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ハリー・マグワイアの復活:マンチェスター・ユナイテッドの元キャプテンは、ルベン・アモリム監督の下で輝きを取り戻す

「大切なのは、どれだけ強く相手を打つかではない。どれだけ強く打たれても前に出続けることだ。どれだけ打たれても前に出続けること、それが勝利の秘訣だ!」

ロッキー・バルボアのこの感動的なセリフは、2006年の映画公開以来、あまりにも頻繁に引用されてきたが、主演俳優としてこのセリフを初めて口にし、ハリウッドきってのプレミアリーグファンであるシルベスター・スタローンは、この言葉の体現者として最もふさわしい人物がハリー・マグワイアであることに同意するだろう。

2019年8月にレスター・シティからマンチェスター・ユナイテッドに移籍したマグワイアは、記録的な高額で移籍したことで、多くの批判を浴びた。たいていの選手であれば、延々と続くような挫折や辛辣な言葉に耐えられず、あるいは少なくとも、最高レベルのサッカーの激しさやプレッシャーには向いていないと諦めていたことだろう。

だが、マグワイアにそのような選択肢はなかった。あらゆる逆境にも負けずに前進し続け、最も苦しい時期を乗り越え、真の勝者として最終的に勝者になったのだ。マグワイアは批判の声を黙らせ、ルベン・アモリム監督の下でエキサイティングな革命の主役を演じている。長い道のりだったが、マンチェスター・Uの空前絶後の8,000万ポンド(約153億円)の選手は、ついにその価値に見合う活躍を見せている。

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    威厳があって挑戦的

    マグワイアがマンチェスター・Uに来てからの最初の3シーズンは完全な失敗とうわけではなかったが、当時のオーレ・グンナー・スールシャール監督が期待していたような変革をもたらすような選手にはまったくなれなかった。このノルウェー出身監督の在任中、赤い悪魔は5年間タイトルから遠ざかり、2021年11月に解任された際にはプレミアリーグで7位に低迷していた。

    スールシャールの後任ラルフ・ラングニックの下で状況はさらに悪化し、マグワイアはチームの不振のスケープゴートとなった。2022年5月にエリック・テン・ハーグが就任した時点で、マグワイアはスタメンの中で最悪の弱点とみなされていた。オランダ出身監督は、かつてアヤックスでお気に入りだった選手のひとりであるリサンドロ・マルティネスを獲得し、すぐにマルティネスはセンターバックにおけるラファエル・ヴァランのパートナーとして真っ先に選ばれる選手となった。

    2022-23シーズン、マンチェスター・Uがカラバオ・カップを制し、プレミアリーグで3位となった中で、マグワイアは全公式戦でわずか16試合の出場にとどまった。出場機会が減った中でも威厳は保っていたものの、オールド・トラッフォードでの彼の将来について深刻な疑問が投げかけられた。ウェストハムが、これを格安の移籍金で彼を獲得する好機と捉え、テン・ハーグがマグワイアからキャプテンの地位を剥奪したことを認めたことで、移籍は不可避と思われた。

    しかし、マグワイアは決して戦わずには去ろうとはしなかった。「監督と話し合った後、監督はキャプテンを交代すると告げた」と、マグワイアはSNSに反抗的な投稿をした。「監督は理由を説明した。僕個人としては非常に失望しているが、これからもチームのユニフォームを着るたびに全力を尽くす」。

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  • Manchester United v FC Bayern München: Group A - UEFA Champions League 2023/24Getty Images Sport

    「キャリアで最も厳しかった時期」

    マグワイアが提案したウェストハムへの移籍は結局実現せず、彼は復帰後、約束通り、マンチェスター・Uのために血と汗と涙を流したマルティネスが深刻な負傷で離脱したこともあって徐々にポジションを取り戻し、キャプテンとしての重圧から解放されて生まれ変わったかのように見えた。

    奇跡的なFAカップ優勝はさておき、昨季のマンチェスター・Uは完全に崩壊しており、プレミアリーグでは過去最低の勝ち点を記録して屈辱的な8位という結果に終わった。しかし、マグワイアは、それでもなお自信を保つことができた数少ない選手のひとりだった。周囲の選手たちが自信を失っていく中、守備で素晴らしいパフォーマンスを披露し、特にアストン・ヴィラ戦での勝利では際立った活躍を見せた。

    しかし、マグワイアには残酷な運命が待ち受けていた。ふくらはぎに深刻な怪我を負って2023-24シーズンのマンチェスター・Uの最終数試合を欠場することとなり、その結果、ガレス・サウスゲートが率いていたイングランド代表チームのEURO2024のメンバーからも外れたのだ。マグワイアは『スカイスポーツ』で、その時の衝撃を「これまでのキャリアの中で最もつらかった時期」と表現したが、このことは彼の決意をより強固なものにしたのだった。

    31歳のマグワイアはマンチェスター・Uでの復活を誓い、「僕はこのクラブの未来の一部であり、今こそ、このクラブを奮起させて成功に導き、再び大きなタイトルを狙えるようにする時だ。それこそがこのクラブに必要なことだ」とも語った。

  • Manchester City FC v Manchester United FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    「真ん中が一番合う」

    マンチェスター・Uがチームとして新たな深みに陥っているにもかかわらず、不可解にもテン・ハーグは監督としての契約を更新され、さらに昨夏には移籍金として2億ポンド(約385億円)が準備されて、オランダ代表センターバックのマタイス・デ・リフトを含む5人が新加入した。 バイエルン・ミュンヘンから移籍してきたデ・リフトは、フリーエージェントとして退団したヴァランの直接的な後任であり、マグワイアは再びチーム内の序列が押し下げられることとなった。

    10月初旬に筋肉を痛めたことで、マグワイアの苦境はさらに深まった。これにより、全公式戦で9試合を欠場することになったのだ。1月の移籍の噂が浮上し、マンチェスター・Uは1,000万ポンド(約19億円)という低額のオファーでも受け入れる準備ができていると報じられた。しかし、これまで通り、彼は外部の雑音に一切耳を傾けなかった。

    12月にマグワイアが完全復帰した頃には、すべてが変わっていた。 テン・ハーグはマンチェスター・U史上最悪のスタートを切った監督としての自身の記録を更新した後、ついに解任され、後任には、カリスマ的戦術家ルベン・アモリムがスポルティングCPから招へいされた。

    アモリム監督は、マンチェスター・Uがエティハド・スタジアムでマンチェスター・シティとダービーを戦った際に、プレミアリーグで初めてマグワイアを先発出場させた。マグワイアはアーリング・ハーランドを封じ込めることに成功し、劇的な勝利を導いた。マグワイアは、ビッチ上でのすべてのデュエルに勝利し、タックル成功率で100%を記録。デ・リフトとマルティネスの間に完璧に溶け込み、5つのインターセプトを成功させてアモリム監督を喜ばせた。

    ポルトガル出身監督は、3-4-3システムがマンチェスター・Uで初めて成果をあげたのを見て、次のように語った。「3バックでプレーするマグワイアは完璧だ。彼には真ん中が一番合う」

  • Arsenal v Manchester United - Emirates FA Cup Third RoundGetty Images Sport

    縁の下の力持ち

    ダービーでの勇姿以来、マグワイアはアモリム監督のスタメンに定着。今月初旬にクラブがマグワイアの契約を1年延長するオプションを行使したため、もはやマグワイアの冬の移籍について語る者は誰もいない。マンチェスター・Uは再び脅威となりつつある。

    赤い悪魔は2024年をボーンマス、ウルブス、ニューカッスルに3連敗して締めくくり、トップ4入りの望みは事実上消滅したが、アモリム監督は就任後、「嵐」は避けられないと公言していた。39歳の監督は、サー・アレックス・ファーガソン以来となる、マンチェスター・Uのアイデンティティの確立を目指しているが、彼の構想が実を結ぶには時間がかかるだろう。特に、彼が理想とするフォーメーションに適さない選手が多数いるチームを引き継いだことを考えると、なおさらだ。

    しかし、1月5日にアンフィールドで行われたリーグ首位のリヴァプールとの試合(2-2)では、ピッチ上のすべてのエリアで進歩の兆しを見せたし、その驚くべき結果に続いて、FAカップ3回戦ではアーセナルを敗退させた。アモリム監督のチームは、1か月前にエミレーツ・スタジアムで喫したリーグ戦での敗戦のリベンジを見事に果たしたのである。60分にディオゴ・ダロトの愚かなレッドカード退場により10人での戦いを強いられながらも、1-1のまま延長戦を戦い抜き、緊張の極みに達するPK戦を制したのだ。

    マンチェスター・Uの得点王、ブルーノ・フェルナンデスは称賛の的となったが、控えのGKアルタイ・バユンドゥルの活躍も見逃せない。バユンドゥルは、90分内でもマルティン・ウーデゴールのPKをセーブし、PK戦ではカイ・ハヴァーツのPKを再び阻止した。しかし、真のヒーローはマグワイアだった。彼は終始力強く勇敢で、他のどの選手よりも多くのクリアとブロックを行い、戦場の指揮官のようにチームメイトに戦術を指示した。

  • Arsenal v Manchester United - Emirates FA Cup Third RoundGetty Images Sport

    真のリーダー

    マグワイアの闘志が最も輝いたのは、この試合、最も物議を醸した場面において、ハヴァーツを止めようと足を伸ばしたシーンだった。リプレイ映像で、ハヴァーツがマグワイアとの接触を装い、主審のアンディ・マドリーを完全に欺いていたことが明らかになった。しかし、FAカップのこの試合ではVARが採用されていなかったため、主審のPK判定は覆らなかった。

    こうして不当にも、ウーデゴールに、アーセナルが試合を勝ち抜けるようにするチャンスが与えられた。もしこの選手がこのPKを確実に決めていれば、10人となったマンチェスター・Uに対して、アーセナルは残り20分を切っての2-1のリードを死守していたはずである。 マグワイアは激怒し、ガブリエウ・マガリャンイスを突き飛ばしてハヴァーツに立ち向かい、その後、大乱闘が起こる中、このドイツ代表選手を「卑劣なクズ野郎」と呼んだようである。

    そのような侮辱的な言葉を許すことはできないが、前段部分は紛れもなく真実であった。マグワイアの反応は主に不公平感から生じたものだが、マンチェスター・Uへの情熱と勝利への意志からでもあった。チームメイトたちは、その情熱を糧とした。現在キャプテンの腕章を巻いているのはフェルナンデスだが、激しい戦いの最中でチームの真のリーダーとしての存在感を示したのはマグワイアだった。

  • Maguire-AmorimGetty/GOAL

    これからが本番

    アーセナル戦での勝利の後、マグワイアは、2026年6月まで契約が延長されるという朗報をアモリム監督から聞いた時のことを打ち明けた。

    「ルベンは、僕に契約延長オプションがあることを知ったとき、それは当然のことだと言ったんだ」と、マグワイアは語った。「僕がこのクラブとそのプロジェクトの一員でありたいと望んでいることを、彼らは理解してくれている。このクラブは高い水準を要求するから、僕はここに残るために何かを見つけなければならなかった。そして、その何かを見つけたと感じている。精神的にも肉体的にも、僕は良い状態にある」。

    今の状態が続けば、マンチェスター・Uはプレミアリーグの後半で順位を上げ、5月にはさらなるトロフィーを獲得できる可能性が高い。ヨーロッパリーグもまだ可能性がある。過去の伝統的な4バックシステムでは、マグワイアの俊敏性と回復力の遅さが露呈していたが、デ・リフトとマルティネスがアモリム監督のシステムで彼をサポートする今、それはもはや問題ではない。

    今、マグワイアは得意分野に集中できるようになった。空中戦で優位に立ち、プレーを遮り、ディフェンスから抜け出して周囲にパスを散らす。マグワイアは再びマンチェスター・Uのスタメンに名を連ねており、3月にトーマス・トゥヘルがワールドカップ予選のアルバニア戦とラトビア戦で指揮官としてのスタートを切る際には、イングランド代表でも同じことが起こるのではないだろうか。

    マグワイアは32歳になるが、全盛期はまだこれからかもしれない。その過程で何度か痛手を負うことになるかもしれないが、マンチェスター・Uの元キャプテンはその度に立ち上がり、前進し続けるだろう。