Angelo Stiller Liverpool GFXGetty/GOAL

アンジェロ・シュティラー:リヴァプールとレアル・マドリーがシュトゥットガルトの「トニ・クロースの再来」に注目する理由

レアル・マドリーは、昨夏トニ・クロースの代役を確保できなかったことで現在大きな代償を払っているが、そもそもそれは困難な任務だった。第一、引退した元ドイツ代表は、深い位置から試合を指揮する司令塔として現代サッカー史上最高の選手のひとりと評価されていたのだから。

さらに、今リヴァプールが痛感しているように、現代のサッカーにおいて専門の背番号6を見つけることは極めて困難である。リヴァプールが現在2度目のプレミアリーグ優勝を目前にしているのは、アルネ・スロット監督がライアン・フラーフェンベルフを守備的MFにコンバートして成功したからなのだ。

しかし、リヴァプールのバックラインの前に別のオプションが必要であることは明白であり、同様に、レアル・マドリーも遅ればせながらクロースの後継者として相応しい選手を見つける必要がある。その結果、この2チームが、今夏、同じ選手を巡って争う可能性が高まっている。その選手とは、シュトゥットガルトのスター選手で「トニ・クロースの再来」と称されるアンジェロ・シュティラーである。

  • 始まり

    シュティラーは、ミュンヘンでバイエルン・ミュンヘンに熱狂する家庭に生まれた。故郷のクラブから初めてオファーが提示された際、彼が即座にバイエルンの巨人に加わる機会に飛びつくだろうと誰もが思ったに違いない。

    ところが、当時8歳のシュティラーはバイエルンを待たせたのだった。地元のチームであるミルベルツホーフェンで友人たちともう1シーズンを過ごし、2010年にようやくヨーロッパで6度の優勝を誇るバイエルンと契約した。その後、シュティラーはバイエルンのユースチームで急速に頭角を現し、17歳ながらU19のチームでプレーしたのだった。

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  • TSG 1899 Hoffenheim v VfB Stuttgart - BundesligaGetty Images Sport

    大躍進

    どんなに控えめに言っても、セバスティアン・ヘーネスがシュティラーのキャリアに多大な影響を与えたというのは間違いない。2019年、当時10代だったシュティラーをバイエルンのリザーブチームに招集したのは、ヘルタ・ベルリンの元攻撃的MFヘーネスだった。ドイツの3部リーグでの印象的なパフォーマンスが評価されたシュティラーは、翌年10月にハンジ・フリック監督の下でトップチームデビューを果たした。

    2020-21シーズン終了後にシュティラーとバイエルンの契約が切れた際、ヘーネスがホッフェンハイムにいたことは、シュティラーがプレゼロ・アリーナに移籍する決断に大きな影響を与えた。さらに、ヘーネスがシュトゥットガルトに移った2023年夏、シュティラーも同じチームに移籍したことは、全く驚くべきことではなかった。

    「同じ監督と長くキャリアをともにし、その下でプレーできることは、間違いなく特別なことだ」と、今年初め、シュティラーはブンデスリーガの公式サイトで語っている。「僕と監督はサッカーに対する考え方が同じだと思う。攻撃的にも守備的にも同じようなサッカーをしたいと考えており、その信頼関係が重要だと思う」。

  • Germany v Italy - UEFA Nations League Quarterfinal Leg TwoGetty Images Sport

    その後

    ヘーネスが2022年夏にホッフェンハイムを去ったことが、シュティラーに大きな打撃となったのは当然であった。それでも翌シーズンは20試合に出場したが、先発はわずか6試合だった。そのため、シュティラーは満足のいくようなキャリアの進展を得られなかった。自分は停滞していると感じ、だからこそプレゼロ・アリーナでメンターと再会する機会に飛びついたのである。

    シュトゥットガルトは2023年夏にシュティラーを獲得するために550万ユーロ(約9億円)を支払ったが、それはすぐに素晴らしい取引であったことが証明された。この守備的MFのおかげで、チームは昨シーズンのブンデスリーガで衝撃の2位フィニッシュを遂げたのである。

    「最初のうちは、誰もこんな結果になると予想していなかった。正直言って、僕ら自身もそうだった」と、後にシュティラーは明かしている。「でも、試合を重ねるごとに、毎週、毎月、良いサッカーをしていることを示してきた。だから、このシーズンは高く評価されるべきだと信じている」。

    現在のシーズンは順調とは言えない――少なくともブンデスリーガで11位に沈んでいるシュトゥットガルトにとっては。しかしながら、シュティラーは印象的なプレーをし続けている。クロースがEURO2024の後に引退した後、ドイツ代表に選出され、これまでのところネーションズリーグで4試合に出場。好調を維持して、ヨーロッパのトップクラブからも注目されている。

  • 最大の強み

    シュティラーは、典型的なボール奪取型の守備的MFではない。マルチな才能に恵まれた司令塔で、クロースだけでなく、同じくドイツ代表で評価の高いヨズア・キミッヒとも比較されるほど、試合の流れを読んでパスを選択するセンスに長けている。

    実際、彼はブンデスリーガで最も創造的な選手のひとりであり、今シーズンこれまででアシスト数「8」(トップのフロリアン・ヴィルツと2差)を記録している。また、4得点もしているが、その中にはシュトゥットガルトをDFBポカール決勝進出に導いた2得点が含まれている。

    しかし、ヘーネス監督がシュティラーについて特に評価しているのは、彼の成熟度である。バイエルンのユースでプレーしていた頃から、シュティラーの成熟度は際立っていたと述べている。そのため、監督はこの若者がワールドクラスの才能を持っていることに疑いを抱いたことは一度もなく、EURO2024のドイツ代表にも強く推していたほどである。

    「彼はいつだって高いレベルに適応できる」と、ヘーネス監督は言った。彼は試合を支配できる。それは彼がサッカーを理解しているからだ。特定の状況で何タッチでパスを出せばよいか、その数を正確に把握している。それはほとんど2回以下で、時には1回だけのこともある」。

  • 伸びしろ

    シュティラーは、プロになったばかりの頃、守備のプレーが十分ではなかったことを率直に認めており、今も改善に努めている。とは言え、危険を察知する能力、タックルのタイミング、1対1のデュエルで勝つことにおいて、自分は上達しつつあると感じている。

    「いい感覚がある。以前にはなかったものだ」と、シュティラーはブンデスリーガの公式サイトで語った。「サッカーはボールを保持していればいいというものではないと繰り返し教わってきた。時にはリスクを負うものだ、と」。

  • VfB Stuttgart v RB Leipzig - DFB Cup: Semi FinalGetty Images Sport

    今後の期待

    現在シュティラーが目指しているのは、5月24日に開催されるDFBポカール決勝でアルミーニア・ビーレフェルトを破り、シュトゥットガルトにとって過酷で苦しかったシーズンを華々しく締めくくることである。優勝できれば、彼にとって、2020年にバイエルンのリザーブチームで3部リーグの優勝を果たして以来の優勝メダルとなるだろう。

    しかし、ベルリンで行われる決勝の結果とは関係なく、今夏、彼は大きな決断を迫られる可能性が高い。彼のパフォーマンスへの関心が高まっているためだ。とは言え、代表チームの未来が彼の次の決断に大きく影響するだろう。

    ドイツ代表監督のユリアン・ナーゲルスマンは、シュティラーを2026年ワールドカップの代表チームに入るのに「申し分ない」選手だと評価している。そのため、この24歳の選手は、来夏、北米で開催される大会に向けて、クラブでも出場機会を確実に得られる環境を模索するだろう。現在の契約における買い取り条項が2026年まで発動しないことを考慮すると、シュトゥットガルトに残留する可能性も十分にある。

    もちろん、リヴァプールやレアル・マドリーからの大きなオファーがあれば状況は一変する可能性があるが、ひとつ確かなことは、シュティラーが移籍を急ぐことはないということだ。8歳の時、彼はバイエルンへの加入を遅らせる選択をした。次の一手も同様の判断を下すかもしれない。