nakamura-kengo(C)GOAL

「あの人の域には近づけない」「恐怖の極み」中村憲剛氏が現役時代に恐れたベストイレブンとは?

  • 【完全版動画】

  • 広告
  • higashiguchi(C)Getty Images

    GK:東口順昭

    守護神と聞いて、真っ先に思い浮かんだのが彼でした。理由はある試合の記憶が脳裏に焼きついて離れないからです。川崎Fが悲願のJ1初制覇を成し遂げた2017年シーズンの第32節・ガンバ大阪戦。優勝に向け、絶対に負けられない一戦で、僕らの前に立ちはだかったのが彼でした。ことごとくシュートを止められて……。終盤、僕のCKから決勝点を奪い、勝利を手にしましたが、崖っぷちまで追い込まれた“恐怖体験”はいまでも鮮明に覚えています。あれだけシュートを止められたのは後にも先にも彼だけ。僕にとっては“恐るべき守護神”でした。

  • nakazawa(C)Getty Images

    DF:中澤佑二

    DFから選んだのは3人。1人目は“ボンバー”こと中澤さんです。試合中に《これは無理だな》と観念させられた数少ない選手の1人です。これだけ攻めても得点させてもらえないのかと。よく動くし、体も無理が利いて、おまけに駆け引きも上手い。憎らしいほどの存在でしたね。試合中、何度も慌てさせようと試みましたが、実らずじまい。警告を受ける機会の少ないクリーンファイトが光る選手でしたからね。おいそれとは熱くならない。もっとも、本人いわく「顔に出ないだけで、内心は焦っていたんだ」と……。とにかく、攻略しがたい巨大な壁でしたね。

  • yamaguchi(C)Getty Images

    DF:山口智

    ピッチを俯瞰しながら戦った数少ないDFがガンバ大阪時代の智さんですね。試合中は絶えず頭脳戦。ガンバが守りに回ると、速やかに中盤との距離を詰め、コンパクトな防壁を築いてしまうんです。実際、ラインコントロールが巧みで、サッカーIQの高さを感じました。そのうえ、チーム全体を1つに束ねる統率力にも優れている。また、守備力ばかりか、ビルドアップを含めた攻撃力も高い。そういう選手でしたね。だから、細かい駆け引きを含め、楽しかった記憶ばかりですよ。智さんとの戦いは。間違いなく、畏怖の念を抱いた選手の1人です。

  • Marcus(C)Getty Images

    DF:田中マルクス闘莉王

    高さを生かした空中戦はもちろん、地上戦でも読みの深さで優位に立つなど、総合力の高い守備者でしたね。ただ、最も恐れていたのはセットプレーです。中澤さんや智さんもCKや間接FKからゴールネットを揺らす力を備えていましたが、闘莉王のそれは別格。とりわけ、ボールを呼び込む力に卓越していました。不思議と彼にボールが集まってくるんです。で、仕留める力も抜群。それこそ、ストライカーのようでした。あとは闘争心ですね。最後まで勝利を諦めず、チームメイトを鼓舞する。苦しい時ほど輝く選手でした。一番恐れたのが、そこですね。

  • kengo(C)Getty Images

    MF:中村俊輔

    正直、説明不要かと……。ボールを持たせたら、何でもできる。常に監視下に置きたい存在なのですが、いつの間にか何処かへ消えてしまう。敵を欺き、ゲームを掌握する力は図抜けていました。キャリアを通じて、多くを学ばせてもらいましたが、キックの精度だけは盗めませんでした。ワールドクラスですから。セットプレーを与えた際、僕らにできることと言えば、キックミスを祈ることくらい……。だから、ゴール前ではファウル厳禁だと。その結果として、相手に激しく当たれず、守備力低下を招く悪循環。それくらい、恐ろしい相手でしたね。

  • endo(C)Getty Images

    MF:遠藤保仁

    恐れた理由は俊さん(中村俊輔)のそれとほぼ同じです。寄せれば簡単にボールをはたから、寄せなければ前を向かれ、危険なパスを通されてしまう。初めてヤットさんと対峙したのが2005年。川崎FがJ1に昇格した最初のシーズンです。こちらの狙いをことごとくすかされて……。マジで衝撃を受けました。この人は何者なんだと。あの日以来、ひたすら映像を見ながら、学ばせてもらいました。結果、できることの範囲が大きく広がりましたが、ヤットさんの域に近づいているなんて思ったことはただの一度もありません。もう次元の違う人でしたから。

  • ogasawara(C)Getty Images

    MF:小笠原満男

    俊さん(中村)やヤットさん(遠藤)とは違い、バチバチやり合った先輩です。キックオフの笛が鳴ったら、満男さんは必ず来るんですよ。背中にガツーンと。最も警戒すべき相手と認められた証ですから、うれしかったですね。ただ、本当に痛いんですよ、当たりが。いつも背中に殺気を感じていましたね。満男さんはポジションを捨ててでも僕を潰しに来るので。そこで自分が負けたら、チームも負ける。鹿島戦は常にそう思いながら戦っていました。僕も遠慮なく、満男さんに当たりにいきましたよ。怖い反面、一番ゾクゾクした相手かもしれません。

  • iniesta(C)Getty Images

    MF:アンドレス・イニエスタ

    映像を通じて、そのプレーに魅せられてきたワールドクラスの名手。ずっと手本にしてきましたからね、チャビやセルヒオ・ブスケツたちと並んで。実際にピッチ上で対峙したのは数回ですが、楽しかった記憶だけが残っています。いや、彼のプレー自体は“極悪”でしたよ。寄せにいくと簡単にボールをはたかれ、近づきすぎると、今度は右足のアウトでくるりと反転し、あっさり前を向かれてしまう。しかも、パスだけではなく、ドリブルもありましたからね。止める手立てがあるのかどうか……。一度でいいから、味方としてプレーしたかったですね。

  • maeda(C)Getty Images

    FW:前田遼一

    何でもできる万能型のFWでしたが、個人的に最も恐れていたのがヘディングの強さ。とりわけ、精度の高いクロスを放つ駒ちゃん(駒野友一)がジュビロ磐田に在籍した頃は厄介この上ない存在でしたね。格好のクロスターゲットでしたから。そうなると、最大のポイントは駒ちゃんとのホットラインをどう断ち切るか。もちろん、遼一に対しても厳しくマークをするわけですが、細身に見えて、実は骨太。また、プロ入り以前はトップ下が主戦場で、足元の技術に卓越していました。あとは守備力ですね。プレスバックが強烈。総合力の高さはNo.1だと思います。

  • Araújo(C)Getty Images

    FW:アラウージョ

    彼にボールが渡ったら最後、十中八九、点を取られる。それくらい強力な決め手を誇る点取り屋でした。何しろ、リーグ戦で33得点を叩き出しましたからね。彼以降、30ゴール以上を記録する選手は現れていません。実際にピッチ上で対戦したのは彼がガンバ大阪に在籍していた頃。フロンターレがJ1に昇格したシーズン(2005年)でした。フェルナンジーニョ、大黒将志の両選手と組む前線のトライアングルは“凶悪”でした。あのヤットさん(遠藤)が後ろで操っていましたから。ただ、彼はソロでも点が取れる。その意味でも本当に怖い選手でした。

  • Washington(C)Getty Images

    FW:ワシントン

    端的に言えば、恐怖の極み。そういう存在でした。エリア内で彼にボールが渡ったら、警戒レベルはマックス。当時“川崎山脈”と呼ばれたフロンターレの大型3バックが彼の行く手を阻むために集結したほどです。それでも、敵のマークをものともせずに点を取ってしまう。とりわけ、ロングボールやクロスのターゲットになる空中戦はほぼ無双状態。初対戦は彼が東京ヴェルディに在籍していた2005年で、当時からすでに“怪物”でしたね。ポンテという最高レベルのパートナーとのコンビはチート(笑)。止めようがなかったですね。

  • ベストイレブン

    GK:東口順昭

    DF:中澤佑二、山口智、田中マルクス闘莉王

    MF:中村俊輔、遠藤保仁、小笠原満男、アンドレス・イニエスタ

    FW:前田遼一、アラウージョ、ワシントン