January-Transfers(C)Getty Images

総額480億円の"チェルシー革命"にC・ロナウドのサウジ行き…欧州・冬の移籍市場の勝者と敗者

パニックはついに終わった。31日間にわたるドラマチックな展開の後、移籍市場は再び夏まで閉ざされる。今シーズンを勢いよく終えるために絶好調だったチームもいれば、重要なターゲットを逃したり、重要な選手を失ったりして、フラストレーションを溜め込んでいるチームもある。

チェルシーは1月、プレミアリーグで最もアクティブなクラブであり、シーズン前半戦の惨状から3億ポンド(約480億円)以上の資金を補強に投じ、多くの選手を獲得した。

タイトルを狙うアーセナルは、ミケル・アルテタが狙っていた選手(カイセド)との契約を逃し、昨季王者マンチェスター・シティは即戦力となる選手の獲得に余念がなかった。

マンチェスター・ユナイテッド、リヴァプール、トッテナムは予想以上に静かで、その他のヨーロッパのクラブはイングランドのクラブよりもはるかに控えめだった。おそらく、これはプレミアリーグと他の国内リーグの財政の不均衡が拡大していることを浮き彫りにしている。

『GOAL』では、ここ最近で最もクレイジーな1月の市場においての勝ち組と負け組を選んでいく。

  • Boehly(C)Getty Images

    勝者:トッド・ボーリー

    チェルシーの新オーナーであるトッド・ボーリーは、昨年5月にロマン・アブラモビッチと交代した後、すぐにその意思を表明し、プレミアリーグ記録となる2億7000万ポンド(約430億円)の移籍金の使用にGOを出し、ラヒーム・スターリング、ウェズリー・フォファナ、カリドゥ・クリバリ、ピエール・エメリク=オーバメヤンといったビッグネームをトーマス・トゥヘルに提供した。

    しかし、この新戦力はすぐに効果を発揮することができず、トゥヘルは9月初旬に不振を理由に解任。後任には、5年契約でブライトンの監督を務めていたグレアム・ポッターが就任した。

    ボーリはポッターが成功するために必要なすべてのツールを与えている。チェルシーは彼の就任後、プレミアリーグで10位まで順位を落としたものの、将来的な飛躍に期待されていることで、ボーリーはさらに投資。プレミアリーグ記録の移籍金(約170億円)となったとなるエンソ・フェルナンデスや8900万ポンド(約140億円)のミハイロ・ムドリクの獲得が物語るとおり、1月市場での最大の契約として際立っていた。

    チェルシーはアーセナルの目と鼻の先からムドリクを獲得し、ノニ・マドゥエケ、ブノワ・バディアシル、ダヴィド・フォファナ、アンドレイ・サントスらすべて期限付き移籍で加入。マロ・グストも夏までのリヨンへの再レンタルという形で契約し、ジョアン・フェリックスもアトレティコ・マドリーから6カ月のレンタル移籍で獲得している。

    ボーリーはファイナンシャル・フェアプレーの規則を回避する方法さえ見つけ、新たに加入する選手は前例のない長期契約に縛られることになった。

    ピッチ上では劇的な衰退を経験しながらも、イングランドで最も魅力的なチームであることを証明したブルーズにとって、今、唯一敷かれている道は再浮上である。ポッターは、自分が操縦席に座るに値することを証明しなければならないだろう。

  • 広告
  • Liverpool(C)Getty Images

    敗者:リバプールファン

    リヴァプールは、マンチェスター・ユナイテッドとの競争に打ち勝ち、PSVから4400万ポンド(約70億円)でコーディ・ガクポの獲得を発表し、冬の市場を華々しくスタートさせた。

    このオランダ人選手は、カタール・ワールドカップでの活躍が評価され、シーズン前半に獲得が決まったが、マージーサイドでは目立った活躍は未だに出来ておらず、あっという間にアンフィールドの絶望に取って代わられた。

    1月はリヴァプールにとって破滅的な月となり、ブレントフォードに1-3、ブライトンに0-3で敗れ、チェルシーとは0-0の引き分けに終わり、チャンピオンズリーグ出場圏内からは10ポイントも離されている。

    ブライトンはまた、リヴァプールをFAカップから叩き出し、今季の国内タイトル獲得の望みを絶たせ、サポーターは移籍市場での投資不足に苛立ちを覚えている。

    ユルゲン・クロップがセントラル・ミッドフィルダーをもう一人必要としているときに、ガクポは本当に必要だったのだろうか?クラブのレジェンドであるジェイミー・キャラガー氏は、ファンのフラストレーションをまとめながら、大型補強の必要性を示唆した。

    「ミッドフィルダーと契約しなければ、トップ4に入ることはできない。シーズン終了前に変わるとは思えない」と、元レッズのディフェンダーはブレントフォードへの敗戦後、『スカイスポーツ』に語った。

    「彼らは世代交代中のチームだ。ユナイテッドやチェルシーが費やした金額を考えても、彼らはまだリーグ制覇に近づいていない」

    「リヴァプールは2億ポンド(約320億円)を費やす必要がある。4~5000万ポンドの価値がある3人の中盤の選手が必要なんだ」

    しかし、冬の市場でそれは実現せず。レッズファンは、クロップと彼の選手たちにとって失われたシーズンになりそうなこの時期から、何かを得ることをクラブがすでに諦めているのではないかと思っているようだ。

  • Weghorst(C)Getty Images

    勝者:ヴァウト・ヴェグホスト

    バーンリーのストライカーは、カタール・ワールドカップのアルゼンチン戦で2ゴールを決めてみせた。

    彼の見事な活躍は、2021-22シーズンにバーンリーでプレミアリーグ20試合に出場して2ゴールしか決めていないにもかかわらず、彼が最高レベルでまだ多くのことが提供できることを示した。

    30歳の同選手は、バーンリーの降格後にベシクタスにレンタル移籍。自分のキャリアを早期にフェードアウトさせる代わりに、トルコで新たなスタートを受け入れたのだ。しかし、マンチェスター・ユナイテッドは彼の復調に注目すると、エリック・テン・ハーグが市場の始めに彼を優先ターゲットとして挙げたのである。

    ヴェグホストはトルコでのレンタル期間を短縮し、オールド・トラッフォードで6カ月の契約を結んだ。

    「代理人から初めて電話がかかってきて、僕は彼女と一緒にいたんだけど、彼女は僕の顔を見てちょっとショックを受けていたね。『ワオ』って感じだったよ」と、クラブからの最初の関心にどう反応したかという質問に対して、ヴェグホストはユナイテッドの公式サイトに語った。「特別な瞬間だったし、もちろん本当に良かった」

    ヴェグホストは自分の運を自分で切り開いたのだ。そして、もし彼がうまくいけば、テンハーグは彼を長期にわたってマンチェスターにとどめておくことができるだろう。

  • ENJOYED THIS STORY?

    Add GOAL.com as a preferred source on Google to see more of our reporting

  • Arteta(C)Getty Images

    敗者:アーセナルのビッグオファー

    アーセナルは、レアンドロ・トロサール、ポーランドの若手選手ヤクブ・キウィオル、そして期限付き移籍のジョルジーニョという3人の喜ばしい新戦力を獲得して1月の移籍市場を終えたが、ミケル・アルテタは1月のメインターゲットを獲得できなかったことに密かに歯がゆさを感じているはずである。

    ミハイロ・ムドリクはガナーズへの加入を望んでいることを隠しておらず、昨年の夏にはクラブと個人的な条件で合意したと伝えられていた。アーセナルは1月中にシャフタール・ドネツクに複数のオファーを提出し、契約をまとめようとしたが、チェルシーが彼らの心を打ち砕くために急襲したのだ。

    両クラブともムドリクにチェルシーと同等の金額を支払うつもりだったが、シャフタールはよりボーナスが付帯しているチェルシーのオファーを受け入れたのだった。

    アルテタは、この失敗の重要性を公の場で否定。ガナーズはその後、中盤を強化するためにブライトンのモイーズ・カイセドの獲得に力を注ぐことになった。

    この時もアーセナルは2つのメガオファーを提示し、そのうちの2つ目は7000万ポンド(約112億円)だったが、ブライトンは9000万ポンド(約142億円)未満でこのエクアドル人選手を手放すことを拒否。カイセドはソーシャルメディア上の声明を発表して、移籍を強行しようとした。

    ガナーズはプレミアリーグ首位で2位のシティに5ポイント差をつけているが、19年ぶりのタイトルを狙う一方で、ヨーロッパリーグとの両立を迫られることになりそうだ。

    アーセナルのサポーターたちは、ムドリクとカイセドを獲得できなかったことが、自分たちの身にふりかかってこないことを祈っていることだろう。

  • CR7(C)Getty Images

    勝者:中東のサッカー界

    11月にクリスティアーノ・ロナウドが、暗雲立ち込めるマンチェスター・ユナイテッドを去ったとき、アル・ナスルは一生に一度のチャンスと考えた。

    当初、37歳の彼はチャンピオンズリーグに出場出来るクラブに移籍し、ヨーロッパに残ることを望んでいると言われていたが、チェルシー、バイエルン・ミュンヘン、ナポリといったクラブが5度のバロンドール受賞者に距離から置いたことで、サウジアラビアがすぐに魅力的な選択肢となった。

    数週間の憶測の後、アル・ナスルは12月30日にロナウドと最初の2年契約を結んだことを発表。サッカー史上最高額の選手となったことが報じられた。

    このポルトガル人は、ミスターソウルパークでの在籍期間中、年間1億7700万円ポンド(約283億円)という驚異的な収入を得ることになり、選手生活を終えた後は大使としての役割も含まれることになる。

    C・ロナウドのサウジアラビア到着は画期的であり、このベテランストライカーが成功するかどうかにかかわらず、金銭的な利益を得られることから、近い将来、彼の足跡を追おうとするヨーロッパのスター選手がさらに増えるだろう。

    良くも悪くも、中東サッカーでのプレーを真剣に考え始める時期が来ているのだ。

  • Gordon(C)Getty Images

    敗者::エヴァートン

    【公式】エヴァートンは危機に瀕しているクラブだ。

    フランク・ランパードは、1月21日のウェストハム戦に0-2で敗れ、20試合を終えた時点でプレミアリーグ最下位となったエヴァートンの監督を解任された。

    サポーターたちは、前者には売却を、後者には辞任を求め、グディソン・パークの外で定期的にデモを行っている。

    ランパードの後任には、バーンリーの監督を勤めていたショーン・ダイチが就任したが、ピッチ上のすべての領域で質と個性に欠けるチームのモチベーションを上げるために、彼が何か違ったことをできるかはまだわからない。

    さらに、エヴァートンは新戦力を獲得しようとするたびに妨害され、プレミアリーグで唯一、新戦力を獲得できなかったクラブとしてこの市場を終えることになった。

    ダニー・イングスはアストン・ヴィラからウェストハムに移籍するためにエヴァートンを拒否したと伝えられており、シェフィールド・ユナイテッドのFWイリマン・ニアエもまた、彼らの誘いを断ったと言われている。

    また、ビジャレアルのFWアルナウト・ダンジュマは、マージーサイドでメディカルチェックを受けていたものの、土壇場でトッテナムが急襲。レンタル移籍を奪い取られた。

    エヴァートンの不幸は、生え抜きのホープであるアンソニー・ゴードンがニューカッスルへの移籍がトドメだった。21歳の忠誠心の欠如が、グディソンパークの裏側で起こっていることが物語っているようだった。

    ダイチは今、手の上に大きな課題を持っている。

  • McKennie(C)Getty Images

    勝者:ウェストン・マッケニー

    リーズ・ユナイテッドは、おそらく最も驚くべき1月の移籍劇を起こした。

    アメリカ人監督ジェシー・マーシュは、ユヴェントスMFウェストン・マッケニーという、アーセナル移籍のうわさもあったアメリカ代表を獲得したのである。

    この24歳の選手は、今シーズン終了までのレンタル契約でエランドロードに移籍したが、リーズは夏に3500万ポンド(約56億円)とも言われる金額で彼を買い取るというオプションも持っている。

    プレミアリーグで新たな挑戦をすることによって、マッケニーはユヴェントスで起きているフィールド外の混乱から逃れている。特に、ビアンコネリのファンたちが決して彼に懐いていないという事実を考えると、彼がすぐにアリアンツ・スタジアムに戻りたがるかどうかは疑わしい。

    マッケニーはユーヴェでひどい選手ではなかったが、2020年にシャルケからこのクラブにやってきたとき、ピッチ上でのクラブの成績が落ち始めたときと重なり、多くの非難を浴びてきた。リーズでは自由にプレーできるだろうし、同じアメリカ男子代表のスター選手であるタイラー・アダムスやブレンデン・アーロンソンと共にできるメリットもある。

    9月に行われた日本代表との親善試合の前に、マッケニーは14歳のときから一緒にプレーしているアダムスとの関係について「長い間お互いを知っているから、お互いの傾向や能力、長所と短所、カバーリングの仕方などを知る関係を築いてきたと思う」と話していた。

    問題は、リーズとマッケニーのつながりが、もう1年プレミアリーグに留まり続けるのに十分なものだろうかということだ。

  • Pulisic(C)Getty Images

    敗者:クリスティアン・プリシッチ

    マッケニーとは対照的に、このアメリカ代表選手はキャリアの岐路に立たされている。

    プリシッチは、ケガの問題に度々悩まされ、その高額な値札に見合う活躍が未だに出来ていない。

    ボルシア・ドルトムントから獲得するのに使った移籍金5800万ポンド(約92億円)が報われそうになるたびに、このウインガーは新たなケガに見舞われ、そして今回のケガはこれまでで最も大きなダメージだった。

    1月5日に行われたマンチェスター・シティとの試合で足を引きずり、2カ月の戦線離脱を余儀なくされたプリシッチは、1月中の移籍の可能性を事実上失ってしまった。

    チェルシーは、この24歳がドルトムントに戻る可能性があるため、売却に前向きだった。ACミランは彼をサン・シーロに呼び寄せるために交渉を行っていると報じられた。しかし、プリシッチとブルーズは夏まで別れを待つことになった。

    このアメリカのスーパースターは、スタンフォード・ブリッジで過ごした4年間の苛立ちを払拭し、キャリアの最盛期を迎えることを切に望んでいる。しかし、2023年に再びそのような機会が訪れる保証はなく、特に彼が最高のコンディションに戻ることができない場合はなおさらだ。

  • Joao Cancelo Bayern Munich 2022-23Getty Images

    勝者:バイエルン・ミュンヘン

    1月のバイエルン・ミュンヘンの活躍はそれほど大きくはなかったかもしれないが、ユリアン・ナーゲルスマンが主要ポジションの補強に動いたことで、ヨーロッパのビッグクラブの中で最も賢いビジネスを行ったと言える。

    マヌエル・ノイアーが12月にスキーで負傷し、シーズンを棒に振ったため、バイエルンは頼れるGKを失った。しかし、1月中旬のブンデスリーガ再開前にベテランのヤン・ゾマーを獲得するために素早く行動したのだ。

    スイス代表としてカタール・ワールドカップに参加していたゾマーは、豊富な経験と、ノイアーと同等のテクニックを持ち合わせている。

    さらに、デッドラインデーにはマンチェスター・シティからジョアン・カンセロをレンタルで獲得し、世界中のファンに衝撃を与えた。

    過去12カ月間、世界最高のサイドバックの一人だったカンセロは、今年に入ってからエティハド・スタジアムでの価値が急落。バイエルンはポルトガル代表選手とペップ・グアルディオラの不和を利用しようと素早く動き出したのである。

    バイエルンはここ数年、右サイドバックに自由度を求める傾向にあり、カンセロは攻撃の推進力と守備の信頼性の両方を提供するはずである。

  • Ancelotti(C)Getty Images

    敗者:プレミア以外のすべてのリーグ

    ヨーロッパのトップ5リーグに対するプレミアリーグの優位性を確認する必要があるとすれば、1月の市場ははそれを見事に証明してみせた。

    チェルシーは、セリエA、ブンデスリーガ、リーグ1、ラ・リーガを合わせたどのクラブよりも多くの新戦力を獲得し、イングランドは、最高レベルで活躍しようとする新進気鋭の才能にとって究極の目的地と考えられていることが分かった。

    ユベントスの前会長アンドレア・アニェッリは、11月に辞任したと同時に、パワーバランスを取り戻すためにも、ヨーロッパスーパーリーグの開催をを検討しなければならないと主張している。

    「私は欧州サッカーには将来に向けた構造改革が必要だと信じていたし、今もそう思っている」と彼は言った。「さもなければ、プレミアリーグという支配的なリーグが数年のうちにヨーロッパの才能ある選手をすべて引きつけ、他の選手を疎外することになり、サッカーはどうしようもない衰退に向かうだろう」

    チェルシーの場合、ロマン・アブラモビッチはトッド・ボーリーという大金持ちの投資家と入れ替わり、マンチェスター・シティとニューカッスルは、バルセロナ、バイエルン、ミランといったヨーロッパの歴史的に成功したクラブが到底かなわない高額な契約を選手に提供することができるのである。

    パリ・サンジェルマンはカタールの支援を受け、レアル・マドリーも世界的な支出力を誇っているが、彼らもかつてのように財布の紐が緩くなったわけではない。

    プレミアリーグは現在、最も重要な場所であり、質の高い競争は今後数年のうちにイングランドでさらに激化することは間違いない。

0