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【評価】新生アッズーリ、総勢12選手がA代表デビュー! イタリアの未来を担う超新星・大器も

 昨年のEURO2020でベルギー、スペイン、イングランドという列強を下して見事に優勝を飾り、名門復活の狼煙を上げた「アッズーリ」ことイタリア代表。しかし、肝心のカタール・ワールドカップ(W杯)予選では、プレーオフで北マケドニア代表に不覚を取り、2大会連続で出場権を逃すという不名誉な結果に終わってしまった。

 4年後の2026年を目指して再出発を切ったロベルト・マンチーニ監督は、この6月に行われたUEFAネーションズリーグに国際経験の浅い若手を数多く招集。ドイツ、イングランド、ハンガリーとの真剣勝負を通して、アッズーリの未来を担い得るかどうかを見極めるトライアルとしての意味合いを持たせた。

 そして、この4試合でA代表デビューを飾った新戦力は12人。今回は、彼らのプロフィールと活躍ぶりを紹介していこう。今後、A代表に定着して主力を担う可能性がどれだけあるか、現時点での評価を★★★から★までの3段階で示した。

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  • Gnonto(C)Getty Images

    FWヴィルフリード・ニョント Wilfried Gnonto(2003/FCチューリッヒ):★★★

     今回のネーションズリーグ4試合すべてに出場して1得点1アシストを記録、最も大きな評価と注目を集めた18歳の超新星。デビュー組の中でも際立って多かった出場時間が、マンチーニ監督の期待の大きさを物語る。

     コートジボワール人の両親を持つイタリア生まれの移民2世で、170cmと小柄ながら厚みのある堅牢な体格に爆発的なパワーとスピード、そして優れた両足のテクニックを備える。9歳からインテルのアカデミーで育ち、16歳で出場した2019年のU17ワールドカップで3ゴールを挙げるなど、各年代のイタリア代表を「飛び級」で経験しながら主力として結果を残してきたエリート中のエリートだ。 

     満16歳でプロ契約が可能になった2020年夏には、インテルのオファーをあえて断りすぐにトップチームでの出場機会を約束したスイスのチューリッヒFCと契約、2年目の今シーズンは途中出場主体ながら8得点3アシストを挙げてチームのリーグ優勝に貢献した。

     ドイツとのデビュー戦で見せたアシストが示す通り単独での突破力もあるが、持ち味はむしろ的確なポジショニングとプレー展開の読みを活かし、周囲と連携しながら局面を打開しフィニッシュに絡んでいく優れた戦術センス。ウイングだけでなくセンターフォワードやトップ下としてもプレーできる万能タイプで、ラヒーム・スターリングを彷彿させるアッズーリ希望の星だ。

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  • Alessio-Zerbin(C)Getty Images

    FWアレッシオ・ゼルビン Alessio Zerbin(1999/フロジノーネ):★

     ニョントとは対照的にアマチュアクラブでキャリアをスタートし、下部リーグでの下積みを重ねてきた叩き上げの23歳。今シーズンはセリエBのフロジノーネで左ウイングとして9得点3アシストを記録、シーズン終了直後に行われた若手53人を対象とするA代表候補のミニキャンプに招集されると、そのままネーションズリーグのメンバー入りを勝ち取った。

     4部リーグのアマチュアクラブでプレーしていた18歳の冬、ナポリに見出されてプロ契約を交わしたが、その後の3年間はセリエC(3部リーグ)のクラブをレンタルで転々とし、22歳で迎えた今シーズンようやくセリエBのフロジノーネにステップアップし、頭角を現した。

     左サイドに張って足下にパスを引き出し、そこからゴールに向かってドリブルで斜めに仕掛ける典型的な「逆足ウイング」のプレースタイルを持つ。スピード、テクニックともにとりわけ際立ったレベルにはないものの、90分を通して試合から消えることなく攻守両局面で常に存在感を発揮できる安定性、信頼性が大きな長所と評価されている。

     U21を含め年代別代表の経験もほとんどなく、今回の招集もサプライズだったが、アマチュアからスタートしてここまで着実にステップアップしてきただけに、本領発揮はむしろこれから。今も保有権を持つナポリがこの遅咲きタレントをどう開花させようとするか注目される。

  • Matteo-Cancellieri(C)Getty Images

    FWマッテオ・カンチェッリエーリ Matteo Cancellieri(2002/ヴェローナ):★

     ローマのアカデミーで育ち2年前にヴェローナに移籍、今季トップチームにデビューした左利きのアタッカー。今シーズンの出場時間は200分強とまだ実績は皆無に等しいが、ゼルビン同様、5月末の代表候補ミニキャンプでマンチーニ監督に認められて抜擢され、ドイツ戦最後の5分間にA代表デビューを飾った。

     左足の繊細なタッチからのドリブル突破とシュートを武器とする典型的な「逆足ウイング」で、オープンスペースはもちろん密集の中でもDFをかわして内に切れ込むテクニックとクイックネスの持ち主。右サイドはもちろん中央でセカンドトップ/トップ下としても機能する得点感覚も備えている。

     そのタレントは高く評価されているものの、トップチームでのプレー経験がまだ浅くプロ選手としての本格的なキャリアを築くのはむしろこれから。すでにサッスオーロ、ボローニャ、トリノ、フィオレンティーナなど若手の登用とバリューアップに積極的なクラブが獲得に乗り出しており、来シーズンは中堅クラブにステップアップして、さらなる成長曲線に乗ることが期待されている。

  • Gianluca-Caprari(C)Getty Images

    FWジャンルカ・カプラーリ Gianluca Caprari(1993/ヴェローナ):★

     23歳以下の若手が揃った今回のデビュー組の中で唯一、1993年生まれの28歳という脂の乗り切った中堅クラス。ローマのアカデミーで育ち、17歳でトップチームデビューを果たしながら、その後はセリエB、そしてセリエAの弱小クラブを転々としながらキャリアを重ね、今シーズン初めて2桁ゴールを達成した遅咲きの苦労人だ。

     身長171cmの小柄なテクニシャンで、基準点となるセンターフォワードと連携しつつその周囲を動き、ドリブル突破やワンツー、裏抜けなどの仕掛けを通してフィニッシュに絡んでいく、今では珍しくなった典型的なセカンドトップ。今シーズンのヴェローナでは、ジョヴァンニ・シメオネとの絶妙なコンビネーションで攻撃を担い、一桁順位(9位)という予想を上回る躍進の原動力となった。

     A代表への招集は今回が初めてではなく、ヴェントゥーラ監督時代の2017年に一度、マンチーニ監督就任から間もない2018年にも一度メンバー入りしているが、公式戦への出場機会は今回が初めて。ドイツに0-2とリードされた後半開始からという難しい状況だったが、献身的なプレッシングやオフ・ザ・ボールの動きで攻撃を活性化しようと務めた。

  • Davide-Frattesi(C)Getty Images

    MFダヴィデ・フラッテージ Davide Frattesi(1999/サッスオーロ):★★

     今回のネーションズリーグ4試合のうち3試合でスタメンに名を連ねるなど、デビュー組の中ではニョントと並んでマンチーニ監督に最も重用された期待のインサイドMF。中盤を活発に動き回ってボールに絡みつつ、タイミングのいい攻め上がりから1試合に数回はフィニッシュに絡んでいく縦のダイナミズムと攻撃センスが最大の長所だ。

     カンチェッリエーリ、カプラーリと同じくローマのアカデミー育ち。 U17、U19、U21と育成各年代の代表でレギュラーとして欧州選手権を戦ってきたエリートだが、クラブレベルでは育成年代を終えたタイミングで移籍したサッスオーロから、2年連続でセリエBにレンタルされての「武者修行」を強いられるなど、やや伸び悩んだ。 

     しかし、サッスオーロに戻ってセリエAデビューを果たした今シーズンは、ほぼ全試合にスタメン出場して4得点4アシストという活躍。一躍イタリアで最も注目される若手MFのリストに名を連ねる時の人となった。バレッラ、トナーリ、ロカテッリ、ペッレグリーニと並び、アッズーリの中盤を支える主軸の1人となることが期待される逸材だ。

  • Tommaso-Pobega(C)Getty Images

    MFトンマーゾ・ポベガ Tommaso Pobega(1999/トリノ→ミラン):★

     188cmと大柄な体格を活かした縦のダイナミズムを武器とするボックス・トゥ・ボックス型の大型MF。パワフルな攻撃参加が持ち味で、ミドルシュートだけでなく空中戦の強さも特筆ものだ。タイプの近いフラッテージと比べると攻守のバランスはやや守備寄りで、インサイドハーフだけでなく2セントラルMFの一角でもプレーできる。

     ミランのアカデミーで育ち、育成年代を終えた18歳で下部リーグにレンタル移籍、セリエC(テルナーナ)、セリエB(ポルデノーネ)とステップアップし、直近2シーズンはセリエAのスペツィア、トリノでさらなる「武者修行」と、今回取り上げた多くの若手と同じキャリアパスを辿り、昨秋のW杯予選で初のA代表招集を勝ち取った。その時は出場機会がなかったものの、今回はネーションズリーグ初戦のドイツ戦でラスト10分に途中出場、23歳で代表デビューを果たした。

     新シーズンは保有権を持つミランに戻り、トナーリ、ベナセルと中盤のポジションを争うことになりそう。着実なステップアップを経てたどり着いたビッグクラブでさらなる成長を見せれば、代表でもより存在感を高めることができるだろう。

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    MFサムエレ・リッチ Samuele Ricci(2002/トリノ):★★

     ダイナミズムを武器とするインサイドハーフタイプが多いこの世代の中では、最もレジスタ(ゲームメーカー)色が強いMFの1人。2つ上の世代でフラッテージがそうだったように、U17からU21まで各年代のイタリア代表で主軸を担ってきたエリートで、現在もU21代表で主将を務めている。

     育成の名門エンポリで育ち、18歳でトップチーム(当時セリエB)にデビューすると、すぐにレギュラーに定着し、翌20-21シーズンには主力としてA昇格に貢献。初めてセリエAの舞台に立った今シーズンも前半戦で際立った活躍を見せ、冬の移籍マーケットでトリノに移籍金1000万ユーロで引き抜かれた。

     常に周囲をスキャンしながら細かくポジションを修正して味方にパスコースを提供し、シンプルにさばきながら攻撃のリズムを作っていくプレーぶりは、アッズーリの若手MF陣の中でも、EURO2020優勝の立役者となったジョルジーニョのそれに最も近い。もし今後レジスタとしてのゲームメイク能力をさらに磨くことができれば、現時点ではまだ定まっているとはいえないジョルジーニョの後継者の座に収まる可能性も秘めた逸材だ。

  • Salvatore-Esposito(C)Getty Images

    MFサルヴァトーレ・エスポージト Salvatore Esposito(2000/SPAL):★

     ゼルビン、ガッティと同様、セリエAでのプレー経験を持たないまま5月の代表候補ミニキャンプを経て抜擢されたうちの1人。今回招集されたMF陣の中では最も守備的なキャラクターを持つが、決して守備専業のディフェンシブMFではなく、ゲームメイクからプレッシング、ボール奪取まで攻守両局面をバランスよくこなす万能タイプだ。 

     イタリアの育成年代ウォッチャーなら誰もが知る「インテルのエスポージト3兄弟」の長兄で、2歳年下のセバスティアーノは17歳でトップチームにデビューし、今シーズンはスイスリーグのバーゼルにレンタルされて6得点5アシストを挙げたストライカー、5歳年下のフランチェスコ・ピオもFWで、インテルのアカデミー(U17)でゴールを量産中だ。

     彼自身は18歳でインテルから当時セリエAのスパルに移籍した後、セリエC(ラヴェンナ)、セリエB(キエーヴォ)にレンタルされて経験を積み、今シーズンはBに降格したスパルで中盤の底からゲームを作るレジスタを務めた。身長178cmと現代のMFとしては比較的小柄な体格ながら、最終ラインをプロテクトする守備力が高く、さらに長短のパスワークによるゲームメイクもレベルが高い。タイプとしては本人が憧れを公言するダニエレ・デ・ロッシに近いと言えるだろう。来シーズンはセリエAへのステップアップが濃厚だ。

  • Luiz-Felipe (C)Getty Images

    ルイス・フェリペ Luiz Felipe (1997/ラツィオ→ベティス):★★

     長年最終ラインを支えてきたキエッリーニ、ボヌッチに替わってディフェンスの中核を担うCBの育成が大きな課題となる中、マンチーニ監督がリストアップした候補の1人。1対1の対人守備に優れるだけでなく、左右両足の高いテクニックを活かしたビルドアップ能力の高さも備え、守備だけでなく攻撃においても貢献度が高い現代的なCBだ。

     18歳で当時ブラジル4部リーグのイトゥアーノ(横浜FCと提携)から発掘されてイタリアに渡り、ラツィオで経験を重ねる中で大きく成長、今シーズンはサッリ監督の下で最終ラインの中核を担うディフェンスリーダーとして活躍した。ジョルジーニョ、エメルソン・パルミエーリ、トロイらと同様、ブラジルとの二重国籍を持つ中でイタリア代表の招集を受け入れ、アッズーリの一員としてプレーすることを選択。今年1月の代表候補キャンプからチームに加わり、アウェーのドイツ戦でデビューを果たした。

     CBとしては際立った長所を持つわけではないが、目立った弱点がなく平均点が高いバランス型で、パフォーマンスの安定性も含め信頼のおけるタイプ。今シーズン限りで切れるラツィオとの契約延長で合意が成立せず、来シーズンはスペインに活躍の場を移しベティスでプレーする可能性が濃厚になっている。

  • Federico-Dimarco(C)Getty Images

    DFフェデリコ・ディマルコ Federico Dimarco(1997/インテル):★★

     左足の正確なキックを最大の武器とする左SB。育成各年代の代表でレギュラーを務めてきたエリートだが、DFとしては小柄な体格、スピードや持久力といったフィジカル能力もとりわけ際立ってはいないことから、「このレベルでは通用するがひとつ上では難しいのでは?」という評価に晒されながら、それを克服してここまではい上がってきた。

     インテルのアカデミーで育ち、18歳からはセリエBのアスコリから始まって、セリエAの中・下位クラブをレンタルで転々としながら経験を重ねるという、今回取り上げた多くの若手と同じキャリアを辿ってきた。昨シーズンのヴェローナで初めてレギュラーとしてコンスタントに活躍した実績が認められ、今シーズンはインテルに復帰、3-5-2のウイングバックとしてだけでなく、3バックの左CBとしてもプレーし、持ち前のテクニックを活かした長短のパスワーク、質の高いクロスやアシストでチームに貢献した。

     縦の突破力やスピードではなく、質の高いパスワークと戦術眼で勝負する「レジスタ型」のSBはイタリアでは希少価値だけに、絶対的なレギュラーというよりは欠かせない戦術オプションを提供する貴重な駒として、今後もマンチーニ監督に重用されそうだ。

  • Federico-Gatti(C)Getty Images

    DFフェデリコ・ガッティ Federico Gatti(1998/フロジノーネ→ユヴェントス):★★

     ゼルビン同様、セリエAでのプレー経験がまったくないままA代表デビューを果たした文字通りの叩き上げ。今年1月、セリエBのフロジノーネでの活躍に目をつけたユヴェントスが保有権を買い取ったことで話題と注目を集めたが、それまではまったくの無名選手だった。

     建設労働者として働く傍らアマチュアの5部リーグでMFとしてプレーしていたのがわずか4年前のこと。21歳になったその翌年、ひとつカテゴリーを上げたアマチュア最高峰のセリエD(4部リーグ)でCBにコンバートされてめきめきと頭角を現し、続く20-21シーズンはセリエC、そして今シーズンはセリエBへとステップアップ。ユヴェントスと契約を交わしただけでなく、A代表デビューまで果たすというシンデレラストーリーの主役となった。

     190cmの大柄な体躯を武器にしたハードマークが武器だが、MFとして育っただけに左右両足を使いこなして長短のパスを配球するビルドアップ能力の高さも備える現代的なCB。雑草育ちならではの強いパーソナリティも評価されている。来シーズンはユヴェントスに残れるかどうかはともかく、セリエAが活躍の舞台となることはほぼ確実。どれだけの「器」かが本当に試されるのはこれからだ。

  • Giorgio-Scalvini(C)Getty Images

    DFジョルジョ・スカルヴィーニ Giorgio Scalvini(2003/アタランタ):★★★

     ガッティとは対照的に、育成の名門アタランタで早くから注目を浴び、育成各年代のイタリア代表でプレーしてきたエリートCB。ニョントと同じ2003年生まれの18歳と、今回の招集メンバーでは最も若いが、すでにセリエAで準レギュラーとして着実に経験を重ねている。

     194cmという長身、そしてアタランタ育ちという共通点から、4歳年上のバストーニと比較されることも少なくないが、大柄な体格にもかかわらずそのバストーニよりもさらにテクニカルで、MFとしても十分にプレーできるだけのクオリティの持ち主だ。実際今回A代表デビューとなったアウェーのドイツ戦でも、DFとしてではなく3-5-2の中盤でアンカーとして起用され、最終ラインをプロテクトしながらビルドアップの起点となり攻守のバランスを担保するという難しい役割を安定してこなし、マンチーニ監督から賛辞を受けた。

     トップチームでの経験がわずか1年足らずにもかかわらず、すでにセリエA、そして強豪ドイツとの代表戦でもまったく物怖じしない自然体でのプレーを見せるなど、アッズーリの将来を担う大器としての素質は十分。ここからどのような成長を見せるかが期待される逸材だ。

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