Darwin Nunez Liverpool 2022-23Getty Images

“143億円の男”ダルウィン・ヌニェスのリヴァプール1年目をどう評価すべきか?

ダルウィン・ヌニェスのリヴァプールでの最初のシーズンをどう表現したらいいのだろう。多くの第三者は手厳しいだろうが、おそらく「どちらともない」という評価が適切だ。

確かに、このウルグアイ人選手はマージーサイドで活躍する場面があった。マンチェスター・シティ、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッド、ニューカッスル、ナポリ、レアル・マドリーとの対戦を含め、全公式戦で15ゴールを挙げ、間違いなく有望株であることを示した。毎週、彼の名前を歌い上げ、成功を願うレッズファンの愛と支持を得るには十分な結果を残したと言える。

しかし、彼がこれから成功するかどうかは、また別の問題である。新しい国の新しいクラブで、たった11か月でこの23歳を、いや、どんな選手でも、見捨てるのは愚かなことだが、リヴァプールの選手としての審査はまだ非常に厳しいと言わざるをえない。

  • Darwin Nunez Ederson Manchester City 2022-23Getty Images

    数多くの欠点

    昨夏、リヴァプールがヌニェスをアンフィールドに呼び寄せたとき、サポーターの間には大きな興奮が走ったが、それもそのはず。ベンフィカでは、チャンピオンズリーグ準々決勝の2試合で得点を挙げ、アンフィールドでは、クロップが「惚れ込む」ほどの素晴らしいパフォーマンスを見せ、スポーツディレクターのジュリアン・ウォードに、この夏のクラブのトップターゲットにするように促した。

    リヴァプールは、ヌニェスを獲得するために6400万ポンド(約108億円)の移籍金を支払ったが、すべての成績に関連する追加報酬が満たされれば、8500万ポンド(約143億円)に跳ね上がる。そうなれば、ヌニェスはリヴァプールの歴史上最も高価な選手となる。

    残酷なことを言うつもりはないが、今のところその額に見合うようには見えない。確かにポテンシャルはあるが、技術的、身体的、あるいはゲーム理解の面で、克服すべき欠点は数多い。

    今のところ、チャンスを逃すことが多すぎる。土曜日のブレントフォード戦では、本人も監督も苦笑いを浮かべるほど大きなチャンスを潰してしまった。アグレッシブさは確かにあるが、プレミアリーグやチャンピオンズリーグのトップレベルのセンターフォワードになるには、もっと整理する必要がある。

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  • Klopp-Darwin Liverpool 2022-23Getty Images

    クロップの警告

    直近9試合のうち6試合でヌニェスがベンチスタートとなり、それからリヴァプールが結果を出し始めていることが状況を物語っている。

    クロップ監督は、先月のノッティンガム・フォレスト戦の前に、「このチームへの切符はカウンタープレスでなければならないし、また間違いなくそうなるだろう」と語っていた。これは、ディオゴ・ジョタやカーティス・ジョーンズなど、サイドで好調を維持している選手への支持であると同時に、ヌニェスのような選手への警告であるとも読める。

    クロップ監督は、ヌニェスが先発出場したフラム戦の後、「競走馬のようだ」と評した。このストライカーは、ディフェンダーを追い詰めるのに熱心すぎ、早すぎたのだという。その結果、リヴァプールは、今シーズンしばしばそうであったように、あまりにもオープンで、あまりにも簡単にプレーされることになった。

    カウンタープレスの王者ロベルト・フィルミーノがアンフィールドでのキャリア最後の週を迎えている今、リヴァプールには、このブラジル人の後を継いで、前線からリードする9番となれる選手が必要だ。クロップのストライカーとでも言うべき存在だ。

    今のところ、ヌニェスよりも、ジョタとPSVから1月に加入したコーディ・ガクポの方が、その役割に適しているように見える。

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    言葉の壁

    先日のトッテナム戦(4-3)で、ヌニェスが交代でピッチに入ろうとしたとき、ケガで欠場していたチアゴ・アルカンタラがベンチ裏からヌニェスに声をかける場面があった。

    そのときのクロップの反応、困惑の表情はSNSで広く共有され、ヌニェスに対するもうひとつの懸念、つまり、「英語をうまく話せない、理解できないこと」を物語っていた。

    その点については、クロップは先月、「我々は大いに取り組んでいる」と認めている。ヌニェスは特別なレッスンを受けているようだが、言葉の壁を乗り越えるという点では、例えばルイス・ディアスには遠く及ばないというのが正直なところだ。

    もちろん、英語を話すだけですべてが変わるわけではなく、リヴァプールのドレッシングルームにはスペイン語を話す選手が多くいる。しかし、クロップは今シーズン、明らかに自分の言いたいことを伝えるのに苦労していた。「英語を学ぶことは、彼の大きな助けになる」と語っていた通り、7月のプレシーズンまでに、クロップはこの面での大きな進歩を期待するだろう。

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    不振のチームの犠牲者に

    無視できないことは、今シーズンの活躍の場として最高の環境には恵まれていなかったということだ。もし彼が前年の夏、あるいはディアスのように1月に到着していたなら、完璧に調整され、やり方が完全に明確な、勝利のチームに加わっていただろう。サディオ・マネやモハメド・サラーがそばにいれば、最初から輝きを放っていた可能性は十分にある。

    しかし、今シーズンのリヴァプールは、昨シーズンのチームではない。マネがいなくなったのは確かだが、チーム全体の構造が変わってしまった。

    ヌニェスは、間違ったチームにいるようにさえ見える。背後を突く能力は、契約した大きな理由の1つだったが、レッズはシーズンの大半で、それを生かすようなプレーをすることができなかった。プレスの崩壊、中盤の走力不足、負傷者の続出、主力選手がいつもの高いレベルを維持するのに苦労したため、クロップ監督は基本に立ち返り、チームの形を取り戻すべく、形やプレス、ポジショニングに集中するようになった。

    最近になって、トレント・アレクサンダー=アーノルドがサイドバックと中盤を兼任するようになり、リヴァプールの次の進化の兆しが見えてきたようだ。そして、イングランド人選手の背後へのキラーパスへの眼差しを考えると、それは誰よりもヌニェスにとって良いニュースかもしれない。

  • Mo Salah Liverpool Brentford 2022-23Getty Images

    健全な競争

    リヴァプールにとって良いニュースは、ある意味、すべての卵が同じバスケットに入っていないことだ。ヌニェスがアンフィールドでスターになることを望んでいるのは明らかだし、彼に支払われた資金を考えれば、彼が向上することを期待するだろうが、代替のオプションがないわけでもない。

    ガクポは1月に加入して以来、シルキーなタッチ、深い位置からのパワフルな走り、そしてボールの有無にかかわらず明白なゲームインテリジェンスを兼ね備え、非常に印象的だった。クロップ監督は「本当に賢い子だ」と語っており、高く評価している。

    ジョタもまた、ここ数週間で調子を取り戻し、1年間無得点が続いたが、直近6試合の出場で5得点を記録。このポルトガル人選手は、技術的に最も優れているとは言えないが、クロップ監督は彼の仕事ぶりとペナルティーエリア周辺での直感を気に入っている。プレシーズンをフルに活用すれば、ジョタに良いことがあるかもしれない。

    もちろん、サラーも好調を維持しており、右サイドは不動。ディアスが膝を痛める前のようなフォームを取り戻せれば、逆サイドをいじることも難しくなる。このコロンビア人は、心強いことに復帰後、かなりシャープに見える。

    重要なのは、クロップ監督が5人の攻撃的オプションの中で、ポジション争いと柔軟性を持っていることである。全員がワイドでもミドルでもプレーでき、その際に異なる特性を発揮する。中央のコネクターが必要なら ガクポを起用する。1対1でサイドバックを孤立させる選手が必要ならディアスが適任だ。高いディフェンスラインと対戦する場合ならば、ヌニェスの出番だ。そして、どんな選手で始めてもうまくいかない場合は、状況を変えるために、ベンチから少なくとも2つの優れた選択肢を用意しておく必要がある。

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    ベンフィカからの教訓と長期プロジェクト

    サラー、マネ、フィルミーノ、ジョタ、ディアス、ロベルト・レヴァンドフスキ、ピエール=エメリク・オーバメヤン、マルコ・ロイスなど、アタッカーを育ててきたクロップの実績を考えれば、ヌニェスへの心配はさほどない。「長期的なプロジェクトの選手」と話しており、まだ23歳ということを考えると、リヴァプールが彼の才能を生かすには十分な時間がある。

    そして、彼の適性を心配する人々は、ベンフィカで過ごした時間から励ましを得ることができるかもしれない、ベンフィカでは、1年目にリーグ戦で6ゴールしか挙げられなかったが、翌年には28試合で26ゴールと爆発的な活躍を見せた。

    今シーズンのリヴァプールでの数字を見れば、その可能性は十分にあると言わざるを得ない。ヌニェスの90分あたりの平均シュート数(4.35)は、プレミアリーグのどの選手よりも多く、90分あたりのゴール期待値(xG)は、リーグで5番目に高い数字である。

    そして、この印象的な数字をより具体的なものに変えていくときが来た。彼とリヴァプールには、まだやるべきことがたくさんある。