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「誰を選ぶか」U-23アジア杯に向けてのサバイバル。爪痕を残したパリ五輪世代期待の5人

2年後のパリ五輪を目指して活動するU-21日本代表候補は12日に全日本大学選抜との練習試合を実施し、3日間のショートキャンプを打ち上げた。これは6月1日にウズベキスタンで開幕する(日本の初戦は3日)AFC・U-23アジアカップに向けた最後の合宿であり、大会に向けた選考という意味合いの強いキャンプでもあった。(取材・文=川端暁彦)

■[4-3-3]の布陣もテスト

 もちろん戦術面をトレーニングしてチーム作りを進めるといった側面もあるが、3日間の日程で全体トレーニングは1回のみとなれば、できることは限定的。まずは代表チームの基本である「誰を選ぶか」という点に一つのポイントがあったのは明らかだった。

 過密日程の合間を縫っての開催ということもあってベストメンバーが招集できたわけではない中で、最終日に行われた全日本大学選抜との練習試合には初招集のFW中島大嘉(コンサドーレ札幌)が先発に抜擢され、追加招集のFW染野唯月(鹿島アントラーズ)はインサイドハーフでの起用に。[4-3-3]の布陣を試行するというテストも兼ねつつ、合宿の大テーマである「選手の見極め」(大岩剛監督)の意味合いが濃いゲームとなった。

 結果は0-2の敗戦。大岩監督は「選手の評価としては、積極的に前向きにトライしている選手も見受けられたので、手応えは半々ぐらい」と話したように、いろいろな顔が見える試合となった。ここではその中から5人の選手をピックアップし、紹介してみたい。

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    1FW 中島 大嘉(北海道コンサドーレ札幌)

     札幌で今季公式戦6得点と結果を残して初招集となった。過去にU-18日本代表候補に一度入ったことがあるだけのため、「知り合いの選手は二人だけ」という手探り状態だったが、「ホンマにちょっとずつ増やしていった」と友達の輪を広げつつ、練習試合では「自分も(松木)玖生みたいに有名になりたい」という言葉どおりのアグレッシブなチャレンジを見せた。

    「試合前にイメージトレーニングしていたようなプレーはある程度見せられたかな。悪くない試合だったかなと思います」と振り返ったように、持ち前のスピードを活かした裏への抜け出しや前線からのチェイシング、ゴール前での体を張ったプレーなど持ち味は披露。35分という短い時間ながら小さからぬインパクトを残した。「でもやっぱり決めないといけない」という課題はその通りではあるものの、これまでいなかったタイプのFWだけに、生き残る可能性は十分に示した。

    ◎中島 大嘉(なかしま・たいか)
    2002年6月8日生まれ。188cm/77kg。大阪府出身。アイリスFC住吉→RIP ACE SC U-15→国見高→札幌



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    2MF 松木 玖生(FC東京)

     3月のドバイカップでの自身のパフォーマンスに満足はなく、帰国直後の試合から「よりゴール前に飛び出していくシーンを増やさないといけない」とプレーを自己改革。どん欲に成長を続けて継続しての招集となった。

    「FC東京で求められていること、代表で求められることは違うが、ゴールに向かうことは同じ。もっと自分のところでゴールに関われたらと思っています」

     そう語って臨んだ練習試合にはインサイドハーフとして先発したが、チームとして無得点。試合後に漏れた言葉も当然ながら「自分がもっとゴールに関われたなと思います」というものだった。

     試合の中では裏を狙って果敢に動き出す中島とは相性の良さものぞかせていたが、チームとしては怖さを出し切れず。公式戦となるU-23アジアカップでは、もう一段上のチームを勝たせるためのリーダーシップも期待したい。

    ◎松木 玖生(まつき・くりゅう)
    2003年4月30日生まれ。180cm/76kg。北海道出身。室蘭大沢FC→青森山田中→青森山田高→FC東京

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    3FW 染野 唯月(鹿島アントラーズ)

     ゴール前での冷静さとアイディアが光るアタッカーは、今季の鹿島でも途中出場が中心ながら存在感を見せてきた。大量の辞退者が出る中で追加招集となったものの、11日の練習試合では先発メンバーに食い込んだ。

     ただし、そこで与えられたポジションは「初めてやる」と語るインサイドハーフ。「もっともっとボールに関わってチャンスメークもできれば良かった」と振り返ったとおり、圧倒的なプレーを見せられたわけではないが、中学時代はボランチでプレーしていた経験を活かし、初めてのタスクにも対応できる戦術的な柔軟性は披露。今後の可能性はのぞかせた。

    「今までの自分は遠慮している部分があったんですけど、今は自分から要求して、ボールを呼んで、自分が点を決めたいという気持ちが強いので、そういったところが今年に入って変わったと思います」

     そう語る精神面で変化した一端も見せた高性能マルチロールは、大岩監督の選択肢に入ってきそうだ。

    ◎染野 唯月(そめの・いつき)
    2001年9月12日生まれ。179cm/67kg。茨城県出身。鹿島アントラーズつくばJrユース→尚志高→鹿島

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    4MF 宮城 天(川崎フロンターレ)

     このパリ五輪代表では、川崎Fの大先輩である三笘薫と同じような役割を託されることになるのかもしれない。

    「4-3-3のフォーメーションを自チームでやっているアドバンテージもある」と語ったとおり、動き方やポジション取り、役割分担に戸惑う選手もいる中で違いを見せてボールを呼び込み、左ウイングの位置から果敢な仕掛けとゴールへの意欲を見せた。

     もっとも、「あれくらいは決めないと、帰ってもJリーグでも活躍できないと思う」と語った通り、放ったシュートがゴールネットを揺らすことはなく、満足感はなし。「ああいうチャンスを確実に決めていかないと自分で自分の首を絞めることになる」と悔しがった。

     左サイドからの仕掛けでゴールを狙うスタイルの選手はこの年代に多くいるだけに、もう一つ「違い」を見せられることがメンバー入りのキーポイントになりそうだ。

    ◎宮城 天(みやぎ・てん)

    2001年6月2日生まれ。177cm/70kg。神奈川県出身。川崎F U-12→川崎F U-15→川崎F U-18→川崎F→カターレ富山→川崎F

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    5MF 櫻井 辰徳(徳島ヴォルティス)

     ヴィッセル神戸から徳島へ期限付き移籍中のボランチは、今季J2で確かな存在感を見せ続けての代表入りだった。とはいえ、難しさもあったようだ。「徳島はちょっと戦術的に独特というか、他のチームとやっていることが少し違うので、前回の国内合宿の時もちょっと難しさが正直あった」と言う。脳内の切り替えに今回もやや苦戦を強いられた。

    「自分の理想としているボールの運び方というのは1本もなかった」と語ったように、全体を司るアンカーとしては苦戦した部分があったのは否めない。ただ、「持ち運びに関しては自分のところからいい形は何個かあった」と言うように、スキルの高さは随所に発揮されており、4-3-3で戦う上でのアンカーの有力候補であることは改めて示したと言えるだろう。

    「濃い3日間だったし、J1で出ているボランチも多いので負けていられないという気持ちになった」という意欲を、まずはJ2のピッチで見せ付けたい。

    ◎櫻井 辰徳(さくらい・たつのり)
    2002年7月26日生まれ。178cm/68kg。埼玉県出身。越生サッカー少年団→東松山ペレーニアJrユース→前橋育英高→神戸→徳島