(C)GOAL【現地コラム】「緊張すると思います」堂安律がついにたどり着いたCLの舞台でいかに戦ったか?
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Getty Images Sportフランクフルトの中心選手として大舞台へ
欧州に渡って8年。堂安律がついに“世界最高峰”の舞台にたどり着いた。
「ヨーロッパに来た1番の理由は、この舞台に立つこと」。
オランダのフローニンゲンに加入した頃は、チャンピオンズリーグはまだ遠い夢だった。それでも、一歩ずつ階段を登るように距離を縮めてきた。何度も壁にぶつかり、そのたびに歩みを止めることなく前へ進み続けてきた。
そして今、フランクフルトの中心選手として、彼はその夢の舞台に立っている。世界最高レベルの戦いの中で、自分がどこまで届くのか――、その答えを探している。
近年、堂安は日々評価を高めてきた。昨シーズンまで在籍したフライブルクでは、チームのキーマンとして攻守に存在感を放った。ボールを持った時の巧みな仕掛けとゴールに向かうアグレッシブな姿勢。そして、絶え間ないハードワークと球際への激しさでスタジアムを沸かせた。
数字的な面でもキャリアハイとなる10得点を記録。ブンデスリーガを代表するアタッカーへと成長を遂げたことを考えれば、今夏のステップアップは必然だった。
(C)Getty Imagesまだ完全な姿ではない
迎えた今シーズン、攻守の切り替えが激しいフランクフルトで、堂安は新加入ながらすでに中盤の要の一人となっている。攻撃を仕掛ける起点であり、守備でも前線からプレスをかける。チームが苦しい時間帯ほど、彼はボールを受けに走る。その姿勢が、チーム全体を動かしている。
加入してまもなく、DfBポカール1回戦でさっそく2ゴールを奪うと、ブンデスリーガ第2節のホッフェンハイム戦では見事なミドルシュートによるゴールを含む2G1Aの活躍を見せた。チームを指揮するディノ・トップメラー監督も「彼のサッカー的なクオリティはよく理解している。特に引いて守る相手に対しては有効だ。誰の目にも彼が我々にとって刺激を与える存在であることが分かったはずだ」と称賛。堂安は素晴らしいスタートを切ることに成功した。
もちろん、フライブルク時代に比べ、まだ完全にフィットしているわけではない。堂安自身も、そこは認めている。
「やはり 3年かけて培ってきたものがある中でプレーするのはやりやすかった。感覚的に『律に預けよう』とする信頼もありました。まだ(フランクフルトに)来て2か月で、その感覚はもちろんないですし、11人のうちの1人にまだなってしまっているところはある」
それでも、新たなチームで試行錯誤を繰り返しながら、試合をこなすごとに着実に存在感を増してきている。少しずつ、チームの中心へと立ち位置を確立し始めているのだ。
このまま“世界最高峰の舞台”であるチャンピオンズリーグでも活躍へ。そう誰もが期待していたが、現実は簡単ではなかった。
(C)Getty ImagesCLを経てさらなる成長へ
初のチャンピオンズリーグ出場を控え、堂安は「新しい舞台なので緊張するとは思います」と意外な言葉を口にしていた。これまで多くの経験を積んできた彼でも、未知の舞台には特別な緊張があるという証拠だろう。
実際、試合を見れば、普段のリーグ戦とは明らかに空気が違った。サポーターが作り出す熱気、試合にかける執念、そして異なる文化を背負ったチーム同士のぶつかりあい。ここで普段と同じように通りに戦えというのは無理難題を押し付けているようなもの。すべてを懸けて挑まなければ勝ち上がれない舞台だ。
開幕戦となったガラタサライでは攻守に存在感を示した。ビハインドの中で見事なボール奪取から相手のオウンゴールを誘うシュートを放ち、得点に関与。逆転勝利に貢献するパフォーマンスを披露した。
しかし、第2節のアトレティコ・マドリー戦、第3節のリヴァプール戦は世界との差を実感させられた。一段レベルの上がった相手に対し、どちらの試合もチームとして機能不全に陥っていたことは間違いない。組織的にも、個の力でも相手に上回られた。結果として、守備に回る時間が長くなり、攻撃にかける余力を奪われた。
堂安も数少ない脅威として存在したが、一人で何かを起こすことができたかと言えばそうではない。孤軍奮闘していたが、苦しい状況を打開するまでには至らなかった。
不完全燃焼の内容だったことは間違いない。それでも、この経験が彼をどう変えていくのか。そこに注目が集まる。
チャンピオンズリーグで戦うことは、誰しもが経験できるものではない。世界最高レベルの戦いに身を置くことで見えてきたもの、感じたものをどう自分のプレーに還元していくか。この一つひとつの戦いを糧にできるかどうかが、次の成長を決める。
世界最高峰の舞台を経験して、堂安は何を感じたのか。その答えを言葉にするのは、まだ早いのかもしれない。
ただ確かなのは、堂安がまた新たな一歩を踏み出しているということ。その先にある景色を、彼はもう見据えているはずだ。




