Garnacho Ronaldo Di Maria GFXGetty/GOAL

19歳FWガルナチョの能力は青天井。「ロナウドパフォは理解不能」の声も…気にせず突き進める才能

アンヘル・ディ・マリアは、アルゼンチン代表の新たなチームメイトであるアレハンドロ・ガルナチョの可能性を評価するよう求められた際、アルゼンチン紙『オーレ』に対し、「彼は非常に速い選手で、信じられないほどの能力を持っている」と語った。

「彼には非常に大きな将来がある。それに対処できるかどうかは彼次第だ。彼がマンチェスター・ユナイテッドでプレーするのには理由がある」

ガルナチョは昨年6月に18歳でアルゼンチン代表としてトップデビューを果たし、現在はコパ・アメリカとワールドカップ防衛戦に向けたチームの中心人物となることが期待されている。しかし、ディ・マリアの熱烈な支持には注意点もあった。

「自分がやりたくない唯一のことは、クリスティアーノ(・ロナウド)のように祝うことだよ。自分なら(リオネル)メッシのように祝うだろう。それにこだわり続けるよ」

このインタビューからわずか数日後、ガルナチョはロナウドの最も有名なお祝いの一つを真似しているようだった。ポルトガルのスーパースターが2017年のチャンピオンズリーグ準決勝でアトレティコ・マドリーに対してゴールを決めた後、広告板に座ったパフォーマンスだ。

直近のウェストハム戦でガルナチョが決めた2点目の重要性はそれに比べると薄れるが、ディ・マリアへの直接の返答を意図したものではなかったとしても、それは10代の若者からの大きな声明のように感じられた。

ガルナチョは3-0で勝利したウェストハム戦において、ユナイテッドの傑出した選手だった。プレミアリーグをトップ4で終えるという期待が再燃したが、これはほんの始まりにすぎない。ロナウドは神聖なオールド・トラッフォードの芝生を飾った最も偉大な選手の一人であり、ガルナチョも同じ道を歩む決意をしているようだ。その考え方は彼の周囲にいる全員が奨励すべきものである。

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    「若いクリスティアーノ」

    2023-24シーズンはユナイテッドにとって悲惨なシーズンとなった。公式戦過去5試合中4試合で勝利を収めたにもかかわらず、まだその様相を払拭するには至ってない。エリック・テン・ハーグ監督率いるチームはチャンピオンズリーグ出場権まで勝ち点8差。現在イングランドサッカーの序列ではマンチェスター・シティ、リヴァプール、アーセナルがレッドデビルズを大きく上回っている。

    ピッチ全体でのクオリティ欠如が目立つチームの中で、ガルナチョは数少ないの本当の光だ。才能豊かなティーンエイジャーはこれまで31試合に出場し、7ゴールを記録。その中にはボクシングデーのアストン・ヴィラ戦、スリリングな逆転勝利を導いた2得点も含まれている。

    現在は13試合連続先発出場中。クリスティアーノ・ロナウドは20歳の誕生日までは連続8試合にとどまっている。アルゼンチン代表選手は、2022年10月にポール・スコールズから与えられた「若いクリスティアーノ」という評価に応える成績を残している。

    当時、ロナウドはガルナチョを指導するために側にいた。ガルナチョがバロンドールを5回受賞した男からできる限りの知恵を吸収したのは明らかだった。ガルナチョは、オールド・トラッフォードでの初期のロナウドと同じくらい恐れ知らずで、率直で、器用だ。

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  • Hojlund-Man-UtdGetty

    ホイルンドに命を吹き込む

    ガルナチョは最近、本来の左サイドから右サイドに移ってプレーしている。ユナイテッド時代の若きC・ロナウドもそうだった。テン・ハーグが昨年末のヴィラ戦で変更を加える前、ユナイテッドはブラジル代表FWアントニーが期待に応えられず、攻撃の鈍さは明らかだった。最終的にガルナチョ、マーカス・ラッシュフォード、ラスムス・ホイルンドが前線を構成することでバランスが保たれた。

    『スカイスポーツ』によると、この試合以降、プレミアリーグでガルナチョ以上に1対1のテイクオンを試みた選手はいない(24回)。彼はそのうち12回を成功させており、これは3番目に多い記録である。 チャンス創出でも9位という事実は、彼が現在この部門で最も有能なウインガーの一人であることを強調している。

    ホイルンドは終盤の劇的な決勝ゴールでヴィラの心を破った。これはデンマーク人ストライカーにとって、夏にアタランタから7300万ポンドで移籍して以来初のプレミアリーグでのゴール。ようやく巨額の投資に見合う価値があることを証明し始めている。21歳の彼はウェストハムとの重要な一戦を含み、現在4試合連続ゴール中。彼とガルナチョが特別なパートナーシップを築く可能性がある兆候だ。ホイルンド自身もそれを示唆している。

    「1カ月前、僕たち(ホイルンドとガルナチョ)が十分なゴールを決めていないという話題がたくさんあった。だが、僕たちは二人とも若く、日々成長しているんだ」

  • Alejandro Garnacho Manchester United Everton 2023-24Getty

    「自分の名前をつくる」

    ガルナチョが今後、同世代を代表する選手になる可能性は十分にあるだろう。11月のエヴァートン戦、ボックスのファーサイドから見事なオーバーヘッドキックを決めたとき、2011年のマンチェスター・シティ戦でウェイン・ルーニーが同様のシュートを決めた懐かしい思い出が多くの人に甦った。

    2018年にマドリー対ユヴェントス戦でロナウドが決めた驚異的なバイシクルキックとの比較も必然的に行われ、アイドルのトレードマークである「Siuuu」のセレブレーションを披露。数日後のチャンピオンズリーグのガラタサライ戦でも得点した際に同じ動きをし、その過程で批判にさらされた。

    「理解できなかったのは、なぜ彼がクリスティアーノのように祝うのかということだ」と元バルセロナのチリ代表MFアルトゥーロ・ビダルはTwitchで語った。12月のアルゼンチン代表キャンプに招集された後、レアンドロ・パレデスは『DSports』に「僕たちは彼とそのことについて冗談を言いあった。彼はとても内気で返事はなかった。いつも彼(ロナウド)をよく追いかけていて、プレーもかなり似ている。でも代表チームに来ると、彼は少し変えなければならない」と語っている。

    それでも、ガルナチョはクラブレベルで向上するためのアプローチを何も変えようとしていない。メッシは常に神から与えられた魔法のような才能を最大限に発揮してきたが、ロナウドは純粋な意志とパーソナリティの強さによってその能力を維持し続けた。

    39歳という熟した高齢になった今でも、アル・ナスルのフォワードはトレーニングピッチに最初に登場し、最後に退場する。ガルナチョがロナウドの証明された成功の青写真に従い、それでも「自分の名前をつくる」ことができない理由はないのだ。

  • Bruno Fernandes Alejandro Garnacho Man Utd 2023-24Getty Images

    改善

    ブルーノ・フェルナンデスはグディソン・パークでガルナチョのワンダーゴールを目撃した後、「彼がクリスティアーノのようになるにはまだ長い道のりだが、着実にステップを踏んでいる」と語った。

    「彼はフットボールの世界で特別な存在になりたいと思っているし、それを実現する能力があると思う」

    フェルナンデスの言うことは全く正しいが、ガルナチョがロナウドと同じレベルにさらに近づこうとするのであれば、彼は適切な振る舞い方を学ばなければならない。19歳に非の打ち所のないプロフェッショナルであることを期待するのは不公平ではあるが、彼の未熟さが議論を巻き起こすこともあった。

    チャンピオンズリーグのグループステージで、コペンハーゲンのジョーダン・ラーションがマンチェスター・ユナイテッド戦で土壇場PKを決めて同点のチャンスを逃す前に、ガルナチョがペナルティースポットを足で削った。このティーンエイジャーは両チームがデンマークで再会した際にも同じトリックを繰り返した。ディオゴ・ゴンサルベスはそれでもゴールを決めることができ、コペンハーゲンが4対3で勝利を収めたが、彼の行動は後味の悪いものを残してしまった。

    コペンハーゲンのディフェンダー、デニス・バヴロは「2度目だ。僕にとって彼はピエロだ」とBold.dkに語った。

    「また同じようなことをしようとした。彼のメンタルは子供のようだ」

    シーズン初め、ゴールキーパーのアンドレ・オナナを称えようとした無邪気で無分別なツイートも、勘違いされる理由となってスポットライトが当たることになった。ガルナチョは、言動と行動すべてをもっと熟考する必要があるだろう。

    フェルナンデスはガルナチョの熱狂的なファンだが、それと同時に、若いチームメイトの意思決定にフラストレーションを示すこともあった。最近ではFAカップ4回戦でユナイテッドがニューポート・カウンティに4-2で勝利した試合がそうだった。テン・ハーグのチームが2-0とリードしていたとき、ガルナチョは良い位置にいたフェルナンデスやホイルンドに向かってボールを狙うのではなく、狭い角度からシュートを打つことを選択した。

    最終的に4-2で勝利したが、フェルナンデスは「3-0にするチャンスがあった。このような試合で2-0とリードすると、誰もが自分でゴールを奪いたがるもの。チームにとって最善の決断ができないこともある」と語っている。

  • Alejandro Garnacho Manchester United Aston Villa Premier League 26122023Getty Images

    未来

    ユナイテッドは今後もガルナチョにインスピレーションを求め続けることになるだろう。 少なくとも年明け以降は改善の兆しが見られる。リサンドロ・マルティネスの再離脱は打撃だが、アカデミー卒業生のコビー・メイヌーを含む多くの主力選手が怪我から復帰したのはポジティブな材料だ。

    プレミアリーグでの次の7試合のうち5試合が下位10位のクラブとの対戦。指揮官は、変化に向けてかなり楽観的な気持ちで試合リストを見ることになるだろう。例外は次の日曜日のアストン・ヴィラとの遠征試合だ。その後、3月3日にはマンチェスター・シティとのダービーが控えている。

    ユナイテッドはその試合が終わるまでに勝ち点15以上を獲得できれば、再びトップ4フィニッシュを目指して戦う強力な立場に立てるだろう。FAカップ5回戦ではブリストル・シティ対ノッティンガム・フォレストの4回戦再試合の勝者と対戦する予定であり、比較的与しやすい相手だ。

    ここにきて今シーズン初めて、ユナイテッド陣営には自信が芽生えてきている。そして、シーズンを良い形で終えるにはガルナチョが重要な役割を果たすことが必要不可欠だ。ロナウドの勝者のメンタリティーが自身の精神に焼き付いている、このアルゼンチン人選手のポテンシャルは青天井だ。それは、ユナイテッドを本来あるべき場所に戻すことができるほどのものと期待されている。