2025-26シーズンのチャンピオンズリーグ・リーグフェーズの組み合わせと日程が確定した。いよいよ16日(日本時間17日未明)から、欧州最高峰のトロフィー“ビッグイヤー”をかけた戦いがスタートする。そんなリーグフェーズのスタートを前に、『GOAL』は読者を対象に「優勝予想アンケート」を実施。その投票結果について人気解説者・林陵平氏が様々な側面から分析する。
インタビュアー=河又シュート(GOAL編集部)
※インタビュー実施日:9月1日
(C)Shoko Kitayama2025-26シーズンのチャンピオンズリーグ・リーグフェーズの組み合わせと日程が確定した。いよいよ16日(日本時間17日未明)から、欧州最高峰のトロフィー“ビッグイヤー”をかけた戦いがスタートする。そんなリーグフェーズのスタートを前に、『GOAL』は読者を対象に「優勝予想アンケート」を実施。その投票結果について人気解説者・林陵平氏が様々な側面から分析する。
インタビュアー=河又シュート(GOAL編集部)
※インタビュー実施日:9月1日
(C)Getty images◎特徴:毎年選手が大きく入れ替わるメリットとデメリット
スカッドが豊富な分、ケガ人が出たとしてもそこに同じレベルの選手が入れる。それは大きなメリットです。一方でデメリットとしては、チームとしての最適解をどのタイミングで見つけるのかが難しくなる。試合に出られていない選手をうまく扱えないと、雰囲気も悪くなりますしね。ただその部分に関しては、エンツォ・マレスカ監督がバランスよくモチベーションを保ちながら戦えていると思います。
◎キーマン:マルク・ククレジャ
サイドバックの位置から戦術的に色々な変化を加えられる選手です。(攻撃時)3バックになった時に彼が左ウイングバックになるのか、[3-2-5]の2ボランチになるのか、[3-1-5-1]のシャドーになるのか。前線の選手のキャラクターが変わったとしても、ククレジャがいることで変化が加えやすくなる。彼がいるかいないかで、まったく違うチームになります。
モイセス・カイセドも注目ですけど、1人挙げるとすれば、あのモサモサ頭のククレジャじゃないでしょうか(笑)。
◎1シーズン戦う上で必要なこと
コンディション調整が大事になります。クラブワールドカップで優勝はしたけれど、その分休みは多く取れなかった。勤続疲労がシーズン終盤に出てくる可能性はあるので、マレスカ監督の手腕が問われます。そういう意味で、多くの選手がいることはメリットです。
(C)Getty images◎昨季の印象
素晴らしいシーズンでした。ハンジ・フリック監督就任1年目でしたが、攻守に自分たちがやりたいことを整理した中で、あのハイプレス・ハイライン。あれはなかなか見られるものではないです。シーズンを通して自分たちのスタイルを信じ抜いて戦って、ラフィーニャやラミン・ヤマル、ペドリ含めて個のクオリティも見せてくれました。
◎夏の移籍市場の評価
マーカス・ラッシュフォードやジョアン・ガルシアを獲得しましたが、イニゴ・マルティネスが抜けた穴は大きい。その部分と選手登録の問題が少し心配です。
イニゴ・マルティネスはラインコントロールをうまく設定していました。今は代わりにロナルド・アラウホが先発していますが、対人能力は高いのですが、どちらかと言えば「人に強い」タイプです。「最終ラインをまとめる・コントロールする」という部分では、イニゴ・マルティネスのほうが特徴が出ますね。
戦術的な部分で基本は昨季と変わらない。ラインを高く設定して、選手の立ち位置の部分も変わっていない。ベースは変わらない中で「+αをどう見せるのか」という部分で、今後何を見せてくれるのかが楽しみです。
◎キーマン:ペドリ
彼ほど「優雅な選手」「見ていて面白い選手」はいない。ぜひ今のうちに見ていてほしいと思います。フレンキー・デ・ヨングとの2ボランチの関係性もすごく良いです。今年は難しいかもしれませんが、バロンドールを受賞してもおかしくないレベルの選手です。今はどうしても(サッカー界全体が)「フィジカル重視」ななか、彼のように「相手をいなす」選手はそこまで多くない。希少価値も高い選手だと思います。
(C)Getty images◎今の印象
「補強し過ぎ!」というくらい本気を出しています、反則です(笑)。フロリアン・ヴィルツが来て、ウーゴ・エキティケが来て、エキティケがいるのにアレクサンデル・イサクも来た。「どう使うの?」という部分も含めて注目です。あとは僕個人としても大好きなアルネ・スロット監督。選手たちをうまくコントロールできる監督です。プレミアリーグとチャンピオンズリーグという強度の高い大会があり、そこにカップ戦もある。過密日程の中で多くの選手がいてくれると監督は助かると思いますし、彼ならうまくやれるはずです。
◎補強による変化とイサクの使い方
戦術のベースは変わらないと思います。スロット監督は選手のキャラクターによって微調整するのが上手です。今は左でコーディ・ガクポがプレーしていますが、イサクが真ん中でエキティケが左に入った時に違う変化が生まれるのでは。開幕数試合はドミニク・ソボスライが右SBに入っていますが、そのポジションにジェレミー・フリンポンやコナー・ブラッドリーが入ればまた違う形になる。一試合一試合変化していくのが面白いと思います。
イサクをいかにフィットさせるか……一番は「12人出す」ことじゃないですかね(笑)。そのくらいのスカッドです。基本的にはイサクが中央に入ると思うので、左はガクポ、リオ・エングモアも出てきましたけど、少し薄い。そのポジションにエキティケを置くのか、もしくはイサクを置いてエキティケを真ん中にするのか……うまく変化させてくると予想しています。
◎キーマン:ドミニク・ソボスライ
トップ下にヴィルツが来たのもあって今は右サイドバックですけど、大活躍している。彼をどこに置くかで戦い方は変わるはずです。
例えばヴィルツのフィットに少し時間がかかったとして、チャンピオンズリーグとかで強度を出したい時にソボスライをトップ下に置く、右サイドバックにフリンポンやブラッドリーを置く、これでも大きく変わるはずです。
もともと彼はトップ下や中盤の選手なので、右サイドバックでも攻撃はある程度できると思っていましたが、やはり守備の部分。サイドバックとしてのクロスに対する絞り方やマークの仕方って、中盤の選手にとっては簡単じゃない。でも、そこも簡単にこなしてしまう。アスリート能力だけじゃなく、戦術的なIQも高い。そして、チームのためにハードワークできる。全体のバランスが素晴らしいですよ。
◎遠藤航の存在
リードしている時に「ゲームを閉める」というタスクになると思います。それでも状況に応じてカップ戦だったりとか、人が足りない時には様々なポジションでマルチタスクをこなすこともできる。スロット監督にも信頼されていますよね。それを継続しながら「出た時に何をするか」ですね。
◎優勝のカギはやはり…
間違いなく優勝候補だと思います。あれだけの補強をしたのなら、優勝候補じゃないとダメだと思いますし、そのくらいのスカッドを揃えています。あとはケガ人ですね。試合が多くなればなるほど出てしまうのは仕方がない部分ではありますが、それを補えるチームにはなっていると思います。やはりスロット監督次第、ですね。
(C)Getty images◎新戦力による変化
戦い方は少し変わると思います。アーセナルはゼロトップ気味で中盤に絡む選手を起用してきましたが、ヴィクトル・ギェケレシュはよりゴールに特化した「9番タイプ」です。ビルドアップに絡むわけでもないし、ボールタッチも多いわけじゃない。なので「彼にいかにボールを届けるか」が重要になってくると思います。
これまでの数試合を見ると、間違いなく縦の速さは変化のポイントですね。後方から繋ぐだけではなく、ロングボール一発で前線の選手に届けていく形が多くなっています。もちろん、相手があってこそですし、引いた相手には後方からパスを繋いて前進していくチームだとは思いますが、使い分けが大切になってくると思います。
◎キーマン:ヴィクトル・ギェケレシュ
キーマンはやはり彼でしょう。彼がゴールを決められなかったら、周りからの見られ方も難しくなっていくと思いますし、彼がいかに点を取るかが上に行くために重要です。また。大型補強という意味では、マルティン・スビメンディも獲得しています。彼がシーズンを通してどれだけゲームをコントロールできるかも楽しみです。
◎アルテタ監督に求められること
ミケル・アルテタ監督はちょっと頑固なところもありますので、もう少し柔軟性を持つと良いのかなと思います。決まった選手を使うことが多く、あまり評価していない選手は切ってしまいがちな印象です。選手交代のタイミングも柔軟性がほしい。言うまでもなく素晴らしい監督ですが、やはりアーセナルはタイトルが必要なクラブです。アルテタ監督にとって「言い訳はできないシーズン」ですから。
もう1つ挙げるとすれば、エベレチ・エゼを獲得できたこともすごく大きい。彼は“レベチ”な選手です。「時を止める男」「時空を歪ませる男」ですから。“レベチ・エゼ”がどんなプレーを見せるか、アルテタがどう活かすかが本当に楽しみです。
(C)Getty images◎ドイツ、イタリア勢も…
サプライズ候補はフランクフルトです。堂安律選手も早速活躍していますが、[4-2-3-1]の2列目の選手がすごく良いんです。覚えていてほしいのは、トップ下のジャン・ウズン(トルコ代表/19歳)。左ウイングのジャン=マテオ・バホーヤ(U-21フランス代表/20歳)も良い。そして、最前線に入るのがすごく覚えやすい名前の「(エリー)ワイ」。フランスで少し結果が出ない時期もありましたが、フランクフルトでハマればすごく面白い選手です。
他には、ユヴェントスも楽しみです。ブレーメルが復帰して、最前線にはジョナサン・デイビッドもいる手堅いチームです。あとはニューカッスル。あの強度を出されるのはどんなチームも嫌ですよ。ポット4にニューカッスルがいるのを見ると、やっぱりチャンピオンズリーグはレベルが高いと思いますね。
また移動という意味では、カイラト(カザフスタン)やボデ/グリムト(ノルウェー)のホームに行くのはかなり大変です。こういったチームもリーグフェーズのカギを握るんじゃないかと予想しています。
(C)Goal◎読者投票結果の印象
ファン・サポーターの多い順ですよね、願望がこもっています(笑)。でも、それが大切だと思いますよ。あくまで予想ですからね。前回王者パリ・サンジェルマンがなぜか10位になっていますしね。僕の注目は全クラブです! バイエルン・ミュンヘンも、レアル・マドリーも、マンチェスター・シティも、もちろんPSGも。ここまで来るのはみんな力がありますから。
(C)Goalリーグフェーズは1節から楽しみな試合が多いですし、一試合も逃してほしくないですね。ノックアウトラウンドもできれば全試合観てほしい。ライブじゃなくても、時間がある時でいいんです。
また全試合観るのが難しいのであれば、推しの1チームを観続けるのもいいですね。たくさんの知識がつきますし、相手チームも観ることになりますから。1シーズン観ると変化がわかるようになります。推しと対戦するチームも頭に入れていくと、どんどん知識や見方も広がっていきますよ。