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アブデラ・ワザネ:16歳にしてレアル・マドリーも才能を認めるアヤックスの新たな逸材…“次のベリンガム”?【NXGN】

世界のフットボール界で最も敬意を集め、タレントの宝庫と評されるアヤックス。ヨハン・クライフ、マルコ・ファン・バステン、デニス・ベルカンプ、クラレンス・セードルフ、エドガー・ダーヴィッツ、パトリック・クライファート、ヴェスレイ・スナイデル…数え切れないほどのスターがこのアムステルダムの名門アカデミーで技術を磨き、欧州の有力クラブでさらなる輝きを放っていった。

それ故、アヤックスがアブデラ・ワザネという新たな逸材を発掘したとしても驚きではないが、今回で異例なのはトップチームでデビューすることなく、レアル・マドリー行きとなる見通しということだ。そんなワザネとは? そしてレアル・マドリーで成功を掴めるのか? 今回はアヤックスに現る新たな注目株を紹介していく。

  • すべての始まり

    ワザネはモロッコ人の両親のもと、アムステルダムで生まれ、地元のAVVゼーブルヒアでプレーをスタート。このクラブはオランダ代表のライアン・フラーフェンベルフをはじめとする多くのトップ選手を輩出し、オランダのフットボール界で“ロイヤルサプライヤー”として知られる。そんなクラブからワザネも早くして才能を買われ、アヤックスへ。だが、アヤックスの才能豊かな育成組織でも瞬く間に成長を遂げ、そのアカデミー屈指の有望株へと化す。

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  • 大きな転機

    昨年には大きな決断を迫られる瞬間も。U-15代表でオランダとモロッコの両方でプレーした過去から、いずれかに別れを告げる必要性が生じたが、アヤックスのU-19カテゴリーでプレーする兄のザカリアと同じく後者を選択。この決断は今後の代表キャリアにおいて転機となる決断になりそうだ。

    そんなモロッコは今年のU-17アフリカネイションズカップにてワザネを飛び級で招集し、見事に優勝。ワザネも大会最優秀選手に輝き、ナビル・バハ監督は「彼は2009年生まれ。みんな、忘れているんじゃないか。他の選手よりも1歳年下だが、才能に溢れる」と絶賛の言葉を残している。

  • その後

    そうした活躍もあって、必然ながら欧州トップクラブのスカウトから注目の的に。アヤックスも警戒を強め、U-17カテゴリーに加わったばかりの選手を必死に引き留めようとしたが、このままトップチームでプレーすることなく、レアル・マドリーでプロ入りを果たすとの見方が有力視される。

  • 最大の強み

    そんなワザネはしなやかなドリブルスキルに視野の広いパスレンジを兼備するなど、多才なMFで、昨年に話題を呼んだデンゼル・ダルコの見事なゴールもアシスト。スピードも魅力で、ボールを奪う力もある。さらに、ゴールも決める能力もあり、U-17アフリカネイションズカップでは2ゴールをマークした。

    だが、何よりも特筆すべきはプレッシャーに晒さられても冷静沈着であること。戦術的な知性も併せ持ち、試合をコントロールしていける能力も武器だ。

  • 伸び代は?

    礼儀正しく、真面目な性格のワザネだが、自分の能力に対する自信家の一面も。それは決して悪いことではないが、ときにカツを入れられるなどで刺激も必要がありそうだ。例を挙げると、バハ監督はグループステージ最終節のタンザニア代表戦前半でのプレーに不満を漏らしたことがある。

    「彼とはハーフタイムに話をした。このチームに何をもたらせるかはわかっているし、初戦でもそれなりのプレーをしてくれた。だが、2試合目は本当に不満だったよ。走っていない選手の1人だったからだ」

    「彼は自分を甘やかしたり、自ら鼓舞したりするが、間違ったやり方のときがある。今だけ100%ではダメだ。誰もが100%の力を注いでいる。必要なのは120%の力。彼ならそれができるはずだよ」

  • 次のベリンガム?

    狭いスペースでも相手DFを抜き去っていけるだけの華麗な足技があることから、今年初めに『Ajax Showtime』のインタビューで“スーパーなハキム・ツィエク”とも表現されたのも頷ける。だが、2人は異なるポジションを持ち場とし、ワザネはより純粋な中盤。かのジネディーヌ・ジダンともよく比較されるが、それは彼の優雅さとともに、やや猫背気味な姿が似ているからだ。

    しかしながら、現代的に言えば、ジュード・ベリンガムに通づる要素もちらつく。ベリンガムほどの決定力こそないかもしれないが、高身長かつ細身で、運動能力に優れ、ボールタッチも素晴らしく、自信に溢れる点は近いものがある。

  • 今後は

    最新の報道によれば、レアル・マドリー行きは時間の問題とされ、移籍市場に精通するファブリツィオ・ロマーノ氏も今月初めに来る7月中の契約締結見通しをレポート。だが、アヤックスもみすみす手放したわけではなく、全力を尽くしての結果で、新たに指揮を執るヨン・ハイティンハ監督は直々に電話をかけて慰留に努めたともされる。

    だが、レアル・マドリーでプレーするという誘惑はアヤックスでも抗えず。レアル・マドリーに移った後、早々にセカンドチームであるカスティージャでのプレーが確約されたとあればなおさらだ。レアル・マドリーからすればマルティン・ウーデゴールの失敗が頭をよぎるが、ワザネも自らの能力に自信をもってこの移籍を決断したはずだ。

    ワザネのキャリアがこれほど早く築かれていくのは誰も予想しなかったことだろうが、ジダンやベリンガムと比べられる声があるのを考えると、いずれにせよ、遅かれ早かれサンティアゴ・ベルナベウにたどり着く運命にあったのかもしれない。