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ニック・ウォルトメイド:シュトゥットガルトで大ブレイクの“身長2mのメッシ”とは?【Hidden Gems FC パート2】

『GOAL』がお送りする新コーナー「Hidden Gems FC」。かつてレスターで一時代を席巻したエンゴロ・カンテやリヤド・アマフレズのように、キャリア初期はあまり注目が集まっていなかったものの、今や世界最高レベルでの活躍が期待できるポテンシャルを秘めた各国リーグの選手にスポットライトを当てる。そして「Hidden Gems FC」第2弾は、シュトゥットガルトで活躍するFWニック・ウォルトメイドだ。

バルセロナやアルゼンチン代表で数々の偉業を達成してきたリオネル・メッシ。そんなフットボール史に名を残すレジェンドはあまりに影響が大きく、これまで何人もの選手が彼と比較され、世界各国に“Next メッシ”を生み出してきた。

だが、ニック・ウォルトメイド以上の体格を持つ“Next メッシ”はこれまで存在しなかっただろう。身長198cmを誇るこのアタッカーについて、シュトゥットガルト主将アタカン・カラソルは「テクニックはメッシのようだよ!」と発言。冗談半分だろうが、あながちその評価は間違っていないと言えるはずだ。

今回は、シュトゥットガルト18年ぶりの主要タイトル獲得に貢献したドイツ代表FWを紹介する。

  • FBL-GER-BUNDESLIGA-BREMEN-LEVERKUSENAFP

    すべての始まり

    2003年2月14日、バレンタインデーにブレーメンに誕生したウォルトメイド。フットボールへの情熱は幼少期から育まれ、7歳の時に地元のアマチュアチームからブレーメンのユースチームへとスカウトされた。

    2018-19シーズンにはU-17チームで18ゴール8アシストを記録し、これが当時のトップチーム指揮官フロリアン・コーフェルトの注目を集めることになる。その後もU-19チームでもゴールを量産、そして2020年2月1日のアウクスブルク戦で途中出場。17歳11カ月18日でのデビューは、ブレーメン史上最年少記録となった。

    当然、この青年はブレーメンというクラブ、ファン、そして街全体の期待を背負うことになる。しかし、そのキャリアは順調には進まなかった。

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  • SV Werder Bremen v Hannover 96 - Second BundesligaGetty Images Sport

    転機

    2021年1月には膝の靭帯損傷で長期離脱を余儀なくされ、その後も慢性的な膝の問題に悩まされることに。それが影響してブレーメンでのポジションを確立できず、そのまま2022年夏には当時3部のSVエルフェアスベルクへとレンタルで放出される。

    しかし、これがウォルトメイドにとって転機に。何よりもプレー時間を必要としてた彼はフォームを取り戻し、リーグ戦で10ゴール9アシストをマーク。ブンデスリーガ2部昇格の立役者となった。

    結局ブレーメンでは期待されたほどの活躍は残せず、2023-24シーズン限りで契約満了を持って故郷のクラブを去ることに。それでもSVエルフェアスベルクでの活躍が複数クラブの関心を集め、結果としてシュトゥットガルト加入につながっている。

  • FBL-GER-CUP-BIELEFELD-STUTTGARTAFP

    シュトゥットガルトでの躍動

    シュトゥットガルトではチャンピオンズリーグ登録メンバーに含まれず、ブンデスリーガ最初の9試合で4試合しか出番が得られなかったウォルトメイド。それでもチャンスを与えられたDFBポカールでは3試合連続ゴールを記録、そしてブンデスリーガ第13節ウニオン・ベルリン戦で途中出場から2ゴールを叩き込んだことで、セバスティアン・ヘーネス監督の信頼を勝ち取ることになる。

    結局2024-25シーズンは、ブンデスリーガ28試合で12ゴール2アシストを記録。さらにDFBポカールは出場した全5試合でゴールを奪い(5ゴール1アシスト)、大会得点王に輝いて優勝の立役者となった。

    この活躍から6月にはドイツ代表に初招集。UEFAネーションズリーグ準決勝に挑むことになる。さらに今夏開催されるU-21 EUROでも活躍が期待されるなど、今後のドイツを背負うアタッカーとして再び期待を集めている。

  • “身長2mのメッシ”

    シュトゥットガルト主将カラソルは、ウォルトメイドの体格と足元の技術が相手の脅威となることにすぐに気づいていた。「良い選手を見極めるのは早い方だと思っていたけど、ニックは最初のトレーニングでそう思ったんだ」と『Ran』で語っている。

    「僕らにとって一番大切だったのは、ウォルトメイドと試合中にうまく絡んでいくことだった。でも彼はライン間で勝負するアタッカーとしても、相手ボックス内でDFと戦うNo.9としてもプレーできるんだ。まるで“身長2mのメッシ”のようだね!」

    最前線で圧倒的な存在感を見せ、長い手足と高い技術力からくるボールキープによってチームメイトのプレッシャー軽減や時間を与えるだけでなく、視野の広さによって自分がいるべきスペースへと効果的に侵入することができる。そしてもちろん、ボール奪取においても重要な存在だ。献身性も高く、プレッシング時のコース取りも評価できるだろう。

    そしてU-21ドイツ代表として出場したスペイン戦の圧巻の独走ゴールに代表されるように、大舞台でも周りに衝撃を与えるような輝きを放つことができるメンタリティも有している。もちろんフィニッシュフェーズでのクオリティにまだまだ改善の余地はあるが、年々進歩していることを考えると、徐々に得点率は上がっていくはずである。

  • DSC Arminia Bielefeld v VfB Stuttgart - DFB Cup Final 2025Getty Images Sport

    ステップアップの可能性

    今シーズンの活躍は、もちろん移籍市場でも関心を集めている。

    『ビルト』によると、ハリー・ケインの長期的な後継者を探すバイエルン・ミュンヘンに加え、ブライトンやエヴァートンというプレミアリーグ勢も関心を示している模様。さらにスペイン『ムンド・デポルティーボ』は、アトレティコ・マドリーが争奪戦をリードしたとまで伝えている。

    一方シュトゥットガルトも、簡単に手放すつもりはない。アレクサンダー・ヴェールレ会長は5月末、『sport.de』で「ニックは我々の選手であり、来季も我々のためにプレーする。ここでさらに数シーズンプレーするべきだと思っているよ。ここでのプレーは楽しいはずだからね」と語っている。

    ブレーメンで苦しんだ彼は、シュトゥットガルトでようやくそのポテンシャルを開花させた。来年ワールドカップが迫っていることを考えれば、会長の言う「楽しい」場所でもう1シーズン戦うのが最も現実的な選択肢かもしれない。

    だが、今後も彼へのオファーが殺到することは間違いないだろう。“身長2mのメッシ”を欲しがらないクラブなど、存在するのだろうか?