Nunez Liverpool Problem GFXGOAL

クロップが抱えるダルウィン・ヌニェスのジレンマ:リヴァプールは118億円のサブを抱える余裕があるのか?

リヴァプールは27日、公的投資ファンド傘下のニューカッスル・ユナイテッドとプレミアリーグで対戦する。

ユルゲン・クロップ監督が移籍市場の閉幕を1週間後に控えたこの時期に、主な得点源であるモハメド・サラーを売却する可能性が全くないことはすでにわかっている。しかし、その代わりにサウジアラビアのクラブがサラーのチームメイトであるダルウィン・ヌニェスの獲得に動いていたら、非常に興味深いことになっていただろう。その際のレッズの反応は予想することができない。

ヌニェスはサラーのような神のような地位をKOPでは誇っていないかもしれないが、ファンの間では非常に人気のある選手だ。ポテンシャルもあり、情熱的で勤勉で、典型的なクロップの9番としての資質を備えている。今夏、ロベルト・フィルミーノのサウジアラビア移籍に伴い、9番を譲り受けたほどだ。

クロップ自身、ヌニェスを「長期的なプロジェクト」と表現し、昨年のチャンピオンズリーグでリヴァプールがベンフィカと対戦したときに「惚れ込んだ」選手が、いずれはワールドクラスのセンターフォワードに成長すると信じている。とはいえ、彼はまだそのレベルにはない。それどころか、彼に対して高額なオファーがあれば、リヴァプールは大いに考える余地があったはずだ。

  • Darwin Nunez Liverpool 2023-24 Premier LeagueGetty

    「スーパーな瞬間」もあるが5番手FW

    ヌニェスがアンフィールドにやってきたのは昨夏のことだ。その移籍金は6400万ポンド(約118億円)で、8500万ポンド(約156億6000万円)にまで跳ね上がる可能性がある。

    しかし、これまでのところ、その最初の出費を正当化するほどの活躍はしていない。ただ公平を期すなら、イングランドでの最初のシーズンを終えた時点で、彼の数字はそれほど悪くはなかった。全コンペティションで42試合に出場して19ゴールに絡んだが、そのうち先発は26試合のみだった。

    チャンピオンズリーグのレアル・マドリー戦でのバックヒールや、リーグカップのマンチェスター・シティ戦でのアイメリック・ラポルテがエレベーターを駆け上がろうとしているように見えるほどのスピードなど、クロップが言うところの「スーパーな瞬間」もあった。

    しかし、ヌニェスは今シーズン、昨季同様FWの5番手としてスタートさせた。なぜか?第一に、クロップが今ヨーロッパで最高の攻撃陣を持っていることだ。サラーが右サイドで先発するのは明らかで、ルイス・ディアスは左サイドを自分のポジションにするつもりでシーズンを始めている。ヌニェスはスピードがあるのでワイドでもプレーできるが、同じ南米出身の選手より優れていると主張するのは難しいだろう。

    実際、24歳のヌニェスはディオゴ・ジョタやコーディ・ガクポと9番を争っている。そして、この2人に先んじて定位置を確保することは容易ではない。

    昨季序盤戦の主役であったジョタはフィットしており、また1月に加入したばかりのガクポは、間違いなくフィルミーノの長期的な後継者となるには、多才なポルトガル人選手よりもさらに優れた能力を備えている。

  • 広告
  • Darwin Nunez Liverpool 2022-23Getty Images

    守備の欠陥

    ヌニェスにとって大きな問題は、ライバル2人と同じようにプレスをかけられるかどうかを証明することだ。彼のエネルギーや努力に疑いの余地はない。

    ヌニェスはプレシーズンではリヴァプールで最も良い選手の一人だった。最初の3試合で4ゴールを挙げ、シャープなプレーを見せた。しかし、2023-24シーズンの開幕が近づくにつれ、彼が最初からプレーするに値する選手であることをクロップ監督に納得させるには、まだ課題があることは明らかだった。

    クロップ監督は「彼はスピードがあり、典型的なゴールスコアラーだ。クオリティーについてはよく知っている」としつつ、「守備と攻撃的な状況の両方で影響力を発揮しなければならない」と続けた。

    プレミアリーグ開幕からヌニェスが出場したのはわずか28分。もちろん、時間はまだヌニェスの味方であり、マージーサイドでの2年目のシーズンでヌニェスが爆発する可能性は十分にある。

  • Erling Haaland Darwin NunezGetty/GOAL

    2年目に期待する識者

    元リヴァプールのジャーメイン・ペナント氏は『GOAL』で「彼のキャリアを振り返ってみると、ベンフィカに移籍した最初のシーズンは、リヴァプール同様、まずまずの出来だった。しかし、2年目のシーズンでは、彼は輝きを放った。だから、彼はどんどん良くなっていくと思うよ」と期待する。

    「リヴァプールに慣れる時間もあったし、世界一難しいプレミアリーグに慣れる時間もあった。プレシーズンを経験し、1年目のシーズンを経験した今、彼にとってはより良いものになるはずだ。もしフィニッシュの精度を上げることができれば、リヴァプールのアーリング・ハーランドのような選手になれるだろう。試合中の彼のチャンスを見ると、身の毛がよだつ。彼はスピードがあり、空中戦に強く、力強い。彼はハーランドと似たような特性を持っている。でも、ハーランドは3回のチャンスで1得点できるし、効率の面で違う」

    ヌニェスと、常に比較されてきた選手との間に、効率の面で大きな差があることは否定できない。

  • Darwin Nunez Liverpool sub 2023-24 Premier LeagueGetty

    「必要なのはあと2、3年」

    ハーランドは、昨シーズンの欧州5大リーグで、他のどの選手よりも少なくとも10回以上(合計42回)「ビッグチャンス」を逃したが、彼の決定率は51.72%という素晴らしいものだった。対照的に、ヌニェスはビッグチャンスのわずか30%しかものにできなかった。

    元リヴァプールFWマイケル・オーウェン氏は「シーズン当初を思い起こせば、誰もがハーランドとヌニェスのどちらが得点を挙げるだろうと話していた」と語り、こう続ける。

    「ハーランドの活躍があったからこそ、ヌニェスはまだ大成功したとは言えないという見方もあっただろう。現時点では、比較の対象にはならない。しかし、ハーランドはすでにオールラウンドプレーヤーだ。ヌニェスもあのレベルに達する可能性があると思うが、あと2、3年はかかるかもしれない」

    「ヌニェスはまだまだ上達の余地があると感じている。リヴァプールとそこのコーチングスタッフは、この未熟な才能を一流選手に育て上げるという点で、大きな責任を背負うことになると思う」

  • Didier Drogba 2012 FA Cup finalGetty

    ヌニェスはドログバになれるか?

    未完成のままアンフィールドに来たのはヌニェスが初めてではない。

    元リヴァプール監督のラファ・ベニテスは、2007年にスペイン代表FWフェルナンド・トーレスがアトレティコ・マドリーから移籍してきた後、彼のフィニッシュに何時間も費やしたことを認めている。

    オーウェンはまた、ヌニェスはチェルシーのレジェンド、ディディエ・ドログバからインスピレーションを得るべきだと主張している。

    「誰もが、彼は実力が足りないと言っていたのに、彼はそれを覆し、この国で見た中で最高のセンターフォワードの一人になった。ヌニェスには、選手に与えることのできない特性がある。彼はダイレクトで、力強く、アグレッシブで、スピードがあり、強いシュートも打てるまともなストライカーだ」

  • Darwin Nunez Liverpool 2023Getty

    求めるのは「決定的な」プレー

    しかし、そこに問題の一端がある。リヴァプールが求めていたのは「まともな」プレーではなく、「決定的な」プレーだった。

    もちろん、27日のニューカッスル戦で今季初先発する可能性はある。リヴァプールが最後にセント・ジェームズ・パークを訪れたとき、彼はゴールを決めている。次も得点すれば、ヌニェスがイングランドでブレイクするきっかけになるかもしれない。

    しかし、もし彼が先発出場しなければ、さらに多くの疑問が投げかけられるだろう。その筆頭は、6400万ポンドで獲得した選手を、シーズンの大半をベンチに座らせておく余裕がリヴァプールに本当にあるのか、ということだ。ここで話しているのは、国が支援するクラブではない。フェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)は無限の資金を持っているわけではなく、リヴァプールはニューカッスルでもマンチェスター・シティでもパリ・サンジェルマンでもないのだ。

    では、サラーは明らかにスポーツ的観点から価値が高すぎて売却を検討することすらできないが、ヌニェスが名ばかりのリヴァプールの新9番になるだけなら、果たして同じことが言えるのだろうか?