サッカーの試合は90分、というイメージは多くの人が持っているだろう。だが、それはあくまで「プロ」や「国際試合」の話。実際には、年代やレベルによって試合時間は大きく異なる。
この記事では、小学生からプロまでそれぞれのカテゴリごとに試合時間の違いを整理する。

サッカーの試合は90分、というイメージは多くの人が持っているだろう。だが、それはあくまで「プロ」や「国際試合」の話。実際には、年代やレベルによって試合時間は大きく異なる。
この記事では、小学生からプロまでそれぞれのカテゴリごとに試合時間の違いを整理する。
Getty Images Sport小学生年代(U-12)のサッカーでは、身体的な発達段階や集中力の持続時間を考慮し、試合時間は大人に比べて短めに設定されている。日本サッカー協会(JFA)のガイドラインでは、1試合あたりの時間は「40分(20分ハーフ)」が基本。これにより、無理のない範囲での試合経験が積めるよう配慮されている。
ただし、地域や大会のレベルによっては「30分(15分ハーフ)」や「50分(25分ハーフ」など、やや異なる時間設定がなされるケースもある。特にローカル大会や交流戦では、1日に複数試合を行うことも多く、選手の疲労や安全性を重視して短縮される傾向にある。
この年代では勝敗よりも“経験”が重視される。短時間の中で最大限のプレー体験を提供することが、次のステージにつながる第一歩だ。
AFP中学生年代(U-15)になると、フィジカルやメンタル面での成長が顕著になり、より“本格的なサッカー”が求められるようになる。それに伴い、試合時間も小学生時代より長く設定され、「60分(30分ハーフ)」が全国大会などの公式戦では標準となっている。
ただし、地域のリーグ戦やトレーニングマッチなどでは「25分ハーフ」で行われることもあり、試合の重要度や連戦を考慮した運営がなされている。全国レベルの大会(高円宮杯やクラブユース選手権)では30分ハーフが原則で、より高強度のプレーが求められる場となっている。
このカテゴリーからは、原則として11人制が採用され、ピッチもフルサイズ(105m×68m)に移行。試合環境が一気にプロ仕様に近づくため、選手の空間認知や運動量、ポジショニング理解が格段に重要になるフェーズだ。加えて、攻守の切り替えやセットプレーの精度など、戦術面でのアプローチも強化されてくる。育成年代ではあるが、「結果」が求められる大会も増えてくるため、勝負にこだわるメンタリティの育成もこの段階で培われる。
60分という試合時間は、90分へと移行するための通過点。フィジカル・テクニック・判断力の三拍子がそろわなければ、ピッチ上での存在感を発揮することは難しい。中学年代は“育成と競争”が共存する、まさにターニングポイントといえる。
Getty Images Sport高校生年代(U-18)になると、サッカーの試合時間は「80分(40分ハーフ)」が基本となる。これは全国高校サッカー選手権やインターハイ、プリンスリーグといった主要大会でも共通しており、“プロ寸前”の強度と密度が求められる。
また、トーナメント形式の大会では延長戦が導入されることも多く、10分ハーフ(20分間)や1本勝負の20分延長戦を戦った上でPK戦に突入するなど、精神的なタフさも問われるステージだ。
この年代になるとフィジカルが完成に近づき、ボールスピードやコンタクトの強さ、走力が一気にプロレベルに近づく。技術や体格差も顕著に出るため、「勝ちにこだわる姿勢」がプレーに直結する。戦術面では監督の色がより濃く反映される傾向があり、全国常連校では可変フォーメーションやハイプレス、ポゼッション重視などの戦術が浸透している。個の能力に加えて、組織の中でどう機能するかが評価されるポイントだ。
また、全国大会での活躍はスカウトの目に留まる重要な機会であり、プロ入りや大学進学に直結する選手も多い。つまりこの80分間は、単なる試合ではなく“進路を決定づける舞台”でもある。高校サッカーは、プレーヤーにとって「競技人生の本気度」が試されるステージ。その中での経験は、ピッチ内外における人間力の成長にもつながっていく。
Getty Images Sport大学生年代(U-22)では、サッカーの試合時間は基本的に「90分(45分ハーフ)」となる。これはプロの公式戦や国際基準と同様であり、選手たちは“フルタイム”のゲームを前提としたトレーニングと戦術理解が求められる。
関東・関西の大学リーグ、インカレ(全日本大学選手権)、総理大臣杯といった主要大会では、45分ハーフでの完全な試合形式が採用されており、プロのスカウト陣も数多く視察に訪れる。まさにプロ入りを目指す選手にとってのショーケースといえる。
一方で、大学間の練習試合やサテライト的な大会では、選手の起用人数や日程の関係で「80分(40分ハーフ)」の試合形式が採られることもあり、スケジュールやコンディションに応じて柔軟な運用がなされている。
大学サッカーの特徴は、戦術の成熟度と個のスキルが高度に融合している点にある。選手たちはプロさながらのフィジカルトレーニングをこなしながら、戦術理解や局面での判断力を鍛え、将来のステップアップに備える。また、学業との両立が求められるため、生活管理能力やメンタルの安定も重視。そうした側面は、プロ入り後の継続的な成長にも直結しており、大学サッカー出身者がJリーグで長く活躍する例が増えている背景でもある。
90分間を「当たり前」としてプレーするこの年代は、サッカー選手としての完成度を高める最後の育成段階。ここでの経験値が、プロの世界で通用するかどうかの判断材料となっていく。
Getty Images Sportプロサッカーや国際試合の舞台では、試合時間は「90分(45分ハーフ)」がグローバルスタンダード。FIFAやAFC主催の国際大会、Jリーグ、欧州5大リーグなど、すべての公式戦がこの基準で行われる。
この90分に加えて、アディショナルタイム(ロスタイム)が前後半の終了時にそれぞれ追加されるのが一般的。さらに、ノックアウト方式の試合では延長戦(15分ハーフ)とPK戦が実施され、勝敗が完全に決まるまで戦いは続く。
プロの現場では、選手のスプリント数やプレーの強度、戦術的な切り替えの早さが求められ、90分間を高い集中力で維持できるかが勝敗を大きく左右する。体力だけではなく、戦術理解・メンタル・リーダーシップなど、トータルな資質が問われる世界だ。特に近年は、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の導入により、アディショナルタイムが長くなる傾向が強まっている。2022年カタールW杯では“100分を超える試合”が当たり前になり、フィジカルと集中力の限界がさらに引き上げられた。
この“90分基準”は、すべての育成年代において目指すべき最終ゴールであり、小学生から段階的に積み重ねてきた「体力・技術・戦術」の集大成が求められる舞台でもある。