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【識者が選ぶ前半戦ベスト11:ブンデスリーガ編】覚醒したレフティ、金字塔打ち立てたストライカー、名人芸見せる“アイコン”まで!

あっという間に前半戦を折り返した2021-22シーズンの欧州サッカー界。各国リーグ戦も開幕から約半年で様々なドラマが巻き起こり、熱戦が続いている。

Goal』では、折り返しとなる2021年末にプレミアリーグ、セリエA、ブンデスリーガ、ラ・リーガの4大リーグの前半戦ベストイレブンを決定。各リーグに精通する識者の方に11人を選出してもらい、前半戦を振り返ってもらう。

第二弾はブンデスリーガ。ドイツサッカーに精通し、解説などを務めた経験もある遠藤孝輔氏が前半戦のベストイレブンを選出した。

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    GK:マルク・フレッケン(フライブルク)

    純粋なクオリティで選べば、今季もマヌエル・ノイアーがナンバー1だろう。ゴールを守るGKの本分のみならず、なにげないフィードやスロー、そして守→攻の切り替えの速さなど、あらゆる能力・要素が傑出している。バイエルンの守護神は、いまなお別格の存在だ。

    ただ、活躍の頻度や驚きという意味ではマルク・フレッケンが上を行く。加入4年目のフライブルクで正GKの座をつかんだ28歳は、適切なポジショニングと判断を活かした好守でクラブの3位躍進に貢献。ルーカス・フラデツキー(レヴァークーゼン)に次ぐリーグ2位の67セーブを記録している。ちなみに、ピンチの場面が少ないノイアーは39セーブに過ぎない。

    10月にはオランダ代表から初招集を受けた。その際、ルイ・ファン・ハール監督は「彼は本当に上手く足を扱う。エドウィン・ファン・デル・サールもそうだった。それは私にとって非常に重要だ」と絶賛。2022年は国際舞台で脚光を浴びる年になるかもしれない。

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    RSB:ベノ・シュミッツ(ケルン)

    突き抜けた存在が見当たらないのが右サイドバック。昨季ほど悪くないドルトムントのトマ・ムニエ、脚力自慢のジェフリー・フリンポン(レヴァークーゼン)など何人か候補を挙げられるが、残念ながらどんぐりの背比べという状況になっている。ケガから復帰した途端に悪質なタックルで出場停止のバンジャマン・パヴァール(バイエルン)は論外だろう。

    非ビッグクラブの選手にスポットライトを当てる意味で、今回はベノ・シュミッツ(ケルン)を称揚したい。美しい弧を描く右足のクロスでゴールを演出するなど、ここまで右SBとしては最多タイの4アシストを記録している。ゴール前のこぼれ球に泥臭く反応し、ダービー大勝(4-1)の口火を切る先制点をアシストしたボルシアMG戦での活躍も好材料だ。

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    CB:ダヨ・ウパメカノ(バイエルン)

    CBの一角には今季から王者に加わったダヨ・ウパメカノを選出した。簡単に通せそうなショートパスを連発しているのではなく、前線にズバッと通すフィードを織り交ぜながら、リーグ4位のパス成功率(91.4%)をマーク。新天地のバイエルンに難なくフィットし、ビルドアップの起点として高い機能性を示している。自陣からのロングパス一本で崩した、9節ホッフェンハイム戦でのアシストはファンならずとも必見だ。

    決して力任せではない対人守備、被カウンター時のスピード対応にも優れ、4バックと3バックの両システムにも柔軟に対応。CBながら4アシスト(1つは相手のクリアが尻に当たって、ゴール前の味方の元に転がったものだが)を決め、17節のヴォルフスブルク戦では嬉しい今季初ゴールを挙げた。バイエルンにとって、ライプツィヒに支払った移籍金4250万ユーロは安いものだろう。そう感じさせるのに十分なパフォーマンスを披露している。

  • SchlotterbeckGetty

    CB:ニコ・シュロッターベック(フライブルク)

    フライブルクがリーグ最少失点(16)の堅守を誇るのは、フレッケン同様にハイパフォーマンスを見せているCB陣の存在があればこそ。なかでもニコ・シュロッターベックの充実ぶりが際立つ。8月にハンジ・フリック率いるドイツ代表に初招集された22歳の新鋭だ。

    昨季ウニオン・ベルリンで研鑽を積んだレフティは、開幕から武者修行の成果を存分に見せつけている。ここまで全17試合に先発出場し、激しくもクリーンな対人守備や秀逸なシュートブロックを披露。191cm86kgという恵まれた体躯を持て余すことなく、リーグ4位のデュエル勝利数(199回)、同6位タイの空中戦勝利数(64回)などを記録している。

    現代のCBらしくビルドアップも上手い。蹴ってよし、運んでよしで、左利きという特性も魅力。元ドイツ代表のホルガー・バドシュトゥバーに通ずる部分が少なくない。

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    LSB:アルフォンソ・デイヴィス(バイエルン)

    リーグ2位のトップスピード(時速36.37km)を計測した快足サイドバックは、同1位のスプリント数(515回)も記録。4-2-3-1採用時はDFラインの左、戦術オプションの3バック使用時は左ウイングバックに入り、俊足とタフネスという持ち味を存分に発揮した。

    サイドを縦にえぐらせたら、このヤングタレントの右に出る者はいない。縦関係を築くウイングのお膳立て(スペースを空ける)を無駄にせず、ここぞというタイミングでタッチライン際を駆け上がる。時には正確なワンツーも駆使し、何度となく敵陣を切り裂いた。やはり俊足のリロイ・サネとともに、高速カウンターの担い手としても存在感は絶大だ。

  • Jude Bellingham Dortmund 2021-22Getty Images

    DMF:ジュード・ベリンガム(ドルトムント)

    フル稼働していれば、守備的MFはヨシュア・キミッヒ一択だった。バイエルンのビルドアップ、ボール回しを安定させていたこの26歳はしかし、ワクチン接種を渋っていたところで新型コロナウイルスに感染。12節以降を全休した。6試合欠場に伴う貢献度ダウンは否めない。

    代わりに選出したのは、ドルトムントの主軸に成長したジュード・ベリンガム。インサイドハーフに始まり、ダブルボランチの一角、2列目のサイドと、複数のポジションで様々なタスクを担うも、持ち前のダイナミズムを発揮しながら攻守に奮闘している。マルコ・ローゼ監督が求めるプレスに奔走する一方で、チーム最多の5アシストをマーク。イングランドが誇る18歳の至宝は、参戦2年目のブンデスリーガで順調な成長を見せている。

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    RMF:ムサ・ディアビ(レヴァークーゼン)

    カードが多く、前半戦だけで二度も出場停止を余儀なくされた。しかも、その2試合(10節ヴォルフスブルク戦と17節フライブルク戦)で敗れたように、レヴァークーゼンが被った痛手は大きかった。裏を返せば、この22歳がそれだけ重要な存在だったということだ。

    出し手と呼吸を合わせながらDFラインの裏を突く飛び出し、そして爆発的なスピードという武器はそのままに、フィニッシュのクオリティが向上(とくに利き足ではない右足)。アタッカーとしての怖さが増し、リーグ3位の40ゴールを挙げているレヴァークーゼン攻撃陣を牽引している。チーム状況に応じて、左右両サイドで機能していたのも好印象だ。

    ただ、チャンピオンズリーグ(CL)での働きも加味したら、マンチェスター・シティ戦の3得点を含む公式戦14得点と躍動したクリストファー・ヌクンク(RBライプツィヒ)を選んでいた。同じパリ・サンジェルマンの下部組織出身であり、9月にフランス代表デビューを飾ったディアビに続いて、“レ・ブルー”のユニフォームに袖を通す日は近そうだ。

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    OMF:トーマス・ミュラー(バイエルン)

    9月に32歳となったバイエルンのアイコンに衰えの兆候は見られない。攻撃で違いを作りながら、守備にも手を抜かない姿勢も相変わらず。開幕から積み上げてきたアシストは、前半戦ラストゲームで「13」(公式記録。大半のドイツメディアは「15」と集計)まで膨れ上がった。ちなみに、その17節ヴォルフスブルク戦でリーグ通算400試合出場の節目を迎えたほか、6節フュルト戦ではバイエルン歴代3位に浮上する公式戦218ゴール目を決めている。

    ボールタッチやキックの質などは、今回惜しくも選外としたドイツ代表の新鋭フロリアン・ヴィルツ(レヴァークーゼン)に見劣りする。だが、相手の急所となるスペースに飛び込んだり、DFの注意を引き寄せて周囲を活かしたり、ミュラーの頭脳的なチャンスメイクはいわば名人芸だ。バイエルンのユリアン・ナーゲルスマン監督は17節終了後、『ESPN』で「彼はとてつもなく賢い。ピッチ上の監督のようだ」と最大級の賛辞を送っている。

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    LMF:リロイ・サネ(バイエルン)

    特大の期待に応えられなかった昨シーズンとは別人だ。ナーゲルスマン新監督の指導が功を奏しているのだろう。ドリブル、パス、シュートの三拍子が揃うレフティはプレーの効率性をグッと高め、プレミア最優秀若手選手に選ばれた頃に匹敵する輝きを放っている。

    とりわけ印象に残るのはフリーキックを豪快に突き刺したほか、複数の得点を演出した5節ボーフム戦、ペナルティーエリア外から左足を一閃し、決勝点となる先制点を挙げた13節ビーレフェルト戦での活躍だ。17節のヴォルフスブルク戦でも鮮烈な一撃を沈めている。

    リーグで3番目に多いシュート(55本)を放ちながら、5ゴールという結果は物足りないように映る。ただ、オフ・ザ・ボールの動きが改善された結果のフィニッシュ増とも言えるだろう。チーム2位の5アシストを記録しているが、その一つ前の好プレーも多かった。

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    FW:ロベルト・レヴァンドフスキ(バイエルン)

    2020-21シーズンにリーグ史上最多41得点の金字塔を打ち立てたストライカーは、今季も開幕からゴールを量産。バロンドールを受賞したリオネル・メッシが「昨年なら君が受賞していた」と敬意を表していたが、その昨年より凄みを増している。強烈かつ正確な弾道を突き刺せば、逆足の後ろを通す華麗なヒール弾を決めるなどフィニッシュも多彩だ。

    かつてのメッシやクリスティアーノ・ロナウド同様、ゴールを決めないことがむしろニュース。6節のグロイター・フュルト戦で昨季からの連続得点記録が「15試合」で途切れたものの、8節のレヴァークーゼン戦から5戦連発と再び量産態勢に入る。ドルトムントとのデア・クラシカー(14節)でドッペルパックを決めるなど大一番での強さも健在で、あらゆる守備者を震え上がらせた。2021年のブンデスリーガで記録したのは史上最多の43得点だ。

    今季の19得点は断トツのトップで、得点王レースの「5連覇」に向けた視界は良好。このベスト11選考とは無関係ながら、9ゴールを挙げているCLでの王座奪還にも期待が高まる。

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    FW:パトリック・シック(レヴァークーゼン)

    ドルトムントの攻撃力を一段も二段も高めているアーリング・ハーランドを選外としたのは、負傷離脱に伴う実働時間の短さから。前半戦の3分の1以上(6試合)を棒に振った怪物FWではなく、リーグ2位の16ゴールを挙げているパトリック・シックに軍配を上げた。

    EURO2020最多の5ゴールを奪ったチェコのエースは、2節から4戦連発と波に乗ると、7節から3戦連発、14節から3戦連発の大暴れ。なかでも、たった27分間で4得点のフュルト戦を皮切りに、続くフランクフルト戦、ホッフェンハイム戦でドッペルパックをマークした1416節は神懸っていた。悔やまれるのは足首の負傷による3試合の欠場くらい。1得点に要した時間を計算すると、「76分」のレヴァンドフスキより短い「69分」と猛烈なペースだ。

    得意の左足シュートだけでなく、右足やヘディングのフィニッシュも正確。長身ながら足下のテクニックや機動力にも長け、周囲と連動しながらのチャンスメイクも冴えている。

  • bundes-best11(C)Goal

    ブンデスリーガ:2021-22シーズン前半戦ベストイレブン(4-4-2)

    GK:フレッケン

    DF:シュミッツ、ウパメカノ、シュロッターベック、A・デイヴィス

    MF:ベリンガム、ディアビ、ミュラー、サネ

    FW:レヴァンドフスキ、シック

    ▶21/22ドイツ ブンデスリーガ全試合LIVE配信!

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