Yuri AlbertoGetty/GOAL

ユーリ・アルベルト:近い将来プレミアリーグ上陸も?ブラジルで評価高めるNo.9【Hidden Gems FC パート5】

今年3月に24歳となったユーリ・アルベルト。16歳でプロ契約を結んだ逸材は若くしてあまりにも多くのことを経験したため、実年齢よりも多く歳を取っていると錯覚する人も多いはずだ。それでも24歳となった今、実績とゴールを積み重ね、数多くのヨーロッパクラブが注目するNo.9へと成長した。

現在関心が伝えられるのは、プレミアリーグ勢はもちろん、ローマやアトレティコ・マドリーといった強豪クラブ。若くして大きな注目を集めながらキャリア初期に様々な苦労を経験してきたブラジル人FWだが、ようやくその才能を世界的な舞台で披露するタイミングが訪れたのかもしれない。

文=タウアン・アンブロージオ

  • Santos v Delfin - Copa CONMEBOL Libertadores 2020Getty Images Sport

    すべての始まり

    サンパウロ郊外のサン・ジョゼ・ドス・カンポスで生まれたユーリ・アルベルト。幼い頃からフットボールに夢中であり、最大のロールモデルである父親のアマチュアの試合をよく観戦していたという。そしてその父彼にとって最初のコーチとなり、幼い頃から逆足(左足)でのシュートも練習させていたようだ。

    父の指導もあって両足でのフィニッシュ、そして特別な身体能力はブラジルの名門の注目をすぐに集めた。2013年、ネイマールがバルセロナへと移籍した年にサントスへと加入。母と姉妹と共にクラブ施設に近いバイシャダ・サンティスタへ移り住み、父は息子の夢を支えるため複数の仕事を掛け持ちした。ペイシェ(サントスの愛称)のユースアカデミーではロドリゴ(レアル・マドリー)ともプレーし、わずか16歳でトップチームに昇格する。当時からアーセナルやマンチェスター・ユナイテッドの関心を集めるような逸材だった。

    しかしトップリーグでの戦いに適応できず、出場機会は減少。監督交代に伴いクラブが不安定な時期を迎えていたこともあって、ユースとトップチームを行き来することに。契約満了が近づくにつれて、移籍は避けられない状況に陥っている。

  • 広告
  • 2020 Brasileirao Series A:  Internacional v Botafogo Play Behind Closed Doors Amidst the Coronavirus (COVID - 19) PandemicGetty Images Sport

    ブレイクのきっかけ

    出場機会の少なさと契約延長交渉に不満を抱えたユーリ・アルベルトは、2020年にインテル・ナシオナルへの移籍を決断。この決断はサントスサポーターの反感を買ったが、彼の決断は正しかったと言える。ブラジル全国選手権で10ゴールを記録し、インテル・ナシオナルを1979年以来となるリーグ優勝目前に導いた。さらに、2021年には公式戦通算19ゴールをマーク。このパフォーマンスは世界的に大きな注目を集め、ゼニト・サンクトペテルブルクへと2500万ユーロで移籍を果たしている。

    自身初の欧州挑戦に期待を抱いていたユーリ・アルベルト。ロシアでも15試合で6ゴール3アシストと結果を残していた。しかし加入から数カ月後、ロシアのウクライナ侵攻が始まることに。こうした情勢から、2022年に母国ブラジルのコリンチャンス移籍を選択している。

  • Corinthians v Internacional - Brasileirao 2025Getty Images Sport

    転機

    しかし、ブラジル復帰後の歩みは決して平坦ではなかった。コリンチャンスでの最初の2年間は浮き沈みの連続で、2022年と2023年にクラブが降格危機に瀕する中、ユーリ・アルベルトは激しい批判にさらされた。2024年には「限界に達した」と「Benja Me Mucho」で自ら告白している。

    「退団したいと強く思っていた。もう耐えられなかったんだ。退団に向けてあらゆる努力をするつもりだった。限界だったよ」

    しかし、転機となったのはラモン・ディアス監督の就任。ユリは2024シーズン、同監督の下で31ゴールを挙げて得点王に輝いた。その才能がさらに開花し、加入後公式戦で通算70ゴールを記録。21世紀以降ではクラブ歴代最多得点者になった。2025年のカンピオナート・パウリスタでは優勝に導き、今やコリンチャンスのアイドルとして確固たる地位を築いている。

  • Corinthians v Universidad Central - Copa CONMEBOL Libertadores 2025Getty Images Sport

    最大の強み

    ユーリ・アルベルトは現在も、元ブラジル代表監督ドリバル・ジュニオールの下でコリンチャンスの絶対的な攻撃の要となっている。

    左右両足でパンチ力あるシュートを放ち、空中戦にも強く、ボックス内で相手DFを恐怖に陥れる存在感を放っている。また、必要に応じてビルドアップに絡むことも可能。カウンター時の爆発的なスピードに加え、止まることなくピッチを走り回る献身性により、現在のブラジルにおいて「最も完成されたストライカー」の1人と言えるだろう。

  • Corinthians v Santos - Campeonato Paulista 2025Getty Images Sport

    プレミアリーグの舞台へ?

    現在彼に関心を強めているのは、ウェストハムやウォルヴァーハンプトンなど、プレミアリーグ複数クラブだ。本人もイングランドトップリーグを「夢の舞台」と考えているという。

    その一方で、ユーリ・アルベルトは最近コリンチャンスと2030年まで契約を延長している。国外クラブ向けの契約解除金は1億ユーロに設定されているようだ。コリンチャンスとしては、クラブのアイドルをそう簡単に手放すつもりはない。

    それでもブラジル国内での活躍によってセレソン入りも果たしている24歳は、これからも何度もマーケットで名前が挙がることになるだろう。2025年夏の移籍市場は閉幕したばかりだが、「ユーリ・アルベルト」という名前は今後に向けても覚えていて損はないはずだ。