Havertz Arsenal 2023Getty

ハヴァーツ名誉挽回にジェズスのゴラッソ、トロサール注目の起用法も!アーセナルが5発圧勝で示したもの

真夏の大型補強を経て、いよいよ新シーズンへ向けて出発したアーセナル。19日にはMLSオールスターズとの親善試合を行ったが、彼らに慢心はない。昨季プレミアリーグ優勝争いに敗れた燃え尽き症候群も、失望による自信喪失も微塵もない。5-0の圧勝劇で改めて宣言したのは、彼らが「まだまだこれからスタートするチーム」ということだった。

主将マルティン・ウーデゴールの衝撃的なアシスト、ウィリアム・サリバ最高の守備、誰にも止められないブカヨ・サカ、そしてガブリエウ・ジェズスのスーパーゴール……。そこには見慣れたアーセナルの姿があったのかもしれない。だが、新生ガナーズには間違いなく選択肢が大幅に増えている。カイ・ハヴァーツ、デクラン・ライス、ユリエン・ティンバーの新加入全員がピッチに立ち、ハヴァーツは見事なシュートを叩き込んでみせたのだ。

彼らの冒険は始まったばかり。だが、意欲に溢れた素晴らしいスタートを切ったのは間違いない。今回『GOAL』は、アーセナルがMLSオールスターズ戦で見せたものを紐解いていく。

文=ライアン・トルミッヒ

  • Trossard Arsenal 2023Getty

    トロサールの輝き

    またしても、ミケル・アルテタは何かを企んでいるようだ。

    レアンドロ・トロサールはこの試合で先発に指名されたが、いつも通りのウィングではなかった。左インサイドハーフとして起用されると、豪快なミドルシュートを突き刺している。これこそがブライトンから彼を連れてきた理由、ファイナルサードに新たなダイナミズムをもたらす存在であることを証明した瞬間だった。常に存在感を放ち、パスにドリブルにシュートと、相手の脅威であり続けている。

    このトロサールの起用法は興味深い。おそらくハヴァーツに同じようなことを期待して獲得したのだろうが、選択肢はいくらでもあったほうが良い。トロサールもこのポジションでものになれば、アルテタは無限の可能性を手に入れられるだろう。

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  • Gabriel Jesus Luciano Acosta MLS All-Star 2023 ArsenalGetty

    ジェズスを止めろ!

    もちろんプレシーズンではあるが、あのゴールに関してはプレシーズンかどうかなど関係ないだろう。

    紛れもないゴラッソだ……。信じられないようなシュートを決めるのに5分しか必要なかった。アーセナルにとって最高のニュースだ。そうだろう? ボックスから遠い位置でボールを拾うと、相手GKを見て、柔らかなタッチでループシュートをバックポストに優しく押し込んでいる。元ドルトムントGKロマン・ビュルキは見守ることしかできず。オールスターゲームにふさわしい一撃であった。

    このブラジル代表FWは昨季11ゴールを決めたが、長期離脱を考慮すれば十分な数字だ。しかし、マンチェスター・シティとのタイトルレースを制すのであれば、彼には20ゴールを期待したいところ。今回のゴールは、大事なシーズンに向けた良いサインとなるだろう。

  • Kai Havertz Arsenal 2023Getty

    ハヴァーツ、スキルチャレンジを乗り越えて

    『Twitter』に出回った動画で笑ってしまった人も多いだろうが、それもそのはず。カイ・ハヴァーツがMLSスキルチャレンジで見せた失態は、控えめに言って恥ずかしいものだった。ボレーシュートチャレンジで1本も決められず、これは過去最低記録だったとも言われている。

    しかし、19日の彼に失敗はなかった。試合終盤、完璧な胸トラップからネットを突き破りそうなほど強烈なボレーを突き刺している。このシーンまではやや大人しかったが、それも問題ないだろう。チェルシーで昨季苦しんだ彼にとって、このゴールはまさに必要としていた自信を取り戻すものになる。

    アーセナルは獲得に多額の資金を支払ったため、このドイツ代表にかかる期待は大きい。しかし、新天地に適応していくのはどんな選手だって難しく、時間は必要だ。だが、ゴールを祝う以上に有効な手段はないだろう。

  • Rice Arsenal 2023Getty

    ライスとティンバーのデビュー

    この夜最も歓声を集めたシーン。アーセナルへようこそ、デクラン・ライス! ファンはみな笑顔で新加入選手を迎えている。後半からジョルジーニョに代わってピッチに立つと、ボールを触るたびにどよめきが起こった。全員が1億ポンドの男を見つめていた。

    そんなライスのデビュー戦は派手なものではなかったが、それを期待して獲得したわけではないはずだ。むしろ、普段通りのパフォーマンスを発揮したことを称えるべきである。ボール要求し、奪い、ミスもなく、アーセナルに不足しがちな中盤の存在感を証明している。

    一方でユリエン・ティンバーは、新加入3人の中では最高だったかもしれない。右サイドバックにすんなりとフィットし、落ち着いて自身の仕事をこなしている。このパフォーマンスを期待できるのであれば、右サイドバックはもう安泰だ。

  • ARsenal Balogun 2023Getty

    バログンの才能

    どちらに行ったとしても、アルテタにとっては難しい決断が待っている。果たして、彼らは一体フォラリン・バログンをどうするつもりなのだろうか? アメリカ代表FWがピッチに立ったのは最後の25分間だが、そのプレーは堅実かつ鋭く、ゴールこそなかったが目を見張る物があった。

    一方でエディ・エンケティアも、この日はウイング起用ながら良いアタックを見せ、ジェズスとのポジション争いだけでなく新たな可能性を感じさせている。

    アルテタは今後、厳しい決断を強いられるだろう。両選手共にこの試合でできることを示している。プレシーズンはまだ長く続き、チャンスを得る機会は多いはず。そのチャンスを見極め、誰を残し、誰を放出するのか決めるつもりかもしれない。

  • saliba Jorginho Arsenal 2023Getty

    深読みは禁物

    結局のところ、親善試合で得られるものは限られている。むしろ通常の親善試合ですらないので、その眼鏡を通して見なければならない。相手は普段一緒にプレーしていないオールスターチームであり、本当の意味での戦術はない。

    したがって、この試合で注目すべきは個々の仕上がりだ。その意味でトロサールやジェズス、サカらのパフォーマンスは注目すべきであり、今後が楽しみになったファンも多いはず。

    一方でMLSオールスターズは恥じらう必要もない。リーグ自体が揶揄される必要もない。素晴らしいアーセナルによる、ある意味でのショーゲームだった。誰もが興奮し、ワクワクした楽しい瞬間を過ごしたことに大きな意味があるものである。

    そしてアーセナルは大きな手応えとともに、次のステップへと進んでいくことになる。次戦は22日、プレミアリーグのライバル、マンチェスター・ユナイテッドとの一戦だ。