果たして、頂点に立つのはフランスの覇者か、それともイタリアの名門か。ヨーロッパ最強クラブの座を争うUEFAチャンピオンズリーグの決勝が、いよいよ5月31日(日本時間6月1日4時キックオフ)に開催される。難関の準決勝を制して勝ち上がったのは宿願のビッグイヤー獲得を目論むPSGと、通算4回目の優勝を狙うインテルだ。勢いに乗る強豪同士の争いにおいて、勝敗のカギを握るのは何なのか。日本代表OBの中村憲剛氏に珠玉のファイナルを展望してもらう。
(C)GOAL/Getty Images【CL決勝】珠玉の一戦。PSG×インテル、最強はどちらか…中村憲剛氏が勝敗を予想
CL・EL2025-26配信!
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PSG予想スタメン
■GK
ドンナルンマ■DF
ハキミ、マルキーニョス、パチョ、ヌーノ・メンデス■MF
ジョアン・ネヴェス、ヴィティーニャ、ファビアン・ルイス■FW
ドゥエ、デンベレ、クヴァラツヘリア監督
ルイス・エンリケ出場停止選手:なし
インテル予想スタメン
■GK
ゾマー■DF
パヴァール、アチェルビ、バストーニ■MF
ドゥンフリース、バレッラ、チャルハノール、ムヒタリアン、ディマルコ■FW
マルクス・テュラム、L・マルティネス監督
シモーネ・インザーギ出場停止選手:なし
(C)Getty Images序盤からの展開予想
今季のCLファイナルは、PSGとインテルという興味深いカードになりました。激闘の末に強豪を退けた準決勝を含め、双方の懐が深い、したたかな戦いぶりはファイナリストにふさわしいものだと思います。
まず、大まかに試合展開から占うと、おそらくボールを保持するのはPSGの方でしょう。一方のインテルは守備のオーガナイズをしっかり整えつつ、隙あらば前線からプレスをかけて、PSGの強みでもあるビルドアップの破壊を試み、そこから鋭いカウンターアタックに打って出る構図になるんじゃないか、と予想しています。つまり、準決勝のインテルとバルセロナの図式に近い感じですね。
もちろん、決勝は一発勝負ですから、インテルが相応のリスクを伴うハイプレスを自重する可能性も十分にあるでしょう。このあたり、シモーネ・インザーギ監督がどう考えるか。立ち上がりの15分間、積極策と慎重策のどちらを選択するかが最初のチェックポイントになるような気がします。
少なくとも、序盤はインテルがリスク覚悟でハイプレスを試みるかもしれないですね。そう簡単にはボール保持を受け入れないぞという意思表示を込めて。その積極策が実り、先制できれば、大変なアドバンテージを手にすることにもなりますから。
(C)Getty Imagesボール保持時のプレス回避
双方の基本布陣はPSGが4-3-3、インテルが3-5-2。そのまま戦えばミスマッチが生じやすいわけですが、互いに相手ボールの際には後ろに人を余らせず、ほぼマンツーマンで奪いにいきます。従って、ボールを保持する側がいかに守備側のプレスを回避するかは、この試合の大きな見どころでしょう。
その点、PSGはプレス回避のエキスパートですからね。守備側がマンツーマンでプレスを試みても、ボールを奪うのは簡単ではありません。何しろ、各々の立ち位置はランダムで、おいそれとはボールを失わない才人ぞろい。とりわけ、ヴィティーニャ、ジョアン・ネヴェス、ファビアン・ルイスの3人は当代でも指折りの技術と構成力を兼ね備えた中盤トリオだと思います。
(C)Getty Images鍵を握るデンベレ
PSGがボールを保持する展開の次なるポイントは、PSGの《偽9番》をめぐる攻防でしょう。CFでありながら、最前線に留まらない神出鬼没のデンベレに対して、インテルの守備陣がどう対応するのか。ゼロトップとして立ち回るデンベレとは“初対戦”でしょうから、難しいミッションになるかと。
便宜上、デンベレと対峙するのはおそらくアチェルビ(=3バックの中央)になると思いますが、デンベレは彼から離れていくでしょう。インテルの中盤を構成する3センターの背中や脇に下りてボールを引き出し、PSGの中盤をヘルプしながら、攻撃の起点となるようなアクションを試みるはずです。
そうなれば当然、アチェルビはジレンマに陥るでしょう。いったい、どこまでデンベレを捕まえに行けばいいのか――と。深追いすれば自軍のゴール前に“穴”が生じ、その場に留まれば、デンベレはフリーになってしまう。それと言うのも、PSGとインテルの中盤は《3対3》の同数ですから、アチェルビにはマークを受け渡す味方がいないわけです。
従って、インテルの選択肢はかなり絞られることになるでしょう。最もわかりやすい例を挙げれば、5-3-2の守備ブロックを極限までコンパクトに保つこと。つまり、3ラインの距離を詰めて、デンベレにスペースを与えないようにする。結局、人につくか、ゾーンで圧縮するかの二択ですからね。
(C)Getty Images2トップvs2センターバック
逆にインテルが攻め、PSGが守る展開になった際のポイントは《2トップ対2センターバック》の争い。つまりインテルの2トップを担うテュラムとラウタロ、PSG守備陣の要となるマルキーニョスとパチョによる攻防ですね。2対2の同数という点もありますが、テュラムをターゲットに使うインテル特有のダイレクトな攻撃に対し、PSG側の耐久力が問われることになると思います。
テュラムにロングボールを当てて後方へのフリックからラウタロがライン裏を突く常套手段はもちろん、セカンドボールを拾ってからの2次攻撃も破壊力十分。この“空路”を使ったシンプルな攻め手はプレス回避も兼ねたインテルの強みと言えます。
当然、PSG側にとっては、テュラムをめがけて放つウイングバックのクロスも要警戒。なかでも、危険なのは逆サイドへの対角パスが繰り出された直後ですね。PSGは4バックですからスライドが間に合わず、インテルのウイングバックに時間とスペースを与えて、精度の高いクロスを浴びるリスクをはらんでいます。PSGにとっては、対角パスの出し手となるインテルのレジスタ(司令塔)であるチャルハノールを自由にさせない工夫も必要かもしれません。
getty勝敗予想は…?
ポイントを洗い出せばキリがないですが、最も重要なのはやはり先制点でしょう。過去5シーズンの決勝を振り返っても、実に4回がウノゼロ(1-0)による決着ですからね。どちらが勝っても不思議はないですが、予想されるスタメンのうち、2シーズン前の決勝で涙を呑んだ選手が7人もいるインテルが経験値の点で、わずかに有利かと――。場慣れしていることの強みとリベンジへの強い思いをテコにして、ビッグイヤーを手繰り寄せそうな気がします。
ともあれ、サッカーひと筋の男たちが己の人生をかけて力の限りを尽くすファイナルですから、面白くないはずがありません。選手たちの技術と創造力、チームの多彩な戦術、ベンチの駆け引き、そして時の運――。あらゆる角度から楽しめるファイナルを心ゆくまで堪能してください。





