カタール・ワールドカップ(W杯)後も続投した森保一監督は、多くの選手を日本代表に招集してきた。第2次森保ジャパンにおける初の公式戦である2026年W杯アジア2次予選が迫り、そのメンバー発表が8日に予定されている中、選手たちの序列を「中心選手」「有力選手」「当落線上」の3カテゴリに分けて整理する。【文=河治良幸】
(C)Getty images【序列整理】群雄割拠の日本代表。23名枠で“第2次森保ジャパン”の「中心」「有力」「当落線上」の選手は? サプライズ候補は…
(C)Getty images招集枠が減少する公式戦
ロシアW杯後に発足し、カタールW杯までの4年半をベースにリスタートした“第2次・森保ジャパン”。これまで日本代表の歴史で、一人の監督が続けて2度のW杯に向けたサイクルを任されることがなかったため、新たなチャレンジとなる。カタールでは目標だったベスト8に辿り着くことはできなかったが、ドイツやスペインを撃破し、3位に輝いたクロアチアとも接戦を演じてのPK戦負けという結果を受けて、当初からJFAが掲げていた「2050年までにW杯優勝」という大目標に向けて、2026年の北中米W杯からでも本気で世界一を目指すことを掲げた。
“南米勢”のウルグアイとコロンビアの2試合となった3月のシリーズは1分1敗だったが、その後の6月、9月、10月シリーズで6連勝、特に9月にはアウェイでドイツに4−1の勝利を飾った後で、トルコ戦ではスタメン10人を入れ替えて、4−2で勝利。4-2-3-1をベースに、流れの中でも時間帯によっても4-3-3(4-1-4-1)に可変できるメカニズムを構築しており、オプションとして3バックにも取り組んでいる。“日の丸”に誇りを持ち、チームのために献身、ハードワークできることは当然として、その中で評価基準になるのが“個の力”で、基本的には攻守の一対一で、目の前の相手に勝てること、そこに戦術的なタスクやその選手にしかない武器、選手によっては複数ポジションをこなせるポリバレントな能力などを組み合わせる。
ただ、これまでは“コロナ禍”の特例ルールとしてカタールW杯で採用された26人制が用いられていたが、今後の公式戦では23人に戻ることが確定しており、アジア2次予選、アジアカップは森保監督もそれを念頭に置いて選考していくはず。キャプテンの遠藤航をはじめとしたコアメンバーをベースとして、スペシャリティやポリバレント性を持った選手を加えるのか。もちろんコアメンバーというのは現時点の評価であり、今後の代表活動や所属クラブのパフォーマンスによって変動し得ることも視野に入れる必要はある。
(C)Getty images中心選手
DF:冨安健洋、板倉滉、菅原由勢
MF:遠藤航、守田英正、伊東純也、久保建英、三笘薫
FW:浅野拓磨コンディションに問題がなければ確実に招集されると見られるメンバーはこの9人だろう。2023年に入ってから序列を上げた右サイドバックの菅原を除くと、いずれもカタールW杯のメンバーだ。このメンバーは余程の理由がない限り、3年後の北中米W杯まで中心としてチームを引っ張っていくことが期待される。特にボランチの遠藤と守田、センターバックの板倉と冨安は“森保ジャパン”の攻守両面に欠かせない。ここの基盤がしっかりしていることで、伊東、久保、三笘という世界にも誇れる二列目の選手たちが“個の力”や局面でのスペシャリティを発揮できる。
スタートの時点ではここに10番を背負う堂安律と鎌田大地も入っていたが、9月の選考ではコンディションやクラブでの状況を考えて、森保監督は招集から外した。もちろん今後のアピール次第で、ここに入ってくるはずだが、現時点では序列を下げておきたい。
FWはカタールW杯後に存在感を高めた浅野が、現時点では頭ひとつ出ている。ここのメンバーが増えていくことは頼もしいが、結果的にメンバーの固定化につながってしまうリスクもある。良い意味で競争力を上げて、コアメンバーと言えどもうかうかできない状況になっていけば、3年後に日本がW杯の舞台で躍進するベースは引き上がるだろう。ただし、板倉に関しては足首の問題を解消するために手術を行なっており、アジア2次予選に招集されるかは不透明だ。
(C)Getty images有力選手
GK:大迫敬介
DF:谷口彰悟、伊藤洋輝、中山雄太、毎熊晟矢
MF:田中碧、伊藤敦樹、鎌田大地、堂安律、旗手怜央、中村敬斗、南野拓実
FW:上田綺世、古橋亨梧、前田大然この中でもGKの一番手になりつつある大迫、カタールW杯のメンバーで3バックのレギュラーとも言える谷口彰悟、左サイドバックのスタメンを争う伊藤洋輝と中山雄太は「中心選手」に近い「有力選手」だ。さらに現在のFWでは唯一180cmオーバーの上田綺世とチュニジア戦のスタメン起用に応えて見事なゴールを決めた古橋、ボランチで遠藤と守田に次ぐ存在である田中も有力選手の中で、序列が上に位置する。
10月シリーズでカタールW杯以来の代表復帰を果たした南野も“第2次・森保ジャパン”のコアメンバーに食い込んでいくポテンシャルはあるが、ポジションや役割も考えると、鎌田や堂安が競争相手になってくる。中村はここまで4キャップで4得点と決定力の高さをアピール。森保監督も評価を高めていると考えられるが、カナダ戦で足首を負傷し、2次予選の招集は見送られると見られる。逆にケガで10月の活動を辞退した前田はFWだけでなくサイドハーフでも、改めてアピールのチャンスになりそうだ。
“国内組”の伊藤敦と毎熊も“森保ジャパン”の常連となりつつある。毎熊はメンバーに定着するだけでなく、菅原を良い意味で脅かしていける存在になっていけるか。パリ五輪世代に期待のタレントが揃うポジションだけに、ここで安閑としてはいられない。伊藤敦は所属クラブの浦和レッズが“超過密日程”で、ここに来て疲労が見られる。すでに森保監督も実力を把握しているだけに、今年いっぱいは浦和に専念して、改めて来年に向けた選考対象にしていくプランをお勧めしたいところではある。旗手は4-3-3の左インサイドハーフを得意とする選手でありながら、10月シリーズでは4-2-3-1の左サイドとトップ下で高水準のプレーを見せた。しかし、チャンピオンズリーグ(CL)のアトレティコ・マドリー戦で負傷してしまい、アジア2次予選は欠場になりそうだ。
(C)Getty images当落線上
GK:鈴木彩艶、前川黛也、中村航輔、シュミット・ダニエル、小島亨介
DF:町田浩樹、瀬古歩夢、橋岡大樹、森下龍矢、藤井陽也
MF:川辺駿、奥抜侃志、相馬勇紀、西村拓真
FW:町野修斗23名枠になることで、ここからのメンバー入りは容易ではない。ただし、GKは「有力」に入れた大迫の他に2人は必ず加わるので、順当なら鈴木と前回はケガで途中離脱した前川か。ただし、鈴木の場合はパリ五輪世代の活動が同時進行しており、11月であればA代表の活動中にU-22アルゼンチン戦が予定されているため、そちらに回る可能性もある。そうなった場合、前回は追加招集だった小島にもチャンスが出てくる。シュミットは鈴木が加入したシント=トロイデンから夏の移籍が実現しなかったことで、事実上の構想外となっている。まずは冬の市場で所属クラブを確定させて、試合に出ることが代表復帰への唯一の道になるはず。中村は9月のトルコ戦で負傷してからポルティモネンセでも試合に復帰しておらず、現時点では序列を下げざるを得ないが、復調すればファーストチョイスになり得るポテンシャルは備えている。
フィールドでは町田や橋岡が“-3枠”の影響を受けるかもしれない。ただし、橋岡は右サイドバック、町田は左サイドバックとセンターバックを兼任できるので、すぐ23人のメンバーに入れる位置にいる。11月のアジア2次予選で、板倉が足首の手術の影響で外れる場合、町田の招集は有力か。ただし“第2次・森保ジャパン”の活動に招集されたことがある、瀬古や藤井が抜擢される可能性もある。オフェンシブなポジションではFWの町野、2列目の相馬や西村がラージグループのかなり内側にいることは間違いない。また奥抜も前回はコンディション不良の影響で出場チャンスは得られなかったが、ドイツ2部で引き続き好調なパフォーマンスを見せている。中村がケガで外れる可能性は高く、左サイドハーフのスペシャリストが不足しているので、アジア2次予選のメンバーに入ってもおかしくない。同ポジションの候補としては相馬もおり、23人であればFWの前田や浅野を起用する選択肢もある中で、森保監督がどう判断するか。
(C)Getty images今後のサプライズ候補も国内外に多数
11月の2試合に関してはケガの中村や旗手、手術明けの板倉といった招集が難しそうな選手はいるが、森保監督は可能か限りベストメンバーで臨むと見られる。カタールW杯に向けたアジア2次予選でも、最初のシリーズはかなり手堅いメンバーだったと記憶している。ホームのミャンマー戦は100%勝つべき試合だが、サウジアラビアで行われるシリア戦は最終予選にも近いような、いきなりタフなゲームになるはず。スタートから2連勝することで、アウェイの北朝鮮戦も含めた先の見通しが明るくなり、柔軟な招集や起用もしやすくなる。アジア2次予選に堅く入る分、元日の国際親善試合タイ代表戦で初招集も含めたフレッシュなチョイスがあるだろう。
筆者が期待する候補としてはJ1首位のヴィッセル神戸で躍動しているMF佐々木大樹、長期のケガから復活したサンフレッチェ広島MF満田誠、横浜F・マリノスの中盤を仕切るMF渡辺皓太など。森保監督も視察に訪れたルヴァン杯の決勝で、2つの得点に絡む活躍を見せ、アビスパ福岡の優勝に大きく貢献したMF紺野和也も今後の伸びしろを加味して、早いタイミングで招集される可能性がある。
海外組ではポルトガル1部のジル・ヴィセンテで圧倒的な存在感を見せている左利きのMF藤本寛也、オランダ1部のNECナイメヘンでブレイク中のFW小川航基、今夏に新潟からベルギー1部のシント=トロイデンに移籍し、攻撃の中心を担っている伊藤涼太郎など、現在の“森保ジャパン”にも無い個性や武器を加えられるタレントは試せるタイミングで試して欲しい。3年後にW杯が行われる北米のMLSのバンクーバー・ホワイトキャップスで、正GKに君臨する高丘陽平の組み込みがあるかどうかも気になるところ。またタイ戦が行われる元日はパリ五輪を目指す“大岩ジャパン”の活動も無いので、柏レイソルFW細谷真大など、パリ五輪世代にもチャンスはありそうだ。