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路頭に迷うベリンガムに訪れた最大のチャンス:クラシコでレアル・マドリーを救えるか

ジュード・ベリンガムは、間違いなく“Next ジダン”だった。彼の背負う番号がそれを表している。そして同時に、“Next クリスティアーノ・ロナウド”でもあった。初年度に残したゴール数がそれを物語っている。

しかし、2年目となる今季はそう感じさせた姿を見せられていない。世界最高レベルの選手でも、デビューしたての若手でも、困難な時期を経験するのは珍しくない。だが彼の場合、昨季は圧巻の輝きを放っていたこと、今現在もレアル・マドリーでプレーしていることを考えると、特殊な状況にあると言える。

そして、ロス・ブランコスでは「不調」は許されない。世界一要求の厳しいファンとメディアがいるからだ。それはベリンガムもよく理解している。だが、応えられているかどうかは別の話だ。特に最近はピッチ上で不満気な表情を隠さず、審判との衝突も悪目立ちしてしまっている。彼の不振の原因は様々だが、結局は彼本人が今の状況を覆す以外に方法はないのだ。

その絶好の機会が、11日にやってくる。レアル・マドリーにとって唯一今シーズンを救ってくれるかもしれない大一番、ベリンガムは彼自身を再び証明しなければならない。

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    役割の変化

    単純にゴール数だけを考えると、今季明らかに減少したのは当然でもある。キリアン・エンバペの加入によってポジションを下げ、より中盤的な仕事が求められるようになったからだ。ゴールから物理的に遠ざかれば、得点数が減少するのは容易に想像ができる。

    だが問題は、そのポジショニングだ。エンバペとヴィニシウス・ジュニオールがスペースを取り合っていたが、ベリンガムも同じスペースを使いたがったのだ。献身的なランニングや相手DFを惹きつける動きは見せているものの、自分がボックス内でゴールに絡もうとすると、スペースが被ってしまう。そして、このクラブでは自己犠牲のプレーはあまり評価されない。攻撃的な選手はゴール数がすべてだ。そうした評価も、結局はプレー全体にも響いてしまっている。

    カルロ・アンチェロッティは「彼の仕事は我々に大きく貢献しているし、非常に重要だ。昨季はカリム・ベンゼマを失ったため、彼のゴールが不可欠だった。だが、今季はその問題はない。45ゴールを期待できる選手がいるからだ」と擁護したが、世界一要求の厳しいファンとメディアはそれを許さない。

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    最適解

    結局、批判を黙らせるにはネットを揺らすしかない。昨年11月、オサスナ戦で12試合ぶりの得点となる美しいループシュートを沈めた時、彼はSNSにこう投稿した。

    「どんなに辛くても、諦めるという選択はない。マドリーのファンへ、良いときも悪い時も、素晴らしいサポートをありがとう」

    そこからベリンガムは5試合連続でゴールを奪った。その締めくくりは、チャンピオンズリーグ・アタランタ戦の圧巻のゴール。エンバペ、ヴィニシウス、ロドリゴが不在の中で、より高い位置に入った彼は息を吹き返している。彼に何をさせるべきか、これ以上ないほど明白になったのだ。

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    今季を象徴する事件

    だが、その輝きは一瞬だった。エンバペ、ヴィニシウス、ロドリゴの復帰によって戦術的な疑問が生じたのはもちろんだが、再びただランニングを繰り返す選手に戻ってしまった。ゴール前での自信を失い、ビッグチャンス者がし続けている。スーペルコパ・デ・エスパーニャ決勝はすべてを象徴する一戦であり、2-5とチームが惨敗する中で彼はその責任を負わされることになっている。

    そして、ベリンガムの今季を象徴するようなシーンが訪れる。ラ・リーガ第24節、オサスナ戦の一発退場だ。彼が「f*ck off」と言ったのか、「f*ck you」と言ったのかは関係ない。審判に対して、ルールに反する言葉を意図的に発した事実が問題なのだ。レッドカードも正当なもの。ここからレアル・マドリーは大規模な審判批判を展開し始めたが、彼自身が間違いを犯したという事実だけは確かだったのだ。

    そのミスを彼は未だに取り戻せていない。あの事件から3カ月経過したが、その間たったの2ゴール。ピッチ上をさまよう他、反抗的な態度も変わっていない。

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    度重なる問題

    こうした問題は、すべてのアスリートが直面するものだ。ベリンガムはまだ21歳。年齢の割に圧倒的な才能と冷静さを見せるため忘れられがちだが、まだ若手選手の域を出ない年齢である。

    しかし、彼は多くの問題を溜め込みすぎている。エンバペの復帰によって再び戦術的な問題に直面し、さらに肩のケガは未だ治らず。私生活に関しても度々注目を集め、自身のプレーに集中できる環境が整っていないのだ。

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    休暇が必要だが…

    では、今のベリンガムに何が必要なのか?それはただ1つ、「休暇」である。

    今季の彼はレアル・マドリーで1万4000分以上プレーしており、頭の中まで披露が蓄積している。そして、肩の手術も必要だ。コンディションを以前のようにフレッシュな状態まで戻すこと。そうすれば自ずとプレーは改善されていくはず。さらに夏には、新たな監督が就任するだろう。どちらかと言えば放任主義なアンチェロッティから新指揮官へとバトンタッチすることで、スペース問題に関しても徐々にベリンガムの長所が生きやすい形を見つけられるかもしれない。

    だが、彼に長期休暇は許されないかもしれない。なぜなら、夏にはクラブ・ワールドカップがやってくるからだ。一部では、ビッグネームを欠場さ出た場合にFIFAが罰金を科すとも噂されている。彼に休む時間はほとんどない。

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    “エル・クラシコ”という舞台

    しかし、こうした問題のすべては“エル・クラシコ”では関係ない。この一戦はレアル・マドリーにとって、お互いの状況がどうあるかにかかわらず、絶対に勝たなければ行けない試合だ。確かに4ポイント差で優勝を争っているものの、何よりもプライドが負けてはいけないと警告し続けている。

    そして今回の舞台であるモンジュイックは、ベリンガムがレアル・マドリーでの存在を証明した場所でもある。1年以上前に圧巻のゴールで劇的な勝利をもたらし、この一発がラ・リーガとチャンピオンズリーグのニ冠達成への号砲となった。

    当然、ベリンガムにはその再現が求められている。ここでかつての輝きを取り戻し、チームを救って優勝まで導けば、スペインでの評価は再び大きく変わるはずだ。そのポテンシャルは間違いないため、精神的な余裕さえ手にすれば、再び世界の最前線に立てる選手である。シーズン最終盤で訪れたこれ以上ないチャンスを、ベリンガムは物にできるのだろうか。