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ラミン・ヤマルにバロンドールを:真の意味で「NEXT メッシ」だったバルセロナの18歳こそ世界最高の選手

もしバロンドールの投票プロセスが「世界一の選手を決める」という意味で本当に公正であるならば、リオネル・メッシは8回ではなく14回ものゴールデンボールを獲得していたはずだ。2008年~2021年の間、クリスティアーノ・ロナウドに5回、ルカ・モドリッチに1回譲っているが、これはレアル・マドリーがチャンピオンズリーグで前例のない成功を掴んだことが非常に大きい。1人の選手を評価するという意味で唯一メッシを上回ったのは、2022年のカリム・ベンゼマだけだろう。

そして偉大なバルセロナの伝説の10番を受け継いだラミン・ヤマルも、同様の理由でバロンドールを逃すことになるかもしれない。昨季パリ・サンジェルマンでチャンピオンズリーグ初優勝を含む三冠を達成したウスマン・デンベレは、おそらく今年の最有力候補だ。だが個人のパフォーマンスだけをみれば、ヤマルを上回った選手はいなかったはずだ。

  • Lamine Yamal Barcelona Champions LeagueGetty

    スタッツの比較

    まずはじめに、基本的なスタッツを確認する。デンベレは昨季PSGで51ゴールに関与し、ヤマルを8ゴール上回っている(43ゴール)。1試合平均を見ると、デンベレはシュート成功率「17.4%」(ヤマルは8.1%)、チャンス創出数は「3」(ヤマルは1.8)、相手ボックス内でのタッチ数は「9.2」(ヤマルは7.5)だった。

    こうしたスタッツは、デンベレがヤマルより効果的だったことを示している。だが、ヤマルが全公式戦で4548分に出場しており、デンベレ(3286分)を大幅に上回る。また、ラ・リーガはリーグ・アンよりはるかに競争力も高い。コパ・デル・レイに関しても、フランスの国内カップ戦と比べれば同じことが言えるはずだ。

    デンベレがバロンドール筆頭候補と言われるのは、主にチャンピオンズリーグでの活躍だろう。15試合で8ゴール6アシストを残して大会最優秀選手を獲得している。一方でヤマルは、13試合で5ゴール4アシスト。この部分でデンベレが有力視されることは確かだ。

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  • Lamine Yamal Ousmane DembeleGetty Images/Goal

    一対一で上回ったのは?

    一方で『Opta』によると、ヤマルはデンベレよりも90分辺りのドリブル成功率(53.5%:44.4%)やデュエル勝利数(8:3.5)を上回っている。さらに、シーズン全体の一貫性も考慮する必要がある。デンベレは昨季、練習への姿勢が問題でメンバーを外されることもあるなど、昨年12月までチームの中心ではなく、ケガによる欠場も多かった。しかしヤマルはほぼ全試合に先発し、変わらぬクオリティを発揮し続けていた。

    また代表チームので活躍を比較すると、デンベレが7試合で2ゴールに終わったのに対し、ヤマルは7試合で3ゴール1アシストをマーク。さらにネーションズリーグ準決勝、延長戦の末にスペインが5-4でフランスを破ったビッグゲームで、ヤマルはデンベレの眼前で2ゴールを奪っている。

  • FC Barcelona v SL Benfica - UEFA Champions League 2024/25 Round of 16 Second LegGetty Images Sport

    大舞台での活躍

    そのフランス戦の後、スペインのルイス・デ・ラ・フエンテ監督は力強く宣言した。「今日、ラミンは自ら声明を発表したんだ。『世界一の選手であることを証明し、バロンドールに値する』とね」。

    おそらく、レアル・マドリーはもうヤマルの顔も見たくないはずだ。ラ・リーガでの2試合はいずれもゴールを奪い、スーペルコパ・デ・エスパーニャでも抜群の活躍で勝利に貢献。コパ・デル・レイの決勝でも2アシストを記録した。昨季のクラシコ4連勝は、間違いなくヤマルがいなければあり得なかった。

    そんな18歳は、ラ・リーガのトップ6の内4クラブ(レアル・マドリー、アトレティコ・マドリー、アトレティック・クルブ、ビジャレアル)からゴールを奪っている。さらに、チャンピオンズリーグでは決勝トーナメント突入後に全ステージでネットを揺らした。特にベンフィカとのラウンド16のセカンドレグで決めた1ゴール1アシストは衝撃を与えている。

    大舞台での活躍という面では、やはりヤマルがデンベレを上回っている。本人はその秘訣を4月に『ESPN』で語っている。

    「もちろん、バルサでプレーする意味はわかっているよ。その重要性もね。でも、プレッシャーはまったく考えないんだ。プレーして、それを楽しむ……それだけだよ」

  • FC Barcelona v FC Internazionale Milano - UEFA Champions League 2024/25 Semi Final First LegGetty Images Sport

    「チートコード」

    ヤマルがいかに大舞台で強さを発揮をするか、極めつけはインテルとのチャンピオンズリーグ準決勝ファーストレグだ。

    バルセロナ通算100試合目となったファーストレグでは、2点を追いかける中で“理不尽なゴラッソ”を叩き込んだ。17歳291日で記録したこの一撃は、チャンピオンズリーグ準決勝史上最年少ゴールに。インテル守備陣もまったく動けないほどのゴールだった。この試合での彼は、最多シュート(6)に最多ドリブル成功数(6)をマーク。102回のタッチの内、17回が相手ボックス内であり、これもセミファイナル史上2位の記録となっている。

    これには敵将シモーネ・インザーギもお手上げで、「過去10年でこんな選手は見たことがない。フェノーメノだよ。3人でマークしなければいけない」と語っている。

    また、現役時代にマンチェスター・ユナイテッドやバイエルン・ミュンヘンで活躍したオーウェン・ハーグリーブス氏は『TNT』で「(ヤマルは)チートコードだよ。彼がボールを手にしたら、チームメイトは道を開けるべきだろう」と絶賛した。

  • FC Internazionale Milano v FC Barcelona - UEFA Champions League 2024/25 Semi Final Second LegGetty Images Sport

    フェノーメノ

    セカンドレグは3-4と敗れてバルセロナは準決勝で敗退したが、ヤマル自身は勝利に値している。シュート9本、ドリブル成功14回、11本のクロスと、右サイドで相手守備陣を破壊し続けた。これにはインテルDFアレッサンドロ・バストーニもSNSで、「彼らは信じられないほどの強さとメンタルを見せた。そして、恐ろしくも素晴らしい選手、ラミン・ヤマルには特別に言及を。君はフェノーメノだよ」と投稿。世界中のフットボールファンが彼の意見に納得したはずである。

    さらに、フットボール界において最高峰のレジェンドからも賛辞が届いている。ジネディーヌ・ジダン氏は、「こんなプレーは人生でも見たことないよ。ピッチ上で自分のスキルを完璧に扱う選手を見られるのは最高だね」と絶賛。レアル・マドリーのアイコンからバルセロナの選手に対してこうした絶賛が贈られるのは極めて稀だ。それほど、ヤマルのプレーは見るものすべての感情を揺さぶるものである。

    これこそ、バロンドールを主催する『フランス・フットボール』が18歳の彼を世界最高の選手として認定すべき理由なのだ。

  • Lamine Yamal Barcelona GFX GOAL

    Next メッシ

    バロンドールを共催する『UEFA』によると、バロンドールの選考基準は主に3つだ。

    1:個々のパフォーマンス、決定的な活躍、印象的なキャラクター

    2:チームパフォーマンスと実績

    3:クラスとフェアプレー

    もしこれが順番通りに重要視されるとしたら、ヤマル以上に値する選手はいない。デンベレやヴィティーニャ、アクラフ・ハキミ、ハフィーニャ、モハメド・サラーなど、バロンドールに輝いても何ら不思議ではない選手はたくさんいる。しかしその中でも、ヤマル以上にキャラクターを発揮した選手はいない。「世界最高の選手」というからには、誰の目から見ても明らかなプレーが評価されるべきであり、ヤマル以上の選手はいなかった。

    フランス代表OBエマニュエル・プティ氏は、ヤマルを「ゲームのように相手選手をドリブルで抜き去り、ディフェンダーをただのコーンのように見せてしまう」と表現している。これこそ、史上最多受賞回数を誇るメッシがやってきたことだ。昨季のヤマルは、本当の意味で「Next メッシ」だったのだ。

    バルセロナがビッグイヤーを掲げられなかったことで、おそらくヤマルがセレモニーの最後にスピーチすることはないだろう。だがしかし、何らかの特別な賞を作ってその活躍を称えるべきである。それほど凄まじいパフォーマンスだったことは間違いない。そして仮に今年受賞できなくても、おそらく来年には、メッシと同じようにゴールデンボールを掲げているはずだ。