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Barcelona La Liga champions GFXGetty/GOAL

ファン歴30年…中村憲剛氏がバルサを好きになった理由&新シーズン展望

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  • pep(C)Getty Images

    キッカケは?

     初めてバルサの試合を観たのが忘れもしない、1992年UEFAチャンピオンズカップ(現CLの前身)の決勝でした。相手はイタリアのサンプドリア。0-0のまま突入した延長戦でリベロのロナルド・クーマンが直接FKを鮮やかに決めて優勝したんです。

     そして、同年の12月に日本で開催されたトヨタカップ(欧州と南米の両クラブ王者による世界一決定戦)で再びバルサの戦いぶりに触れ、改めて面白いなと。それ以来、彼らの虜になりました。

     当時チームを率いていたのが今日のバルサの礎を築いた名将ヨハン・クライフで、その秘蔵っ子が若き日のペップ・グアルディオラでした。バルサが攻めに転じると、必ずピボーテの彼にボールが渡り、それを巧みにさばいて、周りの選手たちを躍動させる。そんなペップの姿に魅了されたんです。また、華奢な体つきを苦にせず戦うところも、当時身体が小さかった僕に勇気を与えてくれました。

     クライフが監督の座を退いてから、やや興味が薄れた時期もありましたが、ペップが監督になってからバルサ熱が再燃。チャビ、アンドレス・イニエスタ、リオネル・メッシらが繰り広げる鮮やかなフットボールにのめり込み、その熱が今日まで続いている――といったところです。

  • barcelona(C)Getty Images

    フリック体制1年目

     話を現在のチームに移すと、まず昨季。チャンピオンズリーグこそベスト4で敗退しましたが、見事にラ・リーガを制するなど、ドイツ人のハンジ・フリック監督が手がけたチームにはポジティブな要素が多かったと思います。

     なかでも、個人的に衝撃を覚えたのが、いまや金看板の1つとも言うべきフリック仕込みのハイライン。当然、大きなリスクを伴う試みですが、強気のラインコントロールがチーム全体の距離をぐっと縮め、そのコンパクトなゾーンの中に相手を引き込んで戦うことにより、大きなメリットを手にした印象があります。狭い局面における攻防ともなれば、総じてスキルの高いバルサの選手たちに一日の長があるんじゃないかと。クラブの伝統芸でもありますからね。フリックはそこにハイライン、各種プレッシングを含むハイインテンシティという独自の手法を掛け合わせて当世風にアレンジし、バルサの強みをより先鋭化させた感じがします。

     実際、ハイリスク・ハイリターンのスタンスは文字通り、102ゴールというケタ違いの得点力を生み出しましたからね。他方、ハイラインを維持しなければならない最終ラインの選手たちには精神的にも肉体的にも負荷が大きいですが、それを徹底させるわけですから、フリックの手腕は流石だなと思います。

  • yamal(C)Getty Images

    今季のチームは?

     新体制下の昨シーズンとは違い、チームとしての積み上げがありますから、大きな期待を寄せられるのは当然でしょう。ただ、例年通り、ラ・リーガのサラリーキャップ制(クラブの収入に見合う給与総額の上限規制)によって、新たな選手の獲得や登録が思うように進められない状況でした。

    そうした中でどうしても補強が必要なポジションを絞り込み、スペイン代表GKジョアン・ガルシア、イングランド代表FWマーカス・ラッシュフォード、そして将来を嘱望されるU-21スウェーデン代表FWルーニー・バルドグジを加えました。すでにジョアン・ガルシアはスタメンに収まり、ラッシュフォードもジョーカーとして使われるなど、現時点では狙い通りに事が運んでいるように見えます。

     もちろん、ラッシュフォードの場合はまだ“試運転”の段階にあるはずですから、そのパフォーマンスが期待に沿うものかどうかの判断はもう少し先の話になるでしょうね。改めてチームの戦いぶりを見ると、絶えずハイラインを保ちながら、自分たちの土俵に相手を引きずり込み、しっかりと崩していくというベースの部分は変わっていません。

     ケガで出遅れた得点源のロベルト・レヴァンドフスキが不在の中、開幕戦からフェラン・トーレスがスピアヘッドとして使われています。ポーランド代表の重鎮も37歳と大ベテランに達し、万全のコンディションでフルシーズンを戦えるかどうかはわかりません。

     その点を踏まえても、早い段階で彼がいない状況下の戦いを経験し、課題の抽出と改善というサイクルを回せることのメリットは大きいですね。いや、何よりもアタックラインには新10番のラミン・ヤマルがいますからね。それはバルサにとって、決定的なアドバンテージになり得るものだと思います。

     いまだ10代の若者に過ぎないですが、ピッチ上でのパフォーマンスは別格の域にありますからね。右ワイドから鋭くアクションを起こし、やすやすとフィニッシュに持ち込んで点を奪うこともあれば、周りのチームメイトに点を取らせることもできる。昨シーズンを通じて培った経験――とりわけ、成功体験が大きな自信をもたらしたように感じます。いまや自信に満ち溢れていますからね。圧倒的な存在になりつつあるだけに、敵のマークも一段と厳しくなるでしょう。当然、簡単に止められる選手ではないですから、これまでにも増してラフな手立てを講じる相手が出てくるかもしれません。それに伴うケガこそが最大の懸念事項ではないかと恐れています。ただただ杞憂に終わることを祈るばかりですが……。

  • flick(C)Getty Images

    課題とポイントは?

     チームの熟成度が高まる反面、相手の対策も進むという意味でハイラインは格好のターゲットでしょう。昨シーズンはその大胆なライン設定に面食らったチームも少なくなかったはずですが、この先はバルサ側にとって捕まえにくい2列目からの飛び出しを狙うなど、工夫を凝らすチームが増えてくるかもしれません。そうなった場合、新守護神ジョアン・ガルシアのカバーリングを含め、適切な対応が求められることになると思います。

     もっとも、そうしたリスクも織り込み済みで設計されているのがフリックのチームですからね。敢然と強気を貫くスタンスは、いかにもバルサらしいとも言えます。代替不能のヤマルを例外とすれば、誰が出ても基本的な戦い方は変わらないうえに、目に見えるような戦力ダウンもなく、各々の個性を最大限に生かせるような仕組みになっていると思うので、大崩れすることはないだろうと踏んでいます。常に予測不能の出来事が起こり得る中でポジティブな予想が現実となるなら、昨シーズン逃がしたCLのタイトル奪回もその1つになるはずです。