Trent Alexander-Arnold Liverpool 2022-23Getty Images

アレクサンダー=アーノルド問題:天才か?それともお荷物か?見えない成長と欠かせない武器

リヴァプールのチャンピオンズリーグ(CL)敗退を受け、再びトレント・アレクサンダー=アーノルドにスポットライトが当てられている。『これまで通り』と言えるかもしれない。この24歳は、どうやら世界中で類を見ないほどに意見を二分する選手であるようだ。彼は天才か? それともお荷物か?

レアル・マドリーとのセカンドレグは、たしかに後者にも見えた。サンティアゴ・ベルナベウでは多くの難題が持ち上がったが、その1つがアレクサンダー=アーノルドの役割、そしてオールラウンダーとしての彼の成長である。『CBS Sports』で取材していたレジェンド、ジェイミー・キャラガーは「守備面は物足りない」と断言。あまりにも弱点が目立っており、この夏にも右サイドバックを獲得して競争と刺激を与える必要があると話した。

だが、実現するかは別問題だ。リヴァプールは次の移籍市場で中盤の大改革を狙っており、ジュード・ベリンガムやメイソン・マウントらの獲得に予算の大半を割いていることはもう知られている。

とはいえ、アレクサンダー=アーノルド問題は解決すべきものでもある。そしてその議論は今後も続いていくことだろう……。

取材・文=ニール・ジョーンズ(『GOAL』リヴァプール番記者)

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    見えない成長の兆し

    アレクサンダー=アーノルドの弱点を指摘し続けるのは、正直なところ少しばかり酷なことだ。リヴァプールの多くのチームメイトも苦しんでいる。そこには、彼の尊敬するフィルジル・ファン・ダイクやファビーニョ他、アンディ・ロバートソンにジョーダン・ヘンダーソンも含まれる。モハメド・サラーですら好不調の波が激しい。

    だが、その中で最も批判されるのはアレクサンダー=アーノルドだ。同世代で最も才能に溢れ、成功したゆえの功罪かもしれない。友人ロバートソンは『BBC』で「特にイングランド人選手はすぐに褒め称えられ、そしてすぐに非難される。どんなフルバックでも弱点はあるし、調子を落とす時もあるよ。彼への批判は行き過ぎだし、理由もよくわからない」と擁護している。

    ここで改めて考えてみると、彼がアンフィールドに立った時点から、議論されている問題は明らかだった。10代後半になって中盤から右サイドバックへコンバートされたばかりであり、当然のようにボールを持っているときの方が快適だ。それゆえに、マーカス・ラッシュフォードやジャック・グリーリッシュといったサイドバックの弱点をことごとく突いてくる一流のウインガーと対峙すると問題が発生する。彼への批判の多くは、ポジショニングによるものだ。だがそれは主に、攻撃時に影響を持つために高い位置でプレーすることが要求されているリヴァプールの問題に起因する。

    だがそれよりも心配なのは、ボールへチャレンジする際のインテンシティの欠如、ペナルティーエリアやその周辺での危機察知能力の低さだ。どんなに優れた選手であれ、こうしたことがチームを犠牲にする。だから厳しい視線を浴びることになるのだ。

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    リヴァプールに欠かせない武器

    選手とはコインの表裏のように、長所と短所が共存する。アレクサンダー=アーノルドの場合、リヴァプールで彼以上にボールプレーで影響を及ぼす選手はほぼいない。現チームの多くのプレーは彼を経由しており、オープンプレーでもセットプレーでもペナルティーエリアにボールを届け、左右両方からピッチを切り開き、深い位置からでも良質なボールを前方へ届ける。それは彼のアシスト数、チャンスメイク数など統計に表れている。

    もし彼がいなかったら、今のリヴァプールはどんなに寂しいチームだっただろう。以前ポジションを争っていたナサニエル・クライン(現クリスタル・パレス)は堅実で安定したプレーを見せていたが、彼だけではユルゲン・クロップのチームは今のような高みには到達できなかった。

    アレクサンダー=アーノルドという武器は、今でも必要なのだ。問題はむしろ「彼の短所をいかに最小限に抑えるか」ということである。

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    ポジション争いという考え方

    ではキャラガーが指摘するように、ポジション争いが必要なのだろうか?

    今季は彼の代わりにジェームズ・ミルナーやジョー・ゴメスが起用されたことを考えると、答えは「イエス」だ。だが、昨夏に右サイドバックを補強していることを忘れてはならない。アバディーンからカルヴィン・ラムゼイが加わっている。その一方で、ネコ・ウィリアムズをノッティンガム・フォレストへ放出もしている。

    だがラムゼイのファーストシーズンは、負傷によって壊滅的に。未だ2試合のプレーのみであり、さらに先月のトレーニングで負った負傷によって復帰は7月以降になりそうだ。リヴァプールとしては、この19歳のポテンシャルに自信を持っているが、まずはコンディションを整えることが最優先。今シーズンの彼の欠場は、残念ながらここまで目立っていない。戦力になっていないことも確かではある。

  • Trent Alexander-Arnold Harvey Elliott Liverpool Real Madrid Champions League 2022-23Getty

    見て見ぬふりをする別の問題

    アレクサンダー=アーノルドに話を戻そう。彼とリヴァプールは、契約状況の点で正念場を迎えていることも指摘すべきだろう。2021年7月に結んだ現行契約は、来夏で残り2年となる。そのため、今後数ヶ月内に新契約交渉がスタートすることが予想される。

    もちろん、リヴァプール側に地元出身で最も輝かしい選手の1人と売却するつもりはない。だがこの話がどのように進展するのか、多くのトップクラブが注視しているだろう。例えば、レアル・マドリーは彼のような選手を欲しがるだろう。

    本人はこれまで、キャリアの大半をリヴァプールに捧げると公言している。彼のヒーローであるスティーブン・ジェラードと同じようなレガシーを築きたいと語っている。24歳までに獲得し得るすべてのタイトルを手にし、数え切れないほどの素晴らしい思い出を作り上げた彼は、すでにその道は歩んでいるだろう。

    今年中のどこかで新契約に合意するだろう、というのが賢い見方だ。クロップとリヴァプールは、彼がこの試練の時を乗り越えられるようにサポートし続けている。再び世界最高の選手の1人として、その地位を確かにするまで……。