横浜F・マリノスが川崎フロンターレの3連覇を阻んで王者に輝き、閉幕を迎えた2022シーズンの明治安田生命J1リーグ。その後、カタール・ワールドカップ(W杯)での盛り上がりを経て迎える2023シーズン、サッカー界に注目が集まる中で各クラブはどのような補強を見せたのだろうか。
J1リーグの全18クラブの補強傾向とともに、注目の新戦力を紹介する。
(C)Getty images横浜F・マリノスが川崎フロンターレの3連覇を阻んで王者に輝き、閉幕を迎えた2022シーズンの明治安田生命J1リーグ。その後、カタール・ワールドカップ(W杯)での盛り上がりを経て迎える2023シーズン、サッカー界に注目が集まる中で各クラブはどのような補強を見せたのだろうか。
J1リーグの全18クラブの補強傾向とともに、注目の新戦力を紹介する。
(C)Getty Images北海道コンサドーレ札幌は2022シーズンのJ1リーグを10位で終了。リーグで2番目に多かった「55」という失点数が響き、上位争いに絡むことはできなかった。そして、新シーズンに向けては元韓国代表GKク・ソンユンが復帰し、ディフェンスラインにも有望株の馬場晴也が完全移籍加入。中盤以上では高嶺朋樹やガブリエル・シャビエル、興梠慎三に別れを告げることとなったが、元日本代表MF小林祐希、MF浅野雄也を加えてクオリティアップを目指す。コンディション管理を含め、年間を通して新戦力が新たな風を呼び込むことが期待される。
■注目選手 | MF小林祐希
生年月日:1992年4月24日
昨季成績:J1リーグ9試合3得点、ルヴァン杯2試合、天皇杯1試合出場
2016年夏にジュビロ磐田から飛び立って以来、世界各国のチームを渡り歩いた小林は昨年夏に神戸へと加入。すぐに適応力を見せて主力の一人に躍り出ると、得点という結果も残して残留に貢献した。札幌の目玉補強の1人であり、ゲームメイク能力とピッチ上での修正力を生かしてチームをコントロールする役割が求められる。主導権を握る戦いの中でより輝きを放つ選手ではあるが、インテンシティの高さと運動量も兼ね備えており、チームの課題となっている守備面のバランスの取り方が一つのポイントとなりそうだ。
(C)Getty Images昨シーズンを4位で終えた鹿島だが、常にタイトルが求められるクラブにとっては不本意な結果に。そして、新シーズンに向けては積極補強を敢行。植田直通と昌子源の日本代表経験もあるCB2名を完全移籍で復帰させたほか、FW知念慶やMF佐野海舟、MF藤井智也といった即戦力を獲得した。染野唯月と垣田裕暉も期限付き移籍から復帰しており、各ポジションでハイレベルな争いが繰り広げられることが予想される。その選手層の厚さというアドバンテージを十分に生かすことができるかどうかも、過密日程が続く近年のJリーグでは特に重要な要素だ。
■注目選手 | DF植田直通
生年月日:1994年10月24日
昨季成績:リーグ・ドゥ1試合出場(2022-23シーズン)
2013年のプロキャリアスタートから2018年夏までを鹿島で過ごし、欧州での経験を積んだ植田。年齢も28歳とディフェンダーとして熟成している時期に帰還を決断し、当人も「力になれるうちに帰りたい」という思いがあったことを明かしている。身体能力の高さはそのままに、世界で揉まれた経験を昌子とともに還元していきたい。
(C)Getty images浦和は昨季のリーグ戦を9位で終え、リカルド・ロドリゲス前監督との契約を解除。ポーランドリーグを中心にキャリアを歩んできたマチェイ・スコルジャ監督を招へいし、攻撃的なサッカーを再び標榜する。一方で補強はFW興梠慎三とDF荻原拓也が期限付き移籍から復帰したほか、昨季のJ2リーグで14得点を記録した髙橋利樹を獲得。DFマリウス・ホイブラーテンが欧州から加わったが、キャスパー・ユンカーや松尾佑介、江坂任が去る中でそれほど派手な動きとはならなかった。最終的に優勝を目指す中でまずはチームのベースを構築する必要がある2023シーズン、昨季からの戦力を中心に支配的なスタイルを目指す新指揮官の哲学を吸収していかなければならない。
■注目選手 | DFマリウス・ホイブラーテン
生年月日:1995年1月23日
昨季成績:ノルウェー1部28試合1得点
世代別でのノルウェー代表の経験を持つホイブラーテンはこれまでノルウェーの国内でのみプレーしてきたが、初の海外移籍の場に浦和を選択。レフティーであり、パス精度を生かしたゲームメイクも魅力的な選手であり、身体能力の高さにも期待が集まる。また、攻撃の始点として、同時期に浦和でのスタートを切るスコルジャ監督の意図を体現する選手としても重要な存在となりそうだ。
(C)Getty images昨季終盤に調子を落として7位でフィニッシュした柏。より上位を目指していくためには攻守両面での改善が必要となる中、ディフェンスラインには清水エスパルスから片山瑛一と立田悠悟をダブル補強した。それ以外にも実績が豊富なDFジエゴ、MF仙頭啓矢、MF高嶺朋樹、MF山田康太と計算できる即戦力を加えている。それ以外にも、193cmの長身を誇るFWジェイ・ロイ・フロートをヴィボーFF(デンマーク)を最前線に加えた。一方で3バックを務めてきた大南拓磨、高橋祐治、上島拓巳がいずれも退団したことは懸念か。同時にネルシーニョ監督体制5年目となるシーズン、上位争いを繰り広げていくためにも攻撃の多彩な手札を活用して勝ち切れない試合を減らしていきたい。
■注目選手 | DF立田悠悟
生年月日:1998年6月21日
昨季成績:J1リーグ26試合、ルヴァン杯4試合、天皇杯2試合出場
191cmの長身を誇り、日本人DFという枠組みでも大きな期待を背負っている立田。幼少期より育った清水に別れを告げることを決断し、今季よりキャリアで初めて完全移籍に踏み切った。サイドバックとしてもプレー可能なスピードや両足のキック精度、さらに3バックでも4バックでもこなせる柔軟性は大きなアドバンテージであり、柏が新たな守備組織を構築していく中で中心的な役割を担うこともありそうだ。
(C)Getty imagesアルベル監督体制初シーズンの昨季、ベース作りをテーマに掲げていたFC東京は6位で終了。オフシーズンには三田啓貴や紺野和也、岡崎慎らが新天地へと活躍の場を移した一方、FW仲川輝人やMF小泉慶、DF徳元悠平といった実力者に加え、ブラジルのシャペコエンセから屈強な体格を有するFWペロッチが期限付き移籍で加わった。主に攻撃面の強化が目立つ移籍市場となり、これまでも主軸を務めてきたディエゴ・オリヴェイラや松木玖生らとのかみ合わせ次第では想像以上の爆発力を生むかもしれない。
■注目選手 | FW仲川輝人
生年月日:1992年7月27日
昨季成績:J1リーグ31試合7得点、天皇杯1試合出場
国内屈指のスピードスターである仲川が横浜FMから完全移籍加入。2019年、2022年にリーグ制覇を経験してきた自信を植え付けることが期待される。また、ターンオーバーを採用していた昨季の横浜FMの中で着実に結果を残したメンタリティもチームに好影響を与えそうだ。プレー面でも、素早いトランジションを武器としてきたFC東京のスタイルには合致するため、新エースとして勝利に直結する活躍が求められる。
(C)Getty Images昨季掲げていたリーグ3連覇を逃し、2位で終えた川崎F。新シーズンに向けては絶対的なキャプテンだったDF谷口彰悟と、要所でチームを救ってきた知念慶が完全移籍で退団した。一方、即戦力級の補強はGK上福元直人、DF大南拓磨、MF瀬川祐輔、期限付き移籍から復帰したFW宮代大聖にとどまっている。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)も含めた過密日程を戦う中で不安要素も残り、これまでもそうしてきたように若手選手たちの台頭が不可欠な要素となりそうだ。
■注目選手 | FW宮代大聖
生年月日:2000年5月26日
昨季成績:J1リーグ22試合8得点、ルヴァン杯2試合、天皇杯2試合2得点
鳥栖に期限付き移籍していた宮代が復帰。2018年のトップチーム昇格以降、期限付き移籍先でのプレーが続いていたが、一昨年も徳島ヴォルティスでJ1リーグ32試合7得点を記録するなど、結果を残し続けてチャンスをつかみ取った。また、レアンドロ・ダミアンと小林悠のコンディション面などが懸念されるストライカーの陣容の中で、背負う期待は大きい。中盤との関わりから得点へ繋げるプレーを得意としており、そのポジションの主力が軒並み残留したチームにとって最後のピースとなり得る存在だ。
(C)Getty Images2022シーズンに3年ぶりのJ1リーグ制覇を果たした横浜F・マリノス。2023シーズンは連覇を目指すこととなるが、成熟のケヴィン・マスカット監督体制3年目に向けて補強はピンポイントにとどまった。即戦力級ではFW植中朝日やMF井上健太、DF上島拓巳と才能を開花させつつある選手たちを迎えている。一方でレオ・セアラ、仲川輝人、岩田智輝と重要な戦力を放出。中盤の練度や競争力の高さは変わらないが、特に攻撃面をどのようにオーガナイズしていくかに注目が集まる。
■注目選手 | FW植中朝日
生年月日:2001年11月1日
昨季成績:J2リーグ28試合5得点、天皇杯1試合出場
JFAアカデミー福島育ちの植中は2020シーズンにV・ファーレン長崎でキャリアをスタートさせ、2022シーズン後半から出場機会を増やすと、J2リーグ19試合10得点を記録してブレイクを果たした。複数の元日本代表ストライカーや元横浜FMのエジガル・ジュニオなど強烈なFWがひしめいた長崎で切磋琢磨して実力を磨いており、偉大な先輩たちから「いいとこ取り」できているとの手応えも口に。憧れの選手にフェルナンド・トーレス氏を挙げている通り、巧みな動き出しやゴール前での嗅覚を備える。長崎でも周囲とのコンビネーションを徐々に向上させていったが、横浜FMでも適応を経て輝きを放つことが期待される。
(C)Getty Images昨季のJ2リーグを2位で終えて1年での昇格を果たした横浜FCでは、四方田修平監督が続投。新シーズンに向けては複数のベテランがチームを去った一方、MF三田啓貴、MF井上潮音、DF吉野恭平などの即戦力を初め、海外でのプレーも経験したFW小川慶治朗やFW新井瑞希など、計20名の新戦力を加えた。残留を目標に掲げるシーズン、ポテンシャルは十分に秘めており、多くの選手をチームに融合させていく指揮官の手腕が問われることとなる。
■注目選手 | MF三田啓貴
生年月日:1990年9月14日
昨季成績:J1リーグ16試合、ルヴァン杯5試合1得点
チームで最もJ1リーグでの経験が豊富な選手の一人である三田。残留に向けては絶対的なエースである小川航基が得点力を示すことは不可欠であり、チャンスメイク能力に長けた三田とホットラインが築けるかどうかはキーポイントだ。また、小川以外にも快速の伊藤翔や山下諒也と動きを合わせることができれば、どのチームにとっても簡単には守ることができない攻撃を繰り出すことができる。
(C)Getty imagesハードワークをベースとするスタイルを継続している湘南は2022シーズンを12位で終了。失点数がリーグで5位番目に少ない堅守を構築した一方、ワースト4位の得点数が課題となった。そして、新シーズンに向けては期限付き移籍加入していたGK谷晃生がG大阪に帰還。その他にもMF瀬川祐輔やMF米本拓司、FWウェリントンらが別れを告げた一方、韓国代表GKソン・ボムグンを初め、MF小野瀬康介、MF永木亮太、FW山下敬大と実績豊富な選手たちを的確に加えている。昨年に引き続き5位以上を目標に掲げる中、堅守をそのままに残留したFW町野修斗やFW若月大和ら気鋭攻撃陣のポテンシャルをどう開花させていくかがポイントだ。
■注目選手 | MF小野瀬康介
生年月日:1993年4月22日
昨季成績:J1リーグ26試合3得点、ルヴァン杯2試合、天皇杯1試合出場
2018年から過ごしたG大阪に昨季限りで別れを告げた小野瀬。今年4月に30歳となるアタッカーはキャリア当初より攻撃性能で注目を集めてきたが、経験を積むごとにハードワーク面でも成長し、どのチームにとっても重宝されるような存在となった。特に湘南のサッカーに合致するスタイルであり、素早い切り替えから推進力を発揮するプレーは重要な武器となる。万能型FWである町野との連係を早期に深めることができれば、得点力不足を打開するうえでのキーマンとなりそうだ。
(C)Getty Images6年ぶりのJ1に挑む新潟。J2を席巻したポゼッションサッカーを継続すべく、現存戦力の残留を第一に努め、退団者は3人に抑えた。新戦力は4人と、激戦必須であるJ1の舞台において選手層を上積みし切れなかった印象はあるものの、その反面で戦術浸透度はカテゴリーが1つ上がろうとトップクラス。昨年9月、右ヒザを負傷して長期離脱中となっている高木善朗が戻るまで、J2では圧倒的存在感を放った三戸舜介が新たな戦場でも同じような活躍が出来るか。そしてなによりも、どのような結果にも左右されず、スタイルをブレずに貫き通すことが鍵となるだろう。旋風を巻き起こせるか。
■注目選手 | DF新井直人
生年月日:1996年10月7日
昨季成績:J2リーグ38試合2得点、ルヴァン杯3試合、天皇杯1試合出場
C大阪から加入したDF新井直人。2020年以来、4年ぶりの古巣復帰を果たした。昨季はC大阪からのレンタルで徳島ヴォルティスに加入し、主力としてプレーし、38試合に出場した。失点リーグ最少タイに抑えるなど、攻守において重宝された。両サイドで質の高いプレーができるのも売り。同じく高クオリティのポゼッションサッカーを戦術とする徳島で、戦術理解度を向上させた。一回りも二回りも大きくなって帰ってきた。
(C)Getty Images長谷川健太監督体制2年目を迎える名古屋。勝負の年となるであろう今シーズン、柿谷曜一朗やレオ・シルバなどの複数主力選手含め、10人以上を放出して新たな血を求めた。各ポジションに即戦力となる選手を加え、全体的な選手層に均一感を持たせた印象だ。チームをけん引してきた日本代表の相馬勇紀が欧州へ旅立ったことで攻撃面に不安を感じさせないよう、浦和からキャスパー・ユンカーを補強。タイプは違えど、得点力のあるストライカーを確保した。攻撃を司るマテウスとの相性が合えば、リーグ最小失点を誇る守備に加え、新たな武器を兼ね備えることとなる。戦力が順当にハマれば、上位入りも充分狙えるはずだ。
■注目選手 | FWキャスパー・ユンカー
生年月日:1994年3月5日
昨季成績:J1リーグ21試合7得点、ルヴァン杯3試合出場
1番の目玉は間違いなくユンカーだろう。浦和では来日1年目からJ1リーグで21試合9ゴール、ルヴァンカップで6試合4ゴール、天皇杯で5試合3ゴールと得点を量産。2年目となった昨季はケガに悩まされ出番が減少。それでもJ1では21試合7ゴール、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)では6試合で4ゴールを記録するなど、高い決定力を誇る。また、サンフレッチェ広島から加入した野上結貴にも注目だ。昨季途中から3バックに布陣を変更した名古屋にとって、広島で同ポジションを務めていた野上には即戦力としての期待が集まる。
(C)Getty imagesJ1昇格年となった昨シーズンは、取りこぼしの多さが響いてJ1参入プレーオフを戦うことに。死闘を制してなんとか残留を決めた。心機一転望む今シーズンだが、絶対的エースであったピーター・ウタカと絶対的守護神であった上福元直人が退団。大きな痛手となるも、それぞれのポジションで着々と補強。ウタカの代役としてG大阪からパトリックを獲得出来たのは、かなり大きいだろう。さらに、一美和成、木下康介などの個性的なFWも加わり、リーグワーストとなった得点力不足の解決に向けてテコ入れした。厚くなった選手層をどう使っていくか、曺貴裁監督の手腕が問われるシーズンに。
■注目選手 | GKヴァルネル・ハーン
生年月日:1992年6月15日
昨季成績:2022-23シーズンは出場記録なし(21-22シーズンはエールディビジ19試合、スウェーデン1部26試合出場)
絶対的な守護神・上福元直人の後継者候補としてヴァルネル・ハーンを獲得。オランダ1部リーグなどでのプレー経験のある選手だ。ハイラインを敷く京都の戦術にハマれば、上福元の抜けた穴は埋められるだろう。そしてFWには言わずもがなJ1での経験が豊富なパトリックを獲得。ウタカ依存性に苦しんだ昨季の反省から一美和成や木下康介など、様々なタイプのストライカーも加え、既にパウリーニョやイスマイラら個性的な選手溢れるアタッカー陣がさらに豪華に。攻撃に新たなエッセンスを取り入れられるか。
(C)Getty Images2年連続で残留争いを戦い、不遇の時期を過ごすG大阪。現状を打破すべく迎え入れたのは、徳島で完成度の高いポゼッションサッカーをまとめあげたダニエル・ポヤトス監督だ。さらに、GKには谷晃生が復帰。MFにはイスラエル代表のネタ・ラヴィ、FWにはカタールW杯にも出場したチュニジア代表のイッサム・ジェバリなど、大型補強を続々敢行。既に実力派が揃う現存戦力と即戦力だらけの新戦力、そしてポヤトス流の戦術が見事融合し、チームの歯車が合えば上位進出も充分に有り得る。
■注目選手 | GK谷晃生
生年月日:2000年11月22日
昨季成績:J1リーグ31試合、ルヴァン杯4試合出場
谷晃生が満を持してG大阪に帰ってきた。期限付き移籍先の湘南で着々と成長し、東京オリンピックやA代表を経験。東口順昭が絶対的守護神として君臨する中、し烈なポジション争いが繰り広げられそうだ。ラヴィは今季マッカビ・ハイファの主将としてチャンピオンズリーグ(CL)にも出場。パリ・サンジェルマン(PSG)が同組におり、リオネル・メッシやネイマールらとしのぎを削った。そして鍵となるのはカタールW杯にも出場したチュニジア代表のジェバリ。W杯前の日本代表との親善試合でも得点を挙げるなど、名刺は既に提出済み。Jの地で爆発なるか。
(C)GOAL小菊昭雄監督就任3年目となる今季。昨季はJ1リーグ5位、ルヴァン杯準優勝、天皇杯ベスト8…またも目標であったタイトルには届かなかった。タイトルに燃える今季は大型補強を実施。得点力不足という課題を解決すべく、王者・横浜FMで2年連続2ケタ得点を挙げたレオ・セアラの獲得に成功した。そしてラストピースとして、香川真司が古巣に復帰。昨年11月に手術を受けたことでコンデションに不安はあるものの、その実力は折り紙付き。現存戦力のタクトを振るう中心となれば、どの対戦相手も苦しむことは間違いないだろう。タイトル獲得への準備は整った。
■注目選手 | MF香川真司
生年月日:1989年3月17日
昨季成績:ベルギーリーグ12試合2得点(2022-23シーズン)
世界で名を馳せたスターが12年半ぶりに桜色のユニフォームを身に纏う。クラブの象徴である『8』を背負うこととなった香川は、この12年半に間にブンデスリーガ2連覇やマンチェスター・ユナイテッドでのプレーなど、黄金のような経験を積んで戻ってきた。長年日本のエースとして君臨した所以を、キャリアスタートの地で示すことは出来るか。「自分の過去に目を向けて期待されるのは理解しているけど、今の自分を最大限に表現して、もっと成長したい」と、本人も意気込んでいる。
(C)Getty images前半戦の大半を降格圏で過ごし、期待外れの出来となった昨シーズン。なんとかチームを建て直した吉田孝行監督の下で新たなシーズンを迎える。アンドレス・イニエスタや大迫勇也、山口蛍ら現存のビッグネームは残留。小林友希のセルティックに移籍や槙野智章の引退、飯倉大樹が退団するなど守備陣に多少の不安は抱えるものの、中盤やアタッカーに個性的な面々を補強。東京ヴェルディから井出遥也、G大阪から齊藤未月が加わり、川﨑修平がポルトガルから凱旋、C大阪からジェアン・パトリッキが加入した。新戦力が上手くハマれば、上位を狙えるはずだ。
■注目選手 | FW川﨑修平
生年月日:2001年4月28日
昨季成績:ポルトガルユースリーグ8試合2得点(2022-23シーズン)
突如ポルトガル1部のポルティモネンセからやってきた川崎修平は、21歳のウインガー。G大阪ユース出身で、ドリブラーとして頭角を現して2020年にトップチーム昇格。当時19歳ながらJ1リーグで通算18試合に出場した。ポルティモネンセではリザーブチームで主にプレーし、通算18試合2得点を記録。G大阪在籍時にはAFCチャンピオンズリーグでトップチーム初得点を含むプロ入り初のハットトリックを決めるなど、秘めたる才能は充分。神戸の起爆剤となれるか。
(C)Getty ImagesJ1リーグ3位、天皇杯準優勝、ルヴァン杯優勝という充分な手ごたえと結果を残したミヒャエル・スキッべ監督体制初年度となった昨シーズン。藤井智也や野上結貴らユーティリティ溢れる戦力が抜けたのは手痛いが、それでもスカッドは充実。ドイツ時代から育成に定評のあるスキッべ監督が、才能溢れる広島の若手選手たちを開花させたように、今シーズンも新たなブレイク候補たちの活躍に期待がかかる。新戦力では左サイドのスペシャリスト、志知孝明がアビスパ福岡から加入。攻撃面ではさらなるバリエーションが加わることとなった。ACL含めタイトル獲得という結果を残せるか。
■注目選手 | DF志知孝明
生年月日:1993年12月27日
昨季成績:J1リーグ33試合、ルヴァン杯6試合、天皇杯1試合出場
広島に新たな風を吹き込む戦力として期待される志知。足立修強化部長も「左サイドのスペシャリスト」として期待を寄せている。松本山雅FCでデビューを果たし、福島ユナイテッドFCや水戸ホーリーホック、横浜FCと昨季まで所属していた福岡を渡り歩いた苦労人でもある。持ち味は左足のクオリティの高さ。クロス、ロングフィードだけでなく、ミドルシュートも持ち合わせ、左サイドからゴールに直結するプレーをすることが可能。手薄だった左WBに貴重な人材が加わった。
Getty ImagesJ1リーグ14位と不完全燃焼に終わった長谷部茂利監督体制2年目の昨シーズン。さらなる飛躍へ現体制を継続して3年目を迎える。変わらず堅守を武器に戦うこととなるが、サイドから攻撃の起点となっていた志知孝明が広島へ、ジョルディ・クルークスがC大阪へとそれぞれ移籍。両サイドに穴埋めとして亀川諒史や紺野和也らが加わったが、多少の不安は残る。一方で、軸となるセンターラインにセルティックから井手口陽介がサプライズ加入。日本代表としての実績を持つ同選手を迎え入れることが出来たのは、プラスアルファ以上にチームの戦いに影響を与え得る可能性を秘めている。
■注目選手 | MF井手口陽介
生年月日:1996年8月23日
昨季成績:2022-23シーズンは出場記録なし(21-22シーズンはスコティッシュ・プレミアシップ3試合出場)
開幕が近づく中、層の薄かった中盤に期待以上の新戦力がやってきた。元日本代表MF井手口陽介。G大阪ユースから14年にトップチームに昇格し、17年に欧州へ。スペイン2部レオネサやイングランドのリーズ、ドイツのグロイターフュルトで経験を積んで19年にG大阪に復帰。日本代表でも一時スタメンとして活躍し、昨冬にセルティックへ移籍して欧州に再挑戦した。しかし、出場機会を殆ど得ることが出来ないままJリーグに復帰することに。勝負の1年となる今シーズン、福岡の地で自身の真価を示せるか。
(C)Getty Images昨シーズンは主力選手が大量に抜け、不安を抱えながらスタートしたものの、組織的なサッカーを軸とする川井健太監督の戦術が大ハマり。一時は上位に浮上する快進撃を見せた。さらなる飛躍に期待がかかる今シーズンは、主力での退団選手を小泉慶とジエゴの2人にとどめてリセットを回避。その中で樺山諒乃介や内山圭などのブレイク候補、富樫敬真という即戦力を加えられたことはプラス。なによりもブレイクを果たした岩崎悠人が去らず、期限付き移籍から完全移籍に移行したのは大きいだろう。昨年の積み上げからブラッシュアップが目指せるスカッドを揃えた今シーズン、注目筆頭だ。
■注目選手 | MF樺山諒乃介
生年月日:2002年9月17日
昨季成績:J1リーグ7試合、J2リーグ15試合、天皇杯2試合出場
今シーズン、Jリーグの中でも特にブレイク候補として期待が集まる樺山諒乃介。2021年2月26日のJリーグオープニングマッチで、高卒ルーキーながらもスタメン出場を果たした逸材だ。その後は武者修行という形でモンテディオ山形へレンタル移籍し、同クラブでも独特な世界観を持つドリブルやテクニックで存在感を発揮。王者横浜FMの壁は高く、活躍の場を求めて移籍することにはなったものの、潜在能力は抜群だ。