e-1-japan(C)Kenichi Arai

E-1連覇に導いた“オール国内組”、爪痕を残したのは? フル代表入り→W杯行きへアピールした厳選5選手

日本代表は“オール国内組”でE-1サッカー選手権に臨み、初の3連勝で2大会連続3度目の優勝となる連覇を成し遂げた。そのなかで、森保一監督のもう1つの狙いだった戦力の底上げという部分でも、招集された26選手全員がプレー。初招集の14選手を含む選手たちにとっては合流から準備期間が短く、いわゆる即席的なチームだったが、2026年ワールドカップ(W杯)のメンバー入りへ株を上げたのは誰か。爪痕を残した選手を5名に絞り、紹介する。

【取材・文=菊地正典】

  • e-1_japan-ryo-germain(C)Kenichi Arai

    FWジャーメイン良(サンフレッチェ広島)

    ■多彩なゴールパターンも光る

    大会得点王かつMVPとなった大会の主役を選出しないわけにはいかない。初戦の香港戦では胸トラップからの左足ボレー、ヘディング、ペナルティーエリアぎりぎりからの左足でのワンタッチ、ゴール前での右足ワンタッチ、さらに優勝決定戦となった最終戦の韓国戦ではクロスを左足でダイレクトボレーとあらゆるパターンでゴールを重ねた。

    FWの結果は調子に左右される面が大きく、それだけに今後の代表活動、ひいてはW杯の直前に好調であればラストピースとして招集される可能性もある。ジャーメインもどちらかと言えば当たり外れがあるタイプではあり、広島でチームメートの荒木隼人が笑いながらもメディアに対して「そんなに期待はかけないでくださいね。こっそり、こっそりで」とお願いしたが、のびのびとプレーすることができればW杯直前に“ヤマ“がきても不思議ではない。

  • 広告
  • e-1-japan-tomoki-hayakawa(C)Kenichi Arai

    GK早川友基(鹿島アントラーズ)

    ■「W杯行きてぇなー」

    今大会が代表初招集ながら、最も北中米W杯に近づいた選手と言えるかもしれない。GKは3人で1試合ずつの持ち回りとなり、出場したのは第2戦の中国戦に限られたが、1点リードで迎えた16分のピンチでビッグセーブ。相手との一対一の場面では距離を詰め、一度止まってからシュートに反応する様は幸運ではなく実力のセーブだと感じさせた。

    また、48分の相手の間を通した縦パスを筆頭にハイレベルなビルドアップやフィードも披露。A代表常連組と比較しても利がある武器でも存在感を発揮した。

    仮に第2GK、第3GKとなればサポート役としての振る舞いやアクシデントで急きょ出場機会が訪れた際の落ち着きなど、経験がものをいうことにはなるが、「W杯行きてぇなー」と感情を込めて話した早川が大迫敬介、谷晃生、鈴木彩艶の牙城を崩すことは十分にありえる。

  • e-1-japan-yuto-tsunashima(C)Kenichi Arai

    DF綱島悠斗(東京ヴェルディ)

    ■長友にピッチ内外でべったり

    6月のW杯予選での鈴木淳之介に続き、ボランチから本格的にコンバートされて1年ほどのセンターバックがインパクトを残した。出場は第2戦の中国戦のみだったが、守るべき場面をしっかりと守りつつ、構えるだけではなく積極的に奪いに行ってインターセプトを狙った。何より攻撃面では相手のプレスに対して適切なポジションを取りつつ、効果的な縦パスを通した。「Jリーグでは感じたことない緊張」を感じていたとは思えない、堂々たるプレーぶりだった。

    今回の活動では、父親からプレゼントされた本を読破して憧れた長友佑都にピッチ内外でべったり。冗談混じりで「うっとうしい」と言われるほどだったが、「サッカーとあれだけ向き合ったら38歳でもA代表のピッチでプレーできる。自分も日常から変えていきたい」と気持ちを高めた。今後のJリーグでも日々どんな成長を見せていくのか、注目だ。

  • e-1-japan-ryunosuke-sato(C)Kenichi Arai

    MF佐藤龍之介(ファジアーノ岡山)

    ■18歳とは思えぬ落ち着きとクレバーさ

    6月のW杯予選でA代表初招集、初出場を果たしていた18歳が、インドネシア戦に続いて今大会でもポテンシャルの高さを発揮した。表彰式では首からかけられたメダルを両手で持ってまじまじと見つめ、ニコニコしていた様子が18歳らしかったが、ピッチでは大人びていた。ボールを持てば攻撃のリズムを作り、攻守において状況を判断しながらプレーするクレバーさも見せた。26人中、3試合全てに出場した5人のうちの1人となり、右ウイングバックだけではなく左右のシャドーでもプレー。その起用法から森保一監督の期待の高さを感じさせる。

    「今の自分はW杯で活躍できるレベルには到底ない。もっともっとやらないといけない」。自己評価はからめだったが、伸びしろは十分。まずはU-20W杯、そしてロサンゼルス・オリンピックへと向かうことになるのだろうが、その間にA代表が優先となることも想像の範疇だ。

  • e-1-japan-sho-inagaki(C)Kenichi Arai

    MF稲垣祥(名古屋グランパス)

    ■プレー面だけでなくメンタル面でも強さ

    5人目は佐藤龍之介とは対照的にプロキャリアを12年も重ねているベテランを選んだ。今季のスタートから「選ばれるつもりというか、選ばせるくらいのところまで自分を引っ張っていく」ことを意識していた33歳は、2021年3月以来、4年4カ月ぶりのA代表の舞台でも躍動。初戦の香港戦では立ち上がりからフルスロットルでプレーし、ボールを刈り取る、あるいはセカンドボールを拾いながら前線につなげ、強烈なミドルシュートも決めた。3試合全てに出場し、全選手の中で最も多い225分間のプレー。リーダーシップも発揮し、チームを優勝に導いた。

    同じボランチでは川辺駿も技術や戦う姿勢を高いレベルで披露したが、海外組のボランチの層の厚さを考慮すれば、ピッチ内外でチームにいい影響を与えられる稲垣の方が来年のW杯出場には近いだろう。プレー面だけでなく、メンタル面も含めてそう思わせるほどの強さを見せた。