Geovany Quenda (Chelsea).jpgGetty/GOAL

ジオバニー・クエンダとは何者?:チェルシー移籍決定的の17歳、クリスティアーノ・ロナウドに愛された逸材の成長

以前の『The Athletic』の報道では、マンチェスター・ユナイテッドがジオバニー・クエンダの獲得についてスポルティングCPと「広範囲にわたる話し合い」を行っており、冬の移籍期間中に合意に達する可能性が高いと伝えられていた。恩師ルベン・アモリムはこの17歳を高く評価しており、幹部陣も「自信」を持っていたという。

しかし、スポルティングCPの希望額6000万ユーロを前にマンチェスター・Uは躊躇。これによってすべてのクラブに扉が開かれた。そして迅速に動いたチェルシーは、マンチェスター・Uを抑えて4800万ユーロでクラブ間合意。来季はレンタルでスポルティングCPに貸し出すことに決まったことが伝えられている。

これはチェルシーにとって巨大な成功であることは間違いない。そして一方で、マンチェスター・Uにとっては取り返せないほどのダメージになるかもしれない。今回は『GOAL』は、熱狂が生まれるクエンダの周囲を取り上げていく。

  • すべての始まり

    2007年4月に西アフリカのギニアビサウで生まれ、幼少期にポルトガルへ移住したクエンダ。8歳の時にダマイネンセでサッカーを始めると、すぐにベンフィカのスカウトの目に留まった。名門で2年間を過ごしたが、13歳の時に居場所をなくしたことで、宿敵スポルティングCPへの移籍を決断。コロナ禍もあって我慢の時期も続いたが、2021-22シーズンにはU-15リーグ優勝に貢献、U-17チームにも昇格した。

    そして2023年8月、スポルティングCPと初のプロ契約を締結。その期待に応えるように、2023-24シーズンはU-23チーム33試合で20ゴールをマーク。そして、16歳でBチームでプレーした史上初の選手となった。アモリムも彼に感銘を受け、トップチーム2試合で起用。「複数のポジションでプレーできるし、多くの才能と大胆さを持っている」と語った。

    クエンダは代表レベルでも輝きを放ち、ピナタルU-17トーナメントのモロッコ戦では衝撃的なゴールを奪う。6選手をかわして叩き込んだこのゴールは一気に拡散され、一躍ポルトガル期待のスターになっている。

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  • 大ブレイク

    クエンダはその後、キプロスで開催された2024年のU17欧州選手権のポルトガル代表チームのメンバーに選出され、決勝進出に重要な役割を果たした。セレソンはイタリアに3-0で敗れたが、クエンダはUEFAの大会ベストイレブンに選出された。

    その後2024年のU-17EUROに臨むポルトガル代表に選ばれ、決勝進出に大きく貢献。大会ベストイレブンにも輝いた。そして、アモリムはプレシーズンキャンプにも招集。毎年恒例のファイブ・バイオリンズ・トロフィーでは、アトレティック・クルブ戦(3-0)で驚異的なパフォーマンスを披露している。指揮官は「巨大な才能があり、そして成熟していて、ベテランのように試合を理解している。まだまだ成長できるし、素晴らしい試合をしたよ」と絶賛した。

    そして2024-25シーズンの開幕を告げるスーパーカップ、ポルトとの大一番でもスタメン抜擢。60分には豪快なボレーシュートを叩き込んでみせた。スーパーカップ史上最年少得点記録を打ち立てると、アモリムやスタッフと抱き合って喜びを爆発させ、目には涙を浮かべている。

  • FBL-POR-CUP-SPORTING-PORTOAFP

    一気にポルトガル代表へ

    クエンダの勢いは止まらず、今季は全公式戦で44試合出場、10ゴールに絡んでいる。アモリムは「非常に完成度が高い」としつつも、「あまり多くを語りたくないが彼はまだ若く、慎重にアプローチしないと」とプレッシャーがかかることを避けていたが、周囲の声などまるで気にしていないかのように堂々としたプレーをし続けている。それは11月に恩師がマンチェスター・Uへ去った後も変わらない。

    そして昨年9月、ロベルト・マルティネス監督率いるポルトガル代表に初招集。U-17で衝撃的なゴールを叩き込んでからわずか1年で、スター選手たちと肩を並べる存在となった。指揮官は彼の招集について「素晴らしい個性とクオリティ、適応力を示してくれた。普通の17歳ではない。U-17EUROでも素晴らしかった。A代表でもプレーする準備ができているよ」と興奮気味に語っている。

    結局デビューはお預けになっていたが、3月のネーションズリーグ準々決勝に向けて再びメンバー入り。この2度目の招集は、実力を考慮すれば当然であり、間違いなくチームに勢いをもたらすはずだ。

  • FBL-POR-LIGA-SPORTING-PORTOAFP

    プレーの特徴

    主に右ウイングを主戦場とするクエンダだが、セカンドトップやウイングバックでもプレー可能。圧倒的なスピードで、ドリブル時にもそれが落ちない。また重心も低く、相手を弾き飛ばすこともできる。さらに、密集地帯でボールをさらしながら素早いパス交換でDFラインを突破する。ただのドリブラーではなく、インテリジェンス溢れるランとダイレクトなプレーを併せ持ち、自信に満ち溢れている。フィジカルも抜群だ。

    『A Bola』によると、昨夏には2週間の休暇を返上して追加トレーニングに参加し、それがブレイクのキッカケになったという。プロ意識も当然高い。この部分が足りずに消えていく逸材は後を絶たないが、クエンダは例外だろう。

  • U17 Portugal v U17 Germany - UEFA Under17 European Championship QualifierGetty Images Sport

    改善の余地あり

    一方で改善が求められるのは、ファイナルサードでのクオリティだ。ビルドアップへの関与などは素晴らしいが、ゴールやアシストの場面では物足りないことは事実である。またプレーの大部分が利き足の左足であり、右足をあまり使わないためプレーの予測もしやすいことも真価が必要だ。

    またこれまで攻撃的なポジションでプレーしていたこともあり、守備面も学ばなければならない。特に相手を追いかけて自陣へと戻る意識は身につける必要があるだろう。それでも、ゴンサロ・イナシオ、モルテン・ユルマンド、ダニエル・ブラガンサの3人がクエンダに守備面のアドバイスを日々行っている模様。素晴らしい環境で学び続けているようだ。

  • Rafael Leao MilanGetty Images

    次は...ラファエル・レアオ?

    『A Bola』によると、クエンダがダマイネンセで初めての試合にジーンズ姿で出場した後、コーチの一人が父親に「クリスティアーノ・ロナウドのような将来がある」と語ったという。まだ現れたばかりの17歳と、生けるレジェンドを比較するのはやり過ぎ去ろう。プレースタイルも大きく異なる(本人は以前にマーカス・エドワーズを参考にしているとも話している)。

    そんな彼が最も近いスター選手は、ラファエル・レオンだろう。足元の技術が高く、常にDFラインの背後を狙い、前線であればどのポジションでもプレー可能。守備面の課題なども近いものがある。レオンはクエンダのデビュー戦後にSNSで賛辞を送ったが、これは17歳の逸材に自身の姿を重ねているからだろう。同じスポルティングCP出身の選手として、レオンと同じようなステップを踏んでいく必要がありそうだ。

  • Geovany Quenda Cristiano Ronaldo Portugal 2024Getty/GOAL

    次世代を担う存在へ

    3月の代表戦でデビューを果たせば、クエンダはポルトガル代表史上最年少選手としてパウロ・フットレの記録を更新する。主将C・ロナウドは9月、「17歳の彼は僕に近づいてきて『試合の疲れは取れた?』と聞いてきたよ。恥ずかしそうにね。僕は父親とは言わないが、良い兄貴分になりたい。僕も同じような経験をしてきたからね。代表チームは家族のようなものだ」とサポートを誓っている。

    またもう1人の重鎮、ベルナルド・シウバも「特別扱いしたくないけど、クエンダのクオリティと才能は理解しているよ。ピッチ上で僕と同じ役割ができるはずだ。ポジションを奪われちゃうだろうね! 僕が17歳の時、彼のように活躍できなかった。今ここいるのは、それだけの価値があるからだよ」と期待を込めている。

    ベルナルド・シウバは冗談交じりに話したが、本人も将来的に自分のポジションを奪ってくれることを期待しているだろう。同じような名声を得てもおかしくない才能だ。伝えられるように2026年にチェルシーに合流する時には、19歳にしてチャンピオンズリーグや代表チームでの経験を積んだ選手になっている。当然、主力を担うに違いない。

    この才能溢れる若き逸材は、おそらく2026年ワールドカップで世界中を驚かせるはずだ。そしてロンドンに降り立った時、プレミアリーグに旋風を巻き起こしてくれるだろう。