ファジアーノの躍動が岡山県全体を盛り上げた。そんな1年だった。2024年J2・5位からJ1昇格プレーオフを勝ち抜き掴み取ったJ1の舞台。チームはどう戦い、街にはどんな変化が起きていたのか。クラブが誕生してから22年目のシーズンを振り返り、その次を展望する。(取材・文=難波拓未)
©J.LEAGUE/Getty Images岡山のサッカー文化を前進させたシーズン。臙脂色の雉がJ1元年で醸成した“うねり”
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©J.LEAGUE/Getty Images注目度の高さがチーム成績と呼応
岡山のサッカー文化を、確実に前進させた1年だった。
川崎製鉄水島サッカー部のOBたちが結成した「リバーフリーキッカーズ」が母体となり誕生してから22年目。J1リーグを初めて戦うファジアーノ岡山に、岡山の街は大きな関心を寄せ続けた。
開幕前にはシーズンパスが完売し、ファンクラブ会員数やユニフォーム販売枚数もかつてないほど増加。スポンサー収入も倍増し、2025年の営業収益は5カ月の段階で前年に迫る数字を記録した。
チームは注目度の高さを原動力に躍動する。第1節で京都サンガF.C.に勝利。ハイプレスと縦に速い攻撃といったJ1昇格を成し遂げたスタイルを全面に出し、満員のスタジアムで歴史的な1勝を挙げた。その後、開幕から10試合で5勝2分3敗と勝ち越し、ホームゲームでは6試合負けなしを記録。
特にオリジナル10として日本サッカーを牽引してきた横浜F・マリノスをホームでの初対戦で撃破したことは、岡山県民に大きなインパクトを与えた。夕方のテレビニュースで一斉にお茶の間に報じられると、関心が薄い人も、「あのマリノスに勝ったのか」と驚くほど話題になった。
未踏の地だったJ1に対して臆するのではなく、自分たちを「20番目のスタート」(木山隆之監督)と位置付け、「最強のチャレンジャー」として勇敢に立ち向かっていく。共通認識を深めたチームはスタートダッシュに成功し、ピッチ内外にあった「初めてのJ1で自分たちはやれるのか」という不安を力強く吹き飛ばした。
絶対的なボランチのMF藤田息吹も、序盤戦の戦いで大きな手応えを得ていた。
「開幕前はここまで行けると思っていなくて。本当に厳しい試合になるだろうとイメージしていました。自分は(松本)山雅(FC)でJ2を優勝して、2019年にJ1を戦いましたが、当時は1年で降格した。そういう経験があったので、すごく厳しいシーズンになると思っていました。でも、序盤戦は特にホームで勝てて、その後は広島に対してJ1でのアウェイ初勝利ができて、その辺りからホームでもアウェイでも自分たちの戦いができるんじゃないかなという手応えを持てるようになりました」
©Getty Images/J.LEAGUE勝てなくてもチケットは売れ続けた
下剋上を見せてきたファジアーノだったが、シーズンが進むにつれて難しい戦いを強いられた。コンディション不良やケガ人の発生によって選手層で後手に回り、弱点を徹底的に突かれる。4月下旬から5月上旬は6試合未勝利で、8月末から11月末は10試合未勝利と、J1の厳しさを痛感させられる時期も過ごした。
それでも、チームは一体感を持って勇敢に立ち向かっていくことをやめなかった。全員で難局を乗り越えようとする姿勢は、ファン・サポーターにも届き、ホームゲームのチケットは売れ続けた。
結果的にはクラブ史上初となる全試合ホームエリアチケットの完売を達成。アウェイ席も即完売が当たり前。第37節の浦和レッズ戦は、販売開始から5分で売り切れた。1年を通した平均収容率94.2%は、J1平均(64.8%)を大きく上回り、Jリーグ全60クラブの中で1位だった。
0-5で大敗した第28節アウェイ京都戦をはじめ望んだ結果を得られなくても、12番目の戦士たちはブーイングではなく、「次がんばろう」「もっとやれるぞ」と前向きな言葉をかけ続けた。「苦しい時も辛い時も嬉しい時も楽しい時もどんな時も、俺たちがついてる」。そのチャントを体現するような後押しは、選手たちの使命感に刺激を与え、闘争心に火を灯し続けた。
直筆メッセージで選手それぞれの想いを届ける「CLIMAXメッセージグッズ」に、江坂任は「たくさんの愛をありがとう!」と記した。加入初年度でチームをけん引してきた背番号8に、その真意を尋ねると笑みをこぼした。
「ホームは全試合完売ですし、アウェイゲームにもたくさんの方々が来てくれていることは知っています。応援のすごさは感じていたし、すごくありがたかったです。それこそ、不甲斐ない試合の後でも、『それを次に繋げてくれ』という応援をしてくれました。1年を通して熱く応援しながら、チームの成長を見守ってもらえたので、すごく感謝しています」
©J.LEAGUE/Getty Images経済波及効果は年54億円見込み
キャプテンの竹内涼は、スタジアムが満員になることを「当たり前ではない」と表現する。
「満員のスタジアムやチケット完売が毎試合続くことは、当たり前じゃないので。来てくれている方に感謝しますし、その中でプレーできるのは一人のサッカー選手として幸せなこと。来年以降もそういう状況になるように頑張りたいです」
チームとファン・サポーターが相乗効果を生み出しながら熱狂を作ってきた1年だったが、盛り上がったのはスタジアム内だけではなかった。
スタジアムから徒歩20分圏内にあるJR岡山駅は、試合日にファジアーノ一色となった。フォトスポットが誕生し、クラブのポスターを模倣した掲出物も登場。駅直結の商業施設はサッカーファンで膨れ上がり、お土産や弁当が売り切れる事態にも発展した。
スタジアム周辺のホテルが週末はアウェイサポーターでほぼ満室に。岡山城や後楽園など市内の観光地はもちろん、倉敷美観地区や児島のデニムストリートといった市外のスポットにもアウェイサポーターが訪れ、ファジレッド以外のユニフォームを着て散策する人の多さに驚く声も聞こえた。J1昇格後の経済波及効果は年54億円になる見込み。J2時代と比較すると23億円が増加することになり、その盛り上がりは確実に県全体に広がっていった。
©J.LEAGUE/Getty Images試合を見たくても見られない…新スタジアムの必要姓
J1元年で醸成した“うねり”を発展させるには、新スタジアムの建設が必要不可欠だ。現在のホームスタジアム、JFE晴れの国スタジアムは、陸上競技場ながらファン・サポーターが作る温かい一体感を感じられる場所で、その雰囲気は他のJ1のスタジアムと比較しても誇らしく思えるほど。だが、入場可能数15,479人では今の盛り上がりを受け止めきれていないことも事実。スタジアムで試合を見たくても見られない人が多く存在している。
それは将来を担っていく子どもたちも例外ではない。「子どもたちに夢を!」という理念とともにクラブを創設し発展させてきた木村正明ファウンダー・オーナーは、岡山の子どもたちにいつでも誰でも日本最高峰のサッカーを見せることができていない現状に悔しさを口にしている。映画館や商業施設、敷地内にある補助陸上競技場などでもパブリックビューイングを開催してきたが、より多くの人たちにスタジアムでの観戦体験を提供するためには新スタジアムの誕生が欠かせない。
岡山の街と肩を組んで戦った初めてのJ1リーグを13位でフィニッシュし、来年以降もトップリーグへの挑戦権を勝ち取った。J1昇格とJ1残留を達成し、次はJ1定着へ。そして、サッカーが岡山の文化となるように。臙脂色の雉は挑み続ける。
【動画】晴れスタの雰囲気を動画で見る

