23シーズンは、2000年の優勝以来の好成績となるセリエA2位フィニッシュを達成したラツィオ。今夏の移籍市場でも、日本代表MF鎌田大地らを獲得するなど積極的な補強を敢行し、マウリツィオ・サッリ監督体制3シーズン目となる新たなスタートに向けて準備を進めてきた。
今回は、2023-24シーズンの躍進に期待がかかるラツィオの注目選手たちを紹介する。
Getty Images母国の名門サントスで17歳にしてプロデビューを飾り、2013年にラツィオへ完全移籍。主力の1人として、2014-15シーズンのチャンピオンズリーグ出場権獲得やコッパ・イタリア準優勝に貢献してきた。その後3800万ユーロとされる金額でウェストハムへ移籍するも、結果を残せないまま、2021年には1/10以下の金額でラツィオに復帰。すると慣れ親しんだ場所で輝きを取り戻し、2シーズン連続でセリエA全38試合出場&15ゴール14アシストの成績を残している。ブラジル人ウインガーらしく、テクニック溢れるドリブルと強烈なシュートが武器だったが、サッリ監督の指導の下でフリーランの質やパス能力も飛躍的に向上し、より完成されたチャンスメーカーに進化。前線であればどのポジションでも持ち味を発揮できるアタッカーとなった。鎌田大地との関係構築にも大きな期待がかかる。
(C)Getty Images地元チェゼーナの小さな町ベッラーリアでデビューを飾り、その後ヴェローナへ移籍するも長らくセリエBなどでのプレーが続いた苦労人。それでも2019-20シーズンに初めて本格的に1シーズンをセリエAで過ごすと、翌シーズンは9位躍進の立役者に。そして、2021年夏に加入したラツィオでは公式戦81試合で15ゴール17アシストをマークし、昨年には念願のイタリア代表デビューも果たしている。ドリブルが得意な技巧派アタッカーでありながら、何度もフリーランを繰り返す走力と献身性に溢れ、無理が効く選手でもある。また、サッリの下ではフィニッシュフェーズでの存在感が増しており、昨季は自身初めてシーズン10ゴールをマークした。新シーズンも主力として左サイドを担う存在になりそうだ。
Getty Images地元ローマ出身であり、レンタル期間を除けば常にラツィオでプレーしてきた“ワン・クラブ・マン”。20歳でのトップチームデビュー以降はなかなか出場機会を確保できず、複数回のレンタルも経験したが、サッリ監督の就任によって状況が変化。2シーズン前は公式戦42試合出場、昨季は39試合出場と主力の1人に成長した。元々は攻守に幅広く顔を出すボックス・トゥ・ボックスタイプだったが、サッリの下では中盤底にポジションを取ってボールを捌くアンカータイプに。指揮官の理想である、中盤中央からなるべく動かず2タッチでパスを散らす役割にチャレンジしている。鎌田大地が予想されるインサイドハーフへのパス供給は彼が多くを担う可能性が高く、いち早く関係性を構築したいところだ。
Getty Imagesサッリの“愛弟子”と呼べるサイドバック。同指揮官の下エンポリでプロデビューを飾ると、2015年に恩師を追うようにナポリへ移籍。「世界一美しいサッカー」とも称されたサッリ・サポリで右サイドバックのポジションを確立し、公式戦220試合以上に出場している。そして2年前にサッリ率いるラツィオへと移籍すると、そこでも左右両サイドをこなす欠かせない存在となった。上下動と攻撃参加が武器の典型的なサイドバックではなく、戦術理解度の高さからビルドアップ時には3人目のセンターバックとして振る舞いゲーム構築に貢献するタイプであり、チームに安定をもたらす存在だ。新シーズンも戦術上重要な役割を担うことになりそうだ。
Getty生まれ故郷であるセルビアでプロデビューし、ベルギーを経て、2017年にラツィオへ加入。本来右サイドバックの選手であるが、その高い戦術理解度と総合的なフィジカル能力、ユーティリティ性を武器に、ストライカーとGK以外のポジションはほぼすべて経験するという、まるでジェームズ・ミルナー(現ブライトン)のようにチームに貢献できる選手だ。度重なるケガに見舞われた2019-20シーズン以外は常に公式戦40試合前後に出場し、チーム内の信頼も厚い。新シーズンもチーム事情に合わせて幅広いタスクを高いレベルで担ってくれるだろう。
Casale Lazioヴェローナの下部組織出身で、その後は長い間様々なクラブをレンタルで渡り歩き、セリエBやCでのプレーを経験。2020-21シーズンにエンポリでセリエB優勝を経験すると、ヴェローナへ戻って2021年に23歳でセリエAデビューを果たした。そして1年間で36試合に出場して評価を高めると、昨年ラツィオへとステップアップ。ポジションを掴んで公式戦37試合に出場している。機動力とフィジカルに優れるセンターバックであり、相手アタッカーとの走りあいにも負けないタイプ。また精度の高いロングフィードも武器の1つだ。昨季はリーグ2位の失点数(30)に抑えたラツィオだが、彼とアレッシオ・ロマニョーリのコンビが大きな役割を担ったことは間違いない。新シーズンもDFラインに君臨することが求められる。
Gettyペスカーラで台頭し、ドルトムント、セビージャへの国外挑戦失敗を経て、2016年にラツィオへとやってきた。3度のセリエA得点王を獲得し、2019-20シーズンにはセリエA最多得点記録に並ぶ「36ゴール」を奪って欧州ゴールデンシューも手中に。ラツィオではキャプテンを務め、通算196ゴールを挙げており、チームのレジェンド的存在だ。一瞬の動き出しと裏への抜け出しからのフィニッシュを得意としており、少ないチャンスを確実に仕留める決定力を備えている。昨季は負傷に悩まされる厳しいシーズンとなったが、終わってみればリーグ戦31試合で12ゴールを挙げる活躍を見せた。プライベートではゲームが大好きで、妻の呼びかけにも応じない姿がSNSで度々アップされている。
(C)Getty Imagesバルセロナ、チェルシーで数多くの成功を経験したペドロ。ローマでの1シーズンを経て2021年夏にライバルのラツィオへと移籍した。マウリツィオ・サッリ監督と再会すると、1年目は公式戦41試合で10ゴール5アシストを記録。2年目の昨季も交代の切り札としてプレーし、公式戦46試合7ゴール6アシストと存在感を放った。7月末に36歳となり、かつてのような一瞬のスピードは失ったが、高いシュート技術にサビつきは見られず。セリエAでも度々見事なゴールを奪っている。バルセロナの下部組織出身らしく狭いスペースでもボールをコントロールできる高い基礎技術を備え、“サッリ・ボール”において欠かせない存在だ。
Gettyセビージャの下部組織出身のルイス・アルベルト。リヴァプールやマラガ、デポルティボでのプレーを経て2016年にラツィオへ加入した。ラツィオではセリエA屈指のチャンスメイカーに成長し、公式戦263試合で47ゴール68アシストを記録。これまで攻撃的なポジションで活躍してきたが、ラツィオではインサイドハーフとしてその才能を開花させ、その高いキック精度で数多くのゴールをお膳立てする。また、ミドルシュートや自身が持ち上がっての攻撃力も魅力。なお、今夏には退団の噂も浮上しているが、セルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチに続き彼がチームを去ることになれば、大幅な戦力ダウンを強いられるだろう。
(C)Getty Imagesローマの下部組織出身で、ミランで7年間を過ごし、2022年にラツィオへ加入。ライバルクラブであるローマで育ちながらラツィオファンを公言しており、移籍当初は「幼き日に夢見たシャツを着ている」と喜んでいた。ラツィオでの1年目は公式戦42試合に出場するなどフル稼働。ミランでは出場機会を減らしていただけに、新天地で復活を果たした。ラツィオの守備陣においては絶対的な存在で、ケガさえなければ今季もサッリ監督の下で最初に名前を書かれる選手になるだろう。セリエAでトップ10に入る空中戦の勝利回数を誇り、正確なスライディングも武器。闘志あふれる守備で今季もチームを最後方から支える。なお、憧れの選手はラツィオでスクデットを掲げた元イタリア代表アレッサンドロ・ネスタである。
(C)Getty Imagesこれまでプロビンチャを渡り歩いてきたプロヴェデル。昨夏にラツィオへ完全移籍で加入し、当初はGKルイス・マキシミアーノのバックアッパーと目されていた。しかし、開幕節のボローニャ戦でマキシミアーノが開始早々に退場となると、出番を獲得。その後もシーズンを通してゴールマウスに入り、21回のクリーンシートを記録し、チームの2位フィニッシュに大きく貢献した。194センチで手足が長く、ハイボールなどに強さを見せる。また、至近距離でのシュートストップにも定評があり、昨季はリーグ最優秀GKにも選出。今季もチームの守護神としてゴールを守る。
(C)Getty Images昨夏にインテルからラツィオへと加入。サッリ監督とはエンポリ時代にともに過ごしており、恩師のラブコールでチームへと加わった。すると、1年目から公式戦44試合に出場するなどチームにとってなくてはならない選手に。リーグ戦でのスタメンは17試合にとどまったが、途中から出てきてチームに落ち着きを与えるという役割を担った。馬力のあるMFで、主に守備で持ち味を発揮する。一方でボールを動かすことも苦にせず、ミドルシュートも得意としており、今季も貴重な中盤のバックアッパーとしてチームを支える。
(C)Getty Imagesラツィオ期待の若手の一人が、21歳のマッテオ・カンチェッリエーリ。ローマの下部組織出身で、その後はエラス・ヴェローナへ。そして昨年夏にエラス・ヴェローナからレンタルで加わり、1年目からリーグ戦20試合に出場すると、今夏に完全移籍が成立した。左利きで突破力のあるウインガーで、カットインから左足でのフィニッシュを得意とする。地元ローマ出身で、今後ラツィアーレにとって新たなアイドルとなる可能性もありそうだ。
(C)Getty Imagesアルゼンチン出身のストライカーであるカステジャーノス。レンタル先のニューヨーク・シティではMLS得点王、ベストイレブンなど個人タイトルを総なめに。満を持して昨季は5大リーグのラ・リーガへ挑戦し、ジローナでリーグ戦35試合13ゴールと堂々たる成績を残した。カステジャーノスの名前を一躍世に知らしめたのが、2023年4月のレアル・マドリー戦。白い巨人を相手に1試合で4ゴールを挙げ、マドリー相手に1試合4発を決めた今世紀初の選手になった。178センチと小柄であるが、一瞬の動き出しとフィニッシュ能力は非凡なものを持ち、アクロバティックなプレーも得意。チーロ・インモービレの正統後継者としてイタリアの地でも活躍が期待される。
(C)Getty Imagesフランクフルトでヨーロッパリーグ制覇、DFBポカール決勝進出の立役者となった鎌田大地。今夏に契約満了でフランクフルトを退団し、ステップアップを模索。移籍先が噂されてはたち消えになる日々が続いたが、最終的にセリエA2位のラツィオへの移籍が決まった。昨季はこれまでよりもやや低いポジションでの起用が多かったにもかかわらず、公式戦47試合で16ゴール7アシストを記録。自身でチャンスメイクも可能だが、自らゴール前に飛び込んでいく得点力も併せ持っており、ボランチとセカンドトップを合わせたようなプレースタイルが特徴的だ。ラツィオではセリエA屈指のMFであったセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチの後継者とみられており、背番号6を託されたことからもその期待は大きい。
(C)Getty Imagesナポリ生まれトスカーナ育ち、選手としてのキャリアはほとんどないが、銀行員を務めながらアマチュアリーグで指揮を執り、その手腕が認められて2012年に当時セリエBにいたエンポリの監督に就任するという異色のキャリアの持ち主。2013-14シーズンに昇格を果たし、2015年夏に生まれ故郷であるナポリの監督に。基本的にボールは2タッチ以内で、パスも横ではなく斜めパスの連続、スピーディーにボールを動かす特殊なスタイルは“サッリズモ(サッリズム)”と形容され、イタリアの辞書に登録されるほどとなっている。なかなかタイトルに恵まれなかったものの、2019年にチェルシーでヨーロッパリーグ優勝を達成し、翌年にはユヴェントスでセリエA制覇を経験。2021年にラツィオ指揮官に就任すると、時間をかけながら昨季は2位フィニッシュに導いている。
なお、ナポリ時代にはロベルト・マンチーニ監督(当時インテル)に放送禁止用語を吐いて退席処分を受けたり、チェルシー時代にはクラブのスーツ着用要請を頑なに拒否。自身が決めた駐車スペースにしか車を止めないなど迷信深く、無類のヘビースモーカーとして以前にはベンチでもタバコを吹かしていたなど、様々な顔を持っている。しかし、イタリア屈指の指揮官としての手腕は間違いなく、新シーズンへの期待は大きい。