史上最速で8大会連続8度目のワールドカップ出場を果たした日本代表。同アジア最終予選(C組)では“史上最強”の触れ込み通り、他を寄せつけない圧巻のパフォーマンスを演じた。その動力源がチーム内の競争力を引き上げる分厚い選手層だ。そこで代表OBの中村憲剛氏に各ポジションの序列と、その動向を占ってもらった。(取材=北條聡)
※記載は名前を挙げられた選手、3-4-2-1を想定。
(C)Getty Images/GOAL史上最速で8大会連続8度目のワールドカップ出場を果たした日本代表。同アジア最終予選(C組)では“史上最強”の触れ込み通り、他を寄せつけない圧巻のパフォーマンスを演じた。その動力源がチーム内の競争力を引き上げる分厚い選手層だ。そこで代表OBの中村憲剛氏に各ポジションの序列と、その動向を占ってもらった。(取材=北條聡)
※記載は名前を挙げられた選手、3-4-2-1を想定。
(C)Getty Images鈴木彩艶
大迫敬介
谷晃生
小久保玲央ブライアン
正GKの座に最も近いのはやはり鈴木彩艶ですね。アジア最終予選の序盤、特にアウェイ戦で敵の勢いを殺ぐビッグセーブが目を引きました。おかげで先に失点せず、日本のリズムで戦えたのは大きい。ベンチや選手からの信頼は高まる一方でしょう。また、所属するパルマで実績を積み、トップレベルでの経験値を深め、現状では頭一つ抜けた存在かと。
彼に続くのが同世代の大迫敬介、谷晃生でしょう。東京五輪代表の頃から切磋琢磨してきた間柄でもあり、大きなアクシデントでもなければ、この3人が最有力だと思います。彼らの牙城を崩すとすれば、パリ五輪で活躍した小久保ブライアンですね。本大会までにどこまでアピールできるか楽しみです。
(C)Getty Images板倉滉
冨安健洋
伊藤洋輝
町田浩樹
谷口彰悟
瀬古歩夢
橋岡大樹
高井幸大
3バックを前提にしてもなお、人材に事欠かないセクション。つまりは激戦区ですね。まず、現時点における中央の一番手は板倉滉でしょう。
本来なら、最右翼は冨安健洋ですが、すべてはコンディション次第。ベテランの谷口彰悟にも同じことが言えるかもしれません。ケガで戦列を離れるまでは3バックを統べる存在でした。とりわけ、中央の担い手には経験値が求められるだけに、冨安と谷口の動向は気になるところです。
左は伊藤洋輝と町田浩樹という“鉄板”の2人がいるのは心強いですね。何しろ、貴重な左利き。そのうえ、左サイドバックにも適応する汎用性の高さまで備えています。さらには、最後尾から斜めに“くさびのパス”を刺す力もある。日本の大きな武器ですね。
ならば、右はどうか。中央に冨安、谷口がいる場合、一番手は板倉でしょう。板倉が中央なら、瀬古歩夢、橋岡大樹、高井幸大たちの争いになりそうです。なかでも、パリ五輪代表の高井には特大のポテンシャルがあるだけに、本大会のメンバーに食い込んでも全く不思議はありませんね。
ともあれ、激戦区らしい多士済々の顔ぶれ。最終的な序列がどうなるかは冨安と谷口の状態次第だと思います。
(C)Getty Images■右ウイングバック
堂安律
伊東純也
菅原由勢
関根大輝
毎熊晟矢
■左ウイングバック
三笘薫
中村敬斗
中山雄太
長友佑都
3バックを前提にすれば、最も人選の幅が広いポジション。一般的な呼び方は“ウイングバック”ですが、今回のアジア予選で重用されたのは本格派のウイング、あるいは攻撃力に優れる面々でした。ただし、格上がひしめく本大会では守備力の高いサイドバック系の選手が必要になる可能性もあります。こうした点を踏まえると、攻撃型と守備型、それぞれからバランスよく選ばれるでしょう。
まず、右から見ていくと、攻撃型では堂安律と伊東純也、守備型では菅原由勢と関根大輝が有力ですね。これまでに何度か代表に招集されている毎熊晟也にもチャンスがあるかもしれません。
面白いのは堂安と伊東という特徴の異なるタイプがそろっていること。前者は周囲の選手たちと連係した多彩な崩し、後者は単騎突破に強みがあります。どちらを交代の切り札に使っても、対面の守備者を大いに悩ませる存在となりそうです。
一方、左ですが、攻撃型は三笘薫と中村敬斗の二枚看板。さらに、前田大然という選択肢もありそうです。守備型では中山雄太と長友佑都が控えています。
ともあれ、このセクションの序列は極めて流動的。対戦相手との力関係は言うに及ばず、対面の選手との兼ね合い、試合展開やスコアなどを鑑み、人選を決めることになりそうです。
さらには、4バックへの“可変”を視野に入れ、左右どちらかに攻撃型、もう一方に守備型の選手を据える可能性も十分。森保監督のゲームプラン次第ですね。
(C)Getty Images■ボランチ
遠藤航
守田英正
田中碧
旗手怜央
藤田譲瑠チマ
佐野海舟
■攻撃的MF(シャドー)
久保建英
南野拓実
鎌田大地
役割が多岐に渡るMF陣については3列目(ボランチ)と2列目(シャドー)に分けて話を進めます。まずはボランチですが、キャプテンの遠藤航と守田英正の補完性が抜群です。攻撃時に遠藤が3バックの手前に構え、守田が前に行ったり、横に行ったりしながら数的優位をつくり出す形が猛威をふるいました。なかでも、アタック陣を支えながら自らゴールも奪う守田の活躍はかなり属人性の高いものです。
ただ、田中碧なら、同じような働きを期待できるでしょう。所属クラブではアンカーですが、本来の強みは前にどんどん出て行って、得点を奪うところにあります。あとは鎌田大地をここで使う選択肢もあるでしょう。ほかでは、パリ五輪世代の藤田譲瑠チマがA代表の特殊なシステムの中で徐々に馴染めれば。また、ボールゲインの担い手なら、ドイツで活躍する佐野海舟が有力候補となるはずです。
続いて、2列目のシャドーですが、こちらは適材がずらりとそろっています。しかも、各々の個性や特長が異なる点も良いですね。ドリブルでの仕掛けが光る久保建英、鋭い裏抜けからネットを揺らすセカンドストライカーの南野拓実、ボランチをヘルプしつつ、ライン間で前を向き、鋭いスルーパスを放つ鎌田など、実に多彩な顔ぶれ。右サイドではポジションチェンジを含め、久保と堂安が高密度で連動し、左サイドでは南野や鎌田が大外の三笘、中村と絡みながら敵のゴールに迫る形が整いつつあります。
さらに言うならば、三笘と中村、堂安と伊東というワイドの担い手たちもシャドーとして立ち回る力量の持ち主。正直、誰が出ても相応のリターンを期待できる。それくらい充実したポジションだと思いますね。
(C)Getty Images上田綺世
前田大然
古橋亨梧
浅野拓磨
小川航基
町野修斗
細谷真大
大橋祐紀
現状、スピアヘッドの一番手はやはり上田絢世ですね。背後に控える2人のシャドーや大外から仕掛ける両ウイングバックの持ち味を引き出せるストライカーとして、ベンチから信頼を寄せられていると思います。最大の強みは総合力の高さ。クロスのターゲットとして優秀なうえに裏抜けからのフィニッシュも上々。さらに周囲を生かすポストワークに磨きがかかったのも大きいですね。
彼に続く存在を挙げれば、前田大然、古橋亨梧、浅野拓磨、小川航基、町野修斗、大橋祐紀、そして、パリ五輪代表の細谷真大といったところでしょうか。それぞれの特徴を踏まえると、サイズがあってポストワークに秀でたタイプと、スピードがあって裏抜けに優れたタイプの2つに分類できそうです。どちらか一方から優先的に選ぶか、または双方からバランスよく選ぶかは本大会でのゲームプラン次第かもしれません。
当然、前回のカタール大会での実績を含む経験値も重要な要素でしょう。そうかと言って無視できないのが時の勢い。実のところ、好調の選手がそのまま本大会で活躍するケースは少なくありません。その点も十分に考慮しながら、最終的な序列を決めることになると思います。
(C)Getty Images/GOAL
(C)Getty Imagesここから昇り竜のごとき勢いで台頭し、ついには本大会の最終メンバーに割って入る。そんな筋書きを密かに期待する選手の1人がサンフレッチェ広島の大卒新人、中村草太です。
今季のJ1開幕戦で値千金の決勝ゴール。シャドーとして躍動し、鮮烈なプロデビューを飾りました。武器はスピード。その素晴らしいスプリント力は日本代表の2列目にないものです。
もちろん、ゴールに絡む力は見事ですが、失ったボールを即時回収する高速のカウンタープレスも魅力。守りに回った局面でも持ち味の走力を惜しみません。攻守問わず、チームへの貢献度が高い選手というわけです。この先もコンスタントに活躍するようなら、一度代表で試してほしいですね。