Bayern Munich contract chaos GFX 2023-24GOAL

バイエルン、契約の混乱で“ケイン時代”に暗雲…キミッヒやデイヴィスら去就に不安

この夏、ハリー・ケインがバイエルン・ミュンヘンと4年契約を結んだとき、彼は長期にわたってヨーロッパで活躍するプロジェクトの中心になると思われていた。バイエルンでは彼の周りにも国際的なスターであふれている。

左サイドバックにはカナダのキャプテン、アルフォンソ・デイヴィス。ドイツのスター、ヨズア・キミッヒは中央に構える。オランダの次代を担うセンターバック、マタイス・デ・リフトがディフェンスを支えた。さらにマヌエル・ノイアー、レオン・ゴレツカ、リロイ・ザネ、ジャマル・ムシアラを加えれば、バイエルンは世界一を争えるレベルにある。

今のところ、物事は正しい方向に進んでいる。バイエルンはピッチ全域で強力で、ケインはブンデスリーガの1シーズン・ゴール記録を塗り替える可能性がある。レヴァークーゼンは首位に立つが、シャビ・アロンソのチームがスリップするようなことがあれば、バイエルンは完璧に襲いかかることができる。

しかし、その裏には問題がある。契約の不透明さによって、デイヴィス、デ・リフト、キミッヒのバイエルンでのキャリアは危機に瀕しているのだ。この3人は今後1年半以内に退団する可能性がある。また、トーマス・トゥヘル監督は、貴重な攻撃陣の一握りの選手からベストを引き出すことができないでいる。その結果、チームは不安定な状態に陥り、次のレベルへの推進力となるはずだった夏の契約選手、ケインを中心に崩壊の危機に瀕している。

  • 20230906_Nagelsmann(C)Getty images

    FCハリウッドリターン

    すべては2023年3月まで遡ることができる。当時のユリアン・ナーゲルスマン監督の指導の下、バイエルンは必ずしも苦戦していたわけではなかった。しかし、繁栄していたわけでもない。当時、ドルトムントはリーグで首位に立ち、バイエルンの一貫性のなさがナーゲルスマンの職を奪い、スケートボードを乗りこなす若きドイツ人監督は、チャンピオンズリーグのノックアウト戦を2週間後に控えた、木曜日の夜に解任された。

    ナーゲルスマンはバイエルンで最も注目を集める選手たちに助けられていたわけではない。トーマス・ミュラーはいつものように声を張り上げていた一方、マヌエル・ノイアーはシーズン終盤の足の骨折から間もない昨年1月、『アスレチック』紙のインタビューでバイエルンの組織全体を非難した。

    それから、サディオ・マネの件もあった。2022年夏に獲得したサディオ・マネは、リヴァプールではその性格の良さと冷静さで知られていたが、ドイツでは混乱の元凶となった。まず、チャンピオンズリーグのパリ・サンジェルマン戦でプレー時間が制限された後、ナーゲルスマンと激しい口論になった。そしてマンチェスター・シティに大敗した後、ドレッシングルームでサネを殴ったと報じられたのだった。

    当時、トゥヘルは、抜け目のない後任に思えた。ボルシア・ドルトムント、PSG、チェルシーと、過去3度の監督職を不遇のうちに終えていたが、彼は分裂したロッカールームを把握することができる厳格な監督でもあった。そして、彼はバイエルンにタイトルをもたらした。

    しかし、ブンデスリーガ優勝はドルトムントの最終節の失態に負うところが大きく、クラブの深い亀裂を癒すことはほとんどできなかった。

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  • Ryan Gravenberch Oliver Kahn Bayern Munich presser 2022Getty

    首脳陣は解任

    オリヴァー・カーンCEOもハサン・サリハミジッチSD(スポーツディレクター)も、バイエルンが最終節でリーグ優勝を決めた数時間後には職を失っていた。その後数週間で、すべての契約交渉が保留されたことが明らかになった。すでに移籍が噂されていたデイヴィスも、話し合いは打ち切られた。キミッヒも同じで、さらに心配なのは、将来のスター選手であるムシアラだろう。

    カーンとサリハミジッチはひどいシーズンへ導いてしまったかもしれないが、それでも選手たちと代理人の両方からは貴重な信頼を得ていた。しかし、彼らがいなくなったことですべてが行き詰まってしまった。

  • Joshua Kimmich FC Bayern 2023Getty Images

    脅威にさらされるキミッヒ

    キミッヒは自身の立ち位置がプレッシャーにさらされた最初の選手だった。ケインはバイエルンの夏の目玉選手だったが、トゥヘルは他のポジションにも向上の野心を抱いていた。ディフェンシブな中盤は、その重要なエリアとして狙われていた。特にワールドクラスの6番で、サイドバックもこなせるキミッヒの存在を考えれば、それはあまり意味のないことのように思えたが、トゥヘルはこの万能なドイツ人を弱点と見ていた。

    その結果、トゥヘルはジョアン・パリーニャを追い求めた。彼はキミッヒとは異なるタイプの選手で、ドイツ人が不得手とする分野で際立って強かった。2022-23シーズン、フラムでプレミアリーグ最多の147タックルを記録し、2位のモイセス・カイセドに47もの差をつけた。

    トゥヘルはハードな破壊者を求め、パリーニャはその適任者だった。昨夏、パリーニャははるばるミュンヘンに乗り込み、メディアの取材に応じ、ペンを握る以外のことはすべてこなしたが、フラムが有力な後任選手との契約を間に合わせることができず、帰国させられた。

    キミッヒは今年もレギュラーとして活躍しているが、かつてドイツサッカー界の1995年組の至宝と目されていた28歳が、今や消耗品であることは明らかだ。その後、移籍の噂が浮上し、バルセロナがセルヒオ・ブスケッツの穴を埋めるために、この守備的MFが移籍するという話も出ている。カタルーニャへの移籍が噂されることは、年齢を問わず選手にとって斬新なコンセプトとは言いがたいが、彼が旅立つ可能性は十分にある。

  • Alphonso Davies Real MadridGetty/GOAL

    デイヴィスを狙うレアル・マドリー

    デイヴィスは、自業自得とはいえ、似たような状況に置かれている。左サイドバックの代理人は、数か月前からレアル・マドリードへの移籍を公言している。その一方で、選手自身はその主張から距離を置くようなことはほとんどしていない。

    ウイングバックのアシスト数は、困難な2022-23シーズンの後、通常のレベルに戻ってきた。しかし、守備では苦戦を強いられており、2020年のバイエルンの6冠達成に貢献した選手にはまだ遠く及ばない。

    一方、マドリーはデイヴィスに新契約の締結を遠慮するよう促し、2025年に契約を満了させることを熱望していると伝えられている。ロス・ブランコスは左サイドバックが不足しているわけではないが、キリアン・エンバペもターゲットとする実りある夏の一部と捉えている。

    バイエルンはこうした噂を否定しているが、それでも退団の可能性を警戒している。スポーツディレクターのクリストフ・フロイントは『ビルト』でこう語る。

    「噂はずっと前からあった。フォンジーは2025年まで契約を結んでいる。彼はFCバイエルンでのプレーを心から楽しんでいると確信している。彼にはもっと長くバイエルンにいてもらいたい。話し合おう」

  • Dayot Upamecano, Matthijs de Ligt, 2024getty

    デ・リフトのジレンマ

    デ・リフトも不安定な状況にある。このセンターバックはナーゲルスマンが2022年にユヴェントスから7700万ユーロで獲得した大型補強の一人だ。当時、彼は将来のスター候補であり、オランダのバックラインにおけるフィルジル・ファン・ダイクの長期的なパートナーだった。バイエルンは世代を代表するセンターバックを手に入れたのだ。しかし、ナーゲルスマンの解任が事態を変えた。デ・リフトも2023年3月、『NOS』にこう語っている。

    「こうなるとは思わなかったし、驚いたよ。リーグ戦では2位、カップ戦では準々決勝、チャンピオンズリーグでも準々決勝に進んでいる。すべての可能性があった。誰が監督になるかは責任者が決めること。でも、トゥヘルは僕らに合っている監督だとも思っている」

    しかし、トゥヘルはデ・リフトを同じように受け入れてはいない。新監督の就任とともに出番を減らされたデ・リフトは、今季ここまでリーグ戦4試合の先発出場にとどまり、キム・ミンジェとダヨ・ウパメカノの後塵を拝している。新監督はデ・リフトのスタイルを気に入っておらず、ビルドアップが遅すぎると不満を漏らしているという報道もある。

    デ・リフトは、チャンピオンズリーグのマンチェスター・ユナイテッド戦で起用されず、試合後、怒ってドレッシングルームを飛び出し、不快感をあらわにした。当然ながら、移籍の話は本格化している。

    ムシアラだけでなく、他にも疑問符はある。トゥヘルの下で成功を収めた数少ない選手の一人であるにもかかわらず、ザネの将来もまた憶測の対象となっている。調子の上がらないセルジュ・ニャブリも同様で、今月中か夏に売却される可能性がある。

  • Harry Kane Bayern Munich 2024Getty Images

    バイエルンの解決策

    しかし、手近なところに助けはある。バイエルンはサリハミジッチの退任後、9か月間明確なスポーツディレクターが不在だった。このほど、有名なネゴシエーターであるマックス・エーベルが4月1日までに就任することが濃厚となっている。彼が冬の移籍に与える影響は最小限にとどまるだろう。しかし、契約交渉に関しては、ボルシア・メンヘングラッドバッハ、そしてRBライプツィヒで良好な関係を築いてきたエーベルが適任のようだ。

    これは特にケインにとっては朗報だ。ケインは、ヨーロッパで最も大きな賞の争奪戦に加わることを期待していた。スパーズから移籍した理由はいろいろあるだろうが、最終的にバイエルンへ移籍したのは、タイトルを手にしたいという願望からだった。今季はチーム内に不安が蔓延し、メダル獲得への明確な道筋は見えない。チームが不安定なままであれば、彼の将来性もそれほど向上することはないだろう。

    ここまでの個人的な数字は印象的だ。16試合で22ゴール・5アシスト。ロベルト・レヴァンドフスキのゴール記録(2021年に樹立された41ゴール)を更新する勢いである。イングランドが優勝候補の一角に挙がるであろうEURO2024に向けて好調を維持している。

    しかし、ケインにとってこの移籍はすべて、チームの強さに頼るためだった。そして、彼がかつて切望したその安定は揺らぎ始めている。ケインが期待したほど、成功はすぐには訪れないかもしれない。

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