文=片野道郎(イタリア在住ジャーナリスト)
GOAL【徹底予想】リヴァプール、バルセロナ、レアル・マドリーは順当?王者PSGは苦戦必至?鬼門は“最北端”&“最東端”?チャンピオンズリーグ・リーグフェーズ突破8クラブを分析
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(C)Getty images「リーグフェーズ」方式の効果
9月第2週に開幕するUEFAチャンピオンズリーグ。その前半戦となる「リーグフェーズ」の抽選会が8月28日に行なわれ、参加36チームの対戦カードが確定した。9月第2週の開幕節に組まれたバイエルン・ミュンヘン対チェルシー、続く第2節のバルセロナ対パリ・サンジェルマン(PSG)を筆頭に、優勝を狙うメガクラブ同士の直接対決が毎節のように目白押し。1月までの全8節を通して、試合を重ねるごとに順位表が目まぐるしく入れ替わるスリリングな展開になること間違いなしだ。
昨シーズンから導入された新フォーマットによるこの「リーグフェーズ」は、「スイス方式」と呼ばれるルールに従って対戦カードが組み立てられている。これは、参加36チームをUEFAクラブランキングに基づいて9チーム×4ポットにシード分けし、各チームが1ポットあたり2チームと満遍なく対戦(ホーム、アウェー各1試合ずつ)する仕組みだ。こうして全8節を戦った各チームは、その総勝ち点によって1位から36位までひとつの順位表の中に位置づけられ、そのうち上位8チームが直接ベスト16に進出、9位から24位までの16チームはホーム&アウェーのプレーオフを戦い、勝った8チームがベスト16に加わることになる。
旧フォーマット時代の「グループステージ」(4チーム×8グループのホーム&アウェー)と比べると、シーズン前半から強豪同士のビッグマッチが数多く見られるだけでなく、グループによる勝ち上がり難易度の偏りが平準化される、順位争いがより激しくなる、いわゆる「消化試合」がなくなるなど、より「予定調和」が少なくサプライズに富んだフォーマットだと言うことができる。
実際、昨シーズンのリーグフェーズは期待以上にスリリングな展開だった。「スイス方式」によるマッチメークによって、8試合トータルの難易度は平準化されたものの、全8節のどこに難易度の高いビッグマッチが来るかはチームによって異なるため、順位表は毎節大きく変動して、ほとんどのチームが激しい浮き沈みを経験することになった。
リヴァプールやバルセロナが順調に勝ち点を積み重ねて早々とトップ8入りを決める一方で、マンチェスター・シティやPSGは取りこぼしが続いて苦戦を強いられ、1月の最終節を迎えた時点でもなお、プレーオフ圏外(25位以下)で敗退を強いられる可能性を残していたのだ。そして最終的には、リーグフェーズでそれだけの苦戦を強いられたPSGが、ノックアウトフェーズで圧倒的な強さを発揮して優勝を飾ったのは周知の通りだ。
Getty Images突破に必要な「成績」を分析
昨シーズンのこうした展開を見る限り、このリーグフェーズの順位予想は簡単ではない。とはいえ、いくつかの指標を挙げることはできる。
まず勝ち点に関して言えば、昨シーズンのトップ8は勝ち点16、プレーオフ圏内(24位以内)は勝ち点12が通過ラインだった。8試合でこの数字に到達するためには、少なくとも5勝(トップ8)、3勝(プレーオフ)が必要であり、また負け数は2敗以内(トップ8)、3敗以内(プレーオフ)に抑える必要がある。さらに、勝ち点で並んだ際には得失点差で順位が決まるため、これを意識して戦うことも重要だ。
机上の計算に過ぎないことを承知で言うと、トップ8に入るためには、ポット3~ポット4との4試合に全勝した上で、ポット1~ポット2との4試合で少なくとも1勝、さらに負けを2試合までに抑える必要がある。これがかなり高いハードルであることは、各チームの対戦カードを見れば一目瞭然だろう。
勝ち点1の差はもちろん、得失点差すらも順位、さらにはトップ8やプレーオフ入りの成否を分けるということになると、対戦相手の難易度の違いは、たとえそれが小さな差であっても順位に大きく響いてくる可能性がある。その点で影響が出そうなのは、同じポットの中でもチームによる実力差が比較的大きいポット3とポット4の対戦相手だろう。
AFP注目の「最北端」&「最東端」
例えばポット3ではトッテナムとナポリ、ポット4ではニューカッスルとアトレティック・クルブが、他と比べればかなりの難敵に見える。同じポット1の強豪でも、この4チームのうち3チームと対戦するPSG、2チームと対戦するドルトムントは、まったく当たらないリヴァプール、インテル、レアル・マドリー、バイエルンと比べると、ややハンディキャップを背負っていると言える。
同じ理由で、ポット3、ポット4のチーム相手の取りこぼしも、順位を大きく左右する要因になりそうだ。その観点から見て要注意なのが、ポット3のボデ/グリムト、ポット4のカイラト・アルマトイという初出場の2チーム。Jリーグで活躍するマリウス・ホイブラーテン(浦和レッズ)、キャスパー・ユンカー(名古屋グランパス)が在籍していたことでも知られるボデは、ノルウェー北部、北極圏に位置する人口約5万人の小都市のクラブ。CLはこれが初出場だが、2020-21シーズンにはカンファレンスリーグでベスト8、昨シーズンはヨーロッパリーグでベスト4まで勝ち進んでいる注目株だ。
対戦相手にとって最も厄介なのは、アウェーゲームで直面する北極圏の厳しい気候。試合が行われる夜の気温が11月ですでに0度前後まで下がる上、ピッチは人工芝、しかもしばしば強風が吹くコンディションで、これまでの欧州カップ戦でも多くの格上チームが苦戦を強いられてきた。冬季のアウェー戦では、どんな強豪も勝ち点3を計算することは難しい。11月25日の第5節に戦うポット2のユヴェントス、1月20日の第7節に戦うポット1のマンチェスター・シティは、かなり苦しむことになるだろう。
ボデが参加チーム中最北端なら、最東端のアルマトイ(カザフスタン)に本拠を置くのがカイラト。これが欧州カップ戦本大会初出場、UEFAクラブランキング400位台という弱小チームだが、今シーズンは予選を1回戦から勝ち上がり、プレーオフではセルティックを2試合とも0-0に抑えた上にPK戦を制し、奇跡的な本戦進出を果たしている。
こちらも机上ではどこと当たっても勝ち目がないように見えるが、西ヨーロッパから片道8時間という移動距離の長さ、11月以降の夜は氷点下(1月は-10℃)という平均気温がもたらすアウェー戦の厳しいコンディションは、この時期に対戦する相手にとって鬼門と言うしかない。ポット1のレアル・マドリーは9月30日(第2節)と気候的なハンデが少ない日程を引いたが、ポット2のクルブ・ブルッヘは1月20日(第7節)という厳しいタイミング。簡単な試合にはならないだろう。
gettyトップ8を予想!
昨シーズンのリーグフェーズは、予想以上に番狂わせが多いスリリングな展開となり、ベスト16に直接勝ち上がれるトップ8に入ったのは、ポット1の9チーム中3チームのみで、ポット2からも3チーム、そしてポット3と4からそれぞれ1チームという構成だった。今シーズンもおそらく、多かれ少なかれこのような形でばらけることが想定される。その前提で今シーズンのトップ8に入りそうなチームを予想してみよう。
各国リーグが開幕して間もない、しかもまだ移籍マーケットがクローズしてもいない現時点で、各チームの今シーズンの実力を判断することは不可能だ。それゆえ、UEFAランキングや『Opta』のパワーランキングを参照しつつ、対戦難易度に焦点を当てて予想を進めることにしたい。
まずポット1の9チームの中では、ポット2~4までの対戦相手に難敵が少ないチームが相対的に有利と言えそうだ。そう考えると、ニューカッスル(ポット4)を除けば楽な相手を引いたバルセロナ、アトレティコ・マドリー(ポット2)以外は比較的戦いやすい相手が揃うリヴァプール、ポット3以下に難敵がいないレアル・マドリーあたりは、勝ち点を稼ぎやすそうに見える。
一方でポット1~2には難敵が少ないものの、ポット3でナポリ、そして真冬のボデでのアウェー戦を引いたマンチェスター・シティ、ポット1~ポット4まで満遍なくやりにくい相手が揃い、勝ち点3が計算できる相手がいないPSGは、昨シーズンに引き続き難しいリーグフェーズを送りそうな匂いがする。
また、ポット2の9チーム中で躍進が期待できそうなのは、実力的にポット1勢と遜色のないアーセナル、ポット3~4に難敵がいないアトレティコあたりか。さらに、ポット3では対戦相手の総合的な難易度が最も低い部類に入るトッテナム、そしてマンチェスター・シティ、ユヴェントスから地の利を活かして勝ち点を奪いそうなボデが、思わぬ躍進を見せるかもしれない。ポット4ではニューカッスルが、昨シーズンのアストン・ヴィラを思わせる存在になりそうだ。
Getty Images Sportトップ16全予想は…
これらを総合的に勘案して、筆者が独断で選んだトップ8候補、そしてそれに続く8チームは以下のような顔ぶれになる。こればかりは当たるも八卦、当たらぬも八卦、である。
<トップ8>
リヴァプール
バルセロナ
レアル・マドリー
バイエルン・ミュンヘン
アーセナル
アトレティコ・マドリー
ベンフィカ
トッテナム
<9-16位グループ>
インテル
チェルシー
パリ・サンジェルマン
マンチェスター・シティ
ナポリ
ユヴェントス
ボデ/グリムト
ニューカッスル
