(C)Kenichi Arai河治良幸
サッカー日本代表、序列評価:当確、濃厚、有力、当落線上…好材料だらけのハイレベルな争い。ガーナ戦で評価を上げた選手は?
森保監督の評価を分析
カタール・ワールドカップ(W杯)に向けた強化試合として、10日にはキリンカップ2022でガーナ代表と対戦して4-1で快勝した日本代表。本大会メンバー入りをかけた選考サバイバルという観点でも、多くの選手が猛アピールしている。
通常通りであれば23名、カタールW杯に関しては新型コロナウイルスの影響を考慮して26名に拡大されることも見込まれる本大会登録人数。『GOAL』では、森保一監督の中での選手の序列を「当確>有力>濃厚>当落線上」の4つのカテゴリで、ジャーナリストの河治良幸氏に分析してもらった。
(C)Kenichi AraiGK
当確:権田修一
有力:シュミット·ダニエル、川島永嗣
当落線上:大迫敬介ここまでシュミット·ダニエル、権田修一、川島永嗣と起用されてきて、それぞれが持ち味を発揮している。ガーナ戦の川島に関しては山根視来のミスパスからジョーダン·アユーに決められた失点シーンがノーチャンスだったわけではないが、相手の唯一の枠内シュートだったことを考えれば、そこで1つ止めて存在感を示して欲しかった。
それでも背後のカバーは的確にできていたし、センターバック陣にも頼もしかっただろう。ただ、やはり後のビルドアップでワイドに振り分ける時にズレが出て、谷口彰悟が後ろ向きに処理しなければならないなど、そこは見劣りもある。シュミットと権田はほぼ横一線で、1つ後に川島という序列か。ただ、川島はチーム全体を支える意味でも重要で、最低でも3人目としては残る可能性が高い。その意味でシュミットと同じ「有力」とした。
(C)Kenichi AraiDF
当確:山根視来、吉田麻也、板倉滉、冨安健洋
濃厚:長友佑都
有力:伊藤洋輝、谷口彰悟、中山雄太右サイドバックの山根視来は本来、酒井宏樹がいることを想定すればレギュラー確約とは言えない。それでも攻撃センス、運動量、対人守備などアベレージが高い。よほどのケガがあったり、コンディションを落としたりしない限り、森保一監督の起用法から見てもメンバー入りは「当確」だろう。ガーナ戦のミスパスは周囲のポジショニングもあるが、判断としてやってはいけないレベルのもの。ただ、ここで経験したことがプラスに働くように、本大会に向けて準備して行ってもらいたい。
左サイドバックは伊藤洋輝がパラグアイ戦ほど積極的な攻め上がりはなかったものの、インサイドでビルドアップに関わるなど、さらなるアップデートが見られた。左ウイングが三笘薫か南野拓実かでポジショニングを変えていたのも好材料で、残り半年のパフォーマンス次第で左サイドバックのファーストチョイスになる気配も出てきた。
センターバックではガーナ戦前半は吉田麻也、後半は板倉滉との組み合わせで谷口彰悟がテストされた。山根のミスパスからジョーダン·アユーに決められたシーンの対応はもう少し厳しさも欲しかったが、ラインコントロールやビルドアップは特長を出せていた。
ただ、ドイツ戦やスペイン戦をボールがあまり握れない前提で組み上げていく場合、別メニューで調整中の冨安健洋も含めて序列が下がってしまうのは否めない。それでもメンバー入りに向けては良いアピールになったと言える。吉田に関してはキャプテンの役割もあるが、ゲームキャプテンということならボランチの遠藤航も可能なので、冨安&板倉がファーストセットになる可能性も。
(C)Kenichi AraiMF
当確:遠藤航、伊東純也、南野拓実、三笘薫
濃厚:堂安律、田中碧、原口元気
有力:鎌田大地、久保建英、柴崎岳ガーナ戦の前と後で最も変わったのがMFだ。久保建英、柴崎岳の二人は位置付けが微妙だったが、二人とも4-3-3の中で基本は久保がトップ下寄り、柴崎がボランチ寄りの役割をこなしながら、タイミングを見て柴崎が前目の位置でフィニッシュに関わるなど、アンカーの遠藤航を後支えとしながら持ち味が出せていた。久保については代表初ゴールという結果で報われたことも大きい。もともと4-2-3-1なら有力なオプションだったところに、組み合わせ次第では4-3-3もこなせることを示したのはポジティブだ。
ただ、ガーナが5バック気味のオーガナイズをテストしたことで、中盤のワイドにスペースがあってボールを受けやすかったという側面も無視できないだろう。柴崎もリンクマンとしての仕事は興味深く、守備面で遠藤のボール奪取を誘発するプレスも効果的だった。ただし、相手がドイツなどになった時に守備の強度で不安はある。そうした点では田中碧の方がアドバンテージはあるが、守田英正が離脱した状況で、チームに相乗効果を生み出す存在として、改めて価値を示したことは大きい。
右サイドで先発した堂安律は限りなく「当確」に近い位置にあるが、何しろ伊東純也が第一人者としているので「濃厚」にとどめておく。南野拓実はインサイドのオプションも含めて主力であることは変わらないが、左サイドということでは三笘薫が上回る可能性も。ただ本質的にタイプが異なるのと、三笘の場合はジョーカーとして残しておく方が相手にとって嫌なこともあり、二人の評価だけでなく対戦相手の分析とセットでの見極めになりそうだ。
(C)Ayano MiuraFW
濃厚:浅野拓磨
有力:古橋亨梧、前田大然
当落線上:上田綺世大迫勇也が外れている状況で、良くも悪くも「当確」が一人もいないのがFW陣だ。無論、森保監督が現在「MF/FW」という表記で区分けしている通り4-3-3の左右のウイングをMFの選手がやることも多い。今回の4人であれば、予選からの貢献度を含めて浅野拓磨のみ「濃厚」としたが、「当確」をつけるにはまだ遠い。
ガーナ戦でスタメン起用された上田綺世はゴールという目に見える結果を出せなかったが、ポジティブに評価できることもある。相手が5バック気味の3バックだったこともあり、一発で出ていくスペースが無く、厳しいポストプレーを強いられた。ただ、それでも縦パスを引き出して周りに落としている場面があり、久保の得点シーンでも上田が相手センターバックを引き付けていなければ、あのコースは生まれていなかった。おそらく森保監督も、そうした部分での成長を認めているはず。
ただ、やはりストライカーなので目に見える結果を残せなかったことは受け止める必要がある。次のチュニジア戦はスタメンではないかもしれないが、途中投入でもゴールという結果で一発回答してもらいたい。
前田大然はスピードのあるFW陣の中でもとりわけそこに特化した特長があり、短期決戦での有効性を考えると、26人枠なら確実に入れたいオプションかもしれない。ただ、ようやく“初日が出た”ばかりなので、そこはチュニジア代表戦のパフォーマンスも見て結論を出したいところであり、今回は「有力」にとどめた。
古巣のホームスタジアムで出番の無かった古橋亨梧については、“空気の読めない”というような表現で森保監督に批判というより不満の声が上がっているが、ブラジル戦で負荷の高いプレーを強いられており、コンディション面を考えればチュニジア戦でしっかりと起用される方がアピールはしやすい。森保監督の選択は本大会に向けたテストとしては「是」、代表の支持率を考えるなら「否」というところか。それもチュニジア戦でどう起用されるか、何より古橋が結果を出せるかで変わるかもしれない。
(C)Kenichi Arai評価を落とした選手は一人もいない
ガーナ戦は4-1という結果を含めてアピール材料が多かった。0−1という結果以上の差を痛感させられたブラジル戦から自信を取り戻す意味でも大きい。相手はアフリカネイションズカップ2試合を戦って遠征してきており、新型コロナウイルスの陽性者が出るなど、少し割り引いて評価する必要はある。
それでも久保や柴崎の起用法がより明確になってきたり、その久保と前田が代表初ゴールを決めたりという結果を出した。さらに最終予選の終盤に招集されなかった堂安の奮起に加えて三笘がA代表での存在感をさらに高め、伊東純也の突破力に依存していたサイドからの崩しにバリエーションが出てきたことも明るい材料だ。そして、初招集の伊藤がメンバー入りどころか、主力定着に向けてアピールするなど、プラス面の多いシリーズになっていることは間違いない。
今回はやむなく「当落線上」とした上田も含めて評価を落とす選手がおらず、酒井宏樹を除けば、逆にメンバー外から割って入るのはかなり大変かもしれない。ただし、ブラジル戦を1つ基準にするならば、本大会でドイツ、スペインと対戦することを踏まえて、「当確」とした選手も含めてさらにギアを上げていく必要がある。泣いても笑ってもチュニジア戦で節目となるが、キリンカップというタイトルの獲得もチームとしての成果を示す大事な締めくくりとなりそうだ。
取材・文=河治良幸
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