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マンチェスター・Uでは戦力外も…ラッシュフォード、バルセロナでスタメン争うポテンシャルあり?

「ここ2年の彼の実績を考えれば」——。バルセロナの関心報道が浮かんだとき、そうリオ・ファーディナンドが強調したが、その言葉通り、多くの人にとって驚きを誘った移籍と言えよう。マンチェスター・ユナイテッドでは2023年夏に週給32万5000ポンドの新契約を掴んだが、そのクラブの期待を裏切るようなパフォーマンスが続くからだ。

その末路として、昨年11月から新監督としてチームを指揮するルベン・アモリムは着任からわずか1カ月あまりで構想外に。そうしてこの夏を迎えたわけだが、レンタル先のアストン・ヴィラで上向き調子の活躍ぶりを披露してもなかなか買い手が見つからない状況だった。

だが、ここにきてバルセロナが動き、3000万ポンドの買取オプションを伴うレンタルでマンチェスター・Uと合意。マンチェスター・Uからすれば、買取オプションの額は選手の現状的にベストと言えるだろうし、レンタルに関しても売却がより望ましかった一方で、高額なサラリーのカットに成功した。

そんなラッシュフォードのバルセロナ行きを巡ってはベンチウォーマーとしての移籍というのが大方の見方だが、果たしてそうだろうか。バルセロナにとって掘り出し物となりうるポテンシャルを秘め、来年の今頃、完全移籍に発展している道筋もありそうだ。

  • Tottenham Hotspur v Manchester United - Premier LeagueGetty Images Sport

    「世界でも5本の指に入る選手の1人」

    移行期ともいえるこの10年間にわたり、数多くのミスを犯したマンチェスター・Uにとって、ラッシュフォードとの高額を伴う契約延長はその1つだろう。

    ラッシュフォードは契約延長に至る前の2022-23シーズン、マンチェスター・Uで個人のキャリアでも最高に得点力を輝かせ、あのロビン・ファン・ペルシー以来の公式戦30ゴールをマーク。当時の指揮官だったエリック・テン・ハーグしかり、チームメイトしかり、観る者から「アンストッパブル」との言葉がよく使われるほどの活躍ぶりだった。

    2022年夏加入のカゼミーロはマンチェスター・Uに来て、ラッシュフォードの素晴らしさを知った選手の1人で、当時のブラジル版『ESPN』で「僕的にはピッチ外での人柄を知っているからこそ、彼は調子が良ければ世界でも5本の指に入る選手の1人になれると断言できる」と主張している。

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  • Leeds United v Manchester United - Premier LeagueGetty Images Sport

    「40発を決めるだけの力がある」

    カゼミーロの主張は2022年ワールドカップでの姿からしても大袈裟なものではなく、グループステージの3試合で3ゴールと大活躍。当時のイングランド代表を率いたギャレス・サウスゲイトが後の決勝トーナメントで先発起用しなかった際はイングランドのファンが困惑するほどだった。

    当時に限れば、キリアン・エンバペと肩を並べるだけの力があるように感じられたし、テン・ハーグからはさらなる大化けを期待する声も。2023年5月には働きぶりに満足感を示しつつ、「今こそより頑張らないとね。1シーズンで40ゴールを決めるだけの力があるのだから」との言葉を残している。

    だが、そんな期待も裏腹、過去2シーズンでのゴール数はアストン・ヴィラでの4得点を含めても、たったの「19」。それこそが今回のバルセロナ行きを巡って懐疑的な見方が広がる理由だが、移籍先に視点を移せば、スポーツ面でも、経済的にも真っ当な取引だった。

  • Borussia Dortmund v 	FC Barcelona - UEFA Champions League 2024/25 Quarter Final Second LegGetty Images Sport

    バルセロナにとって待望のサイド強化

    今夏にサイドアタッカーの獲得を目指したバルセロナは当初、ニコ・ウィリアムズか、ルイス・ディアスのいずれかをとのプランで模索。ラッシュフォードはリストの3番手だったが、移籍金をかけずに補強でき、指揮官のハンジ・フリックにとってもスタメン入りの余地があるとみられる。

    というのも、ラッシュフォードの加入はハフィーニャのトップ下起用など、フリックのプランが広がる一手で、筋肉系のトラブルが多々あったダニ・オルモの負担をコントロールしていく点でも効果が期待できるからだ。

  • FBL-ESP-LIGA-BARCELONA-REAL MADRIDAFP

    CFラッシュフォード

    ラッシュフォードがバルセロナでレギュラー化していく上でいくつかのポジションをこなせる点も武器になるかもしれない。過去に前線でのプレー歴がある点はもうじき37歳になるロベルト・レヴァンドフスキを休ませたい場合のオプションになりそうだ。

    もちろん、昨季の公式戦で19ゴールをマークしたフェラン・トーレスも引き続きレヴァンドフスキの代役としてオプションになってくるはずだが、ラッシュフォードの加入は間違いなくフリックにとって9番ポジションにさらなる選択肢が増えたことを意味する。

  • FBL-EUR-C3-MAN UTD-TRAININGAFP

    バルセロナにとって新たな色を持つ選手?

    バルセロナの構想はラッシュフォードが最も得意とする左サイドでの起用で間違いないだろうが、ファーディナンドも自身のYouTubeチャンネルで指摘するように、かつての輝きを取り戻せば、バルセロナの攻撃に新たな風を吹き込む存在になれるかもしれない。

    「ラッシュフォードのプレースタイルはここ2年で変わった。よりドリブルで仕掛けていくようになっている。だが、彼が相手にとって最も厄介だったのは背後を狙っていくのを厭わなかったからだ。それを適切にやれ、一貫性も伴ってきたら、魔法がかったプレーをするはずだ」

    「そうなれば、あのバルセロナに違いをもたらす存在になりうる。ハフィーニャは背後を突いていく選手ではなく、足もとにボールを呼び込むのを好む。ラミン・ヤマルも足もとにボールが入ってから仕掛けていくタイプだ」

    「レヴァンドフスキに関してはもはや背後への走り込みができる選手ではなく、よりターゲットマン的であり、フィニッシャーだ。だから、フリックからは『また違うものを見せてくれ』と言われるだろうね」

    「左にハフィーニャ、前線にレヴァンドフスキ、右にヤマルがいるチームだし、ラッシュフォードが常時スタメンというわけにはいかないだろう。だが、インパクトを残せる力があるし、それをきっかけに出番を増やしていけるはずだ」

    「だから、彼を誰かの代わりとして使う必要なんてない。あのチームに付加価値をもたらすためにプレーすればいい」

  • Marcus Rashford 2025Getty Images

    「すべては彼次第」

    一方で、マンチェスター・Uで問題視されたプロとしての振る舞い、規律、仕事への取り組み方はバルセロナに行っても懸念事項に。クラブOBのポール・パーカー氏は『GOAL』の独占インタビューでマンチェスター・Uでのラッシュフォードについて「彼にはボクサーよりも多くの取り巻きがいる。チームは選手としての彼を求めているかもしれないが、彼の周囲環境は求めたものではない」と語った。

    また、テディ・シェリンガム氏からはこのバルセロナ行きについて「魂を破壊するもの」とし、この移籍を果たすにしてもそれに値するほどの活躍をしていないとの厳しい声が飛ぶが、今のラッシュフォードにとって最も大事なのはこの予期せぬチャンスを生かせるかどうか、だ。

    そのなかで、ラッシュフォードに興味深いのはこの移籍を実現させるためにサラリーの減額を受け入れたということ。そこにはこのバルセロナ行きを逃したら、ワールドクラスのポテンシャルを示すチャンスはもうないという思いが本人のなかにあるからではないだろうか。

    「僕からしたら、彼は素晴らしい選手。彼なら何にでもなれる。すべては彼次第」——。リサンドロ・マルティネスが2023年のイギリス『スカイ・スポーツ』でラッシュフォードについてそう話してからもう2年が経つが、当時も、今もこの言葉の意味は変わらない。

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