japan(C)Getty Images/GOAL

【2023-24シーズン評価まとめ】欧州主要リーグ日本人選手の今季を4段階で評価

欧州主要リーグの2023-24シーズンが終了。今季はリヴァプールのMF遠藤航とアーセナルのDF冨安健洋がレギュラーとしてプレミアリーグ優勝争いを経験したほか、ソシエダのMF久保建英がラ・リーガの年間最優秀選手候補に。また、モナコのFW南野拓実が仏大手紙の年間ベストイレブンに選出されたほか、シュトゥットガルトのDF伊藤洋輝がレギュラーとしてブンデスリーガ2位フィニッシュに貢献するなど、多くの選手がさらなる飛躍と成長をアピールした。

『GOAL』では欧州主要リーグで定期的な出場機会を得た日本人選手たちの今季パフォーマンスを振り返り、C~Sの4段階で評価した。

  • tomiyasu(C)Getty Images

    DF冨安健洋(アーセナル):S

    公式戦30試合出場2ゴール3アシスト

    今季も2カ月近い離脱期間はあったが、ピッチに立てばシーズンを通してハイレベルなパフォーマンスを出し続けたのは間違いない。史上最高レベルだった今季のプレミアリーグ優勝争いを最後まで戦い続けたアーセナルの中で、左サイドバックをメインに緊急時はセンターバックとしても出場。試合中のポジション変更が可能なのも冨安の特別な能力だ。ミケル・アルテタ監督が言うように、最も信頼できるDFの1人として君臨した。

    今季は守備面ではもちろんのこと、攻撃面での貢献度が飛躍的に向上。主にデクラン・ライスの位置を確認しながらピッチの中と外へポジションを移し、さらにファイナルサードへ積極的に進出。最終節のゴールが象徴するように、質の高いオフ・ザ・ボールで相手にとっては「非常に厄介な選手」になった。2年連続2位と悔しい結果を糧に、来季は絶対的なレギュラーとしてシーズン通じた躍動に期待だ。

  • 広告
  • hashioka(C)Getty Images

    DF橋岡大樹(ルートン・タウン):B

    公式戦11試合出場

    橋岡にとってのプレミアリーグ初挑戦はほろ苦い結果となった。シント=トロイデンVVでのパフォーマンスが評価され、1月にルートン・タウン加入。なかなかコンディションが整わない中で、リーグデビューは3月になった。さらに、チームが不調の状況で最終ラインの離脱者も出たことで、本職の右ウイングバックよりも3バックのストッパーを任されることが多く、フィジカルに特徴のあるプレミアリーグへの適応に苦しみ、失点にも多数関与することになった。もちろん橋岡だけの責任ではないが、最終的に自身が出場した公式戦11試合でチームは1勝1分け9敗に。ルートンも2部降格の憂き目に遭った中、大きなプレッシャーの中でプレミアリーグ最終盤を戦ったことを財産に、そして糧にして来季に活かしたい。

  • wataru-endo(C)Getty Images

    MF遠藤航(リヴァプール):S

    公式戦44試合出場:3ゴール1アシスト

    昨年の夏にモイセス・カイセドを獲得し損ねた後、現地の識者を含めた多くの人が遠藤の緊急補強に懐疑的だった。しかし、ユルゲン・クロップ監督は自身の出身であるドイツの地で圧巻のパフォーマンスを見せていた日本代表主将を信頼。遠藤自身、加入当初はプレミアリーグへの適応に苦労したが、中盤戦以降にその価値を示し、チームに欠かすことができないアンカーとしてのポジションを確立してみせた。アレクシス・マクアリスターとドミニク・ソボスライとの中盤トリオは今季のお馴染みとなり、最大の特長であるフィジカルを活かした中盤での潰しのプレーだけでなく、フラム戦での劇的勝利に導くゴールなど攻守に貢献。リヴァプールが最終盤まで優勝争いに食い込めたのは、間違いなく遠藤の補強があったからこそだった。

  • kaoru-mitoma(C)Getty Images

    FW三笘薫(ブライトン):B

    公式戦26試合出場:3ゴール5アシスト

    昨季にリーグ33試合で7ゴールをマークし、プレミアリーグ有数のウインガーとして名を上げた三笘にとって、今季は苦しいシーズンとなった。開幕からのリーグ6試合で3ゴール3アシストを記録してさらに飛躍のシーズンとなるかと思われたが、ヨーロッパリーグとの二足の草鞋を履いたチームの中で疲労も顕著となると、昨年末から足首と背中の負傷が続き、2月終盤以降の全試合欠場を強いられた。チームも昨季の躍進から今季はボトムハーフの11位フィニッシュ。現地メディアもチームの低迷を三笘の離脱と関連づけたように、チームの浮沈を左右するほどの評価を得ているのは素晴らしいことだが、ロベルト・デ・ゼルビ監督も退任する中で、残留するにしろ新天地に移籍にするにしろ来季は改めて自身のプレーを取り戻す必要がある。

  • kamada(C)Getty Images

    MF鎌田大地(ラツィオ):B

    公式戦38試合出場2ゴール2アシスト

    加入直後のセリエAでの4試合は先発し、1ゴール1アシストと結果を残していた鎌田。だが、チームが1勝3敗と厳しいスタートになったことからマウリツィオ・サッリ監督の戦術変更の割を食う形となった。9月半ばからはほとんどの試合がベンチスタートとなり、我慢を強いられ続けた。

    それでも、3月のイゴール・トゥドール監督就任で状況が激変。鎌田の攻撃的な技術面や戦術眼だけでなく、プレスのタイミングやかけ方、走力など守備面の能力を高く評価する指揮官は、トップ下~守備的MFのファーストチョイスに抜擢。それに応えるように、鎌田自身もピッチで惜しげもなく自らの能力を解放。一気にゲームメイクの中心となった。だが、それも最後の10試合のことであり、シーズンを振り返ってみると悔しい結果になってしまったと言えるだろう。

  • kubo(C)Getty Images

    MF久保建英(レアル・ソシエダ):S

    公式戦41試合出場7ゴール5アシスト

    今やソシエダだけでなく、ラ・リーガの顔の1人と言ってもいいだろう。ソシエダ加入2シーズン目は、絶対的な存在として攻撃を牽引。右サイドで中を向けばカットイン、高精度クロス、強烈なシュートと狭いスペースでも勝負どころを見逃さない眼と技術でチャンスを作り続けた。また自身初のチャンピオンズリーグも全試合に出場し、特にラウンド16ファーストレグのPSG戦(0-2)は、世界的プレイヤーたちを相手に堂々たるプレーを披露している。

    そんな22歳MFだが、シーズン終盤はケガや疲労もあってやや勢いに陰りがみられた。最後の8試合は先発が3試合のみ、イマノル・アルグアシル監督も「レギュラーの座が確約されている選手は誰もいない」と宣言した。代わって先発機会が増えたジェラルド・ベッカーはスピードを活かしてより縦に仕掛けるタイプであり、足元で受けてから組み立てる久保とは正反対。ベッカーから刺激を受けつつ、プレーパターンをさらに増やせるかが来季の課題となりそうだ。とはいえ、ラ・リーガで唯一となる年間最優秀選手&U-23年間最優秀選手にノミネートされた日本代表MFが充実のシーズンを送ったことは間違いない。

  • itakura(C)Getty Images

    DF板倉滉(ボルシアMG):B

    公式戦22試合3ゴール

    板倉滉にとってやや難しいシーズンとなったことは否めない。足首の負傷とアジアカップ参加により、シーズン中盤から後半戦までチームを離れ、公式戦15試合を欠場することとなった。2月の復帰後から累積欠場した1試合を除き、リーグ戦13試合に出場したが、勝利したのは1試合のみ。ドイツメディアでは、ボルシアMGの不振ととともに板倉のパフォーマンス低下も度々指摘されている。

    もっとも、ジェラルド・セオアネ監督からの信頼は厚く、今季はセンターバックとしてだけではなく、守備的MFとしても奮闘。得意とするハードな守備はもちろん、その後の配球でも存在感を示しており、序列が下がっているわけではない。しかし、アトレティコ・マドリーやモナコといったトップクラブが興味を示しているとの報道もあり、ボルシアMGも一定の移籍金が払われるのであれば、今夏の放出も辞さない構えとも伝えられる。板倉がボルシアMGで3シーズン目を迎えるかどうかは現状で不透明だ。

  • hiroki ito(C)Getty Images

    DF伊藤洋輝(シュトゥットガルト):S

    公式戦29試合2アシスト

    今季はバイエルンを上回る、2位と躍進したシュトゥットガルトの中で主力選手として活躍したのが伊藤洋輝。ケガやアジアカップ招集で8試合を欠場したが、それ以外はすべての試合に出場。サイドバックとしてだけではなく、センターバックとしての起用にも応え、セバスティアン・ヘーネス監督も「非常に興味深くクオリティの高いプレーヤーで、我々のために素晴らしく役割を果たしてきた」と大きな信頼を寄せる。

    ドイツ誌『キッカー』のシーズンを通じた平均採点は「2.94(※ドイツでは1が最高)」で、DFとしてはブンデスリーガ全体で6位にランクイン。ブンデスリーガを代表するDFに成長し、指揮官が「彼はシーズン序盤にもすでに本当に優れた選手だったが、今はさらにトップ級の選手に成長した」と話すのも頷ける。来季は自身にとって初のチャンピオンズリーグ出場のチャンスがあり、さらなる飛躍に期待が高まる。

  • doan(C)Getty Images

    MF堂安律(フライブルク):A

    公式戦42試合9ゴール7アシスト

    昨季は公式戦45試合で7ゴール7アシスト、そして今季は公式戦42試合で9ゴール7アシストと、着実に、そして大きな一歩を踏み出している。シーズン前半戦は4-4-2の右サイドに入っていたが、後半戦からはシステム変更があり、3-4-3の右ウイングバックへコンバート。守備への貢献も求められることとなったが、結果的に堂安にとってはポジティブな変化となった。元来献身的なハードワークも厭わないタイプで、ネガティブトランジションでも存在感を発揮。攻撃ではボールを持つ位置が低くなったが、それでも得意の左足とゴール前への飛び込みにより、アジアカップ復帰から14試合で6ゴール・3アシストを記録した。

    堂安のこの成長ぶりにはクリスティアン・シュトライヒ監督も「彼は私の要求を完全に受け入れ、それからはまったく別のボディランゲージを見せている。それにより攻撃面も改善できた」と認める。堂安自身もこの老将のおかげで大舞台でも活躍できるようになったと認めるだけに、今季限りで勇退するのは惜しいところ。とはいえ、大きく飛躍を遂げた堂安が来季新指揮官の下でどのようなプレーを見せるのか興味は尽きない。

  • asano(C)Getty Images

    FW浅野拓磨(ボーフム):A

    公式戦32試合7ゴール1アシスト

    ボーフムで3シーズン目を終えた浅野拓磨。今季は公式戦7ゴールと、在籍3年間ではトップの得点数を挙げていたが、チームは最終節で入れ替え戦圏内へと転落。それでも、2部フォルトゥナ・デュッセルドルフとの入れ替え戦で0-3の敗戦から2戦目で3-3と巻き返し、さらにPK戦を制して劇的な残留を決めた。

    トーマス・レッチュ前監督の下ではアジアカップ期間をのぞいてリーグ全試合で先発起用されるなど、確かな信頼を得ていた浅野だが、監督交代後は出場機会が減少。それでも、プレーオフ2戦目で存在感を示すなど、最終的に素晴らしいイメージでシーズンを終えた。今夏でボーフムとの契約は満了。ボルシアMGやマインツ、アウクスブルクといったクラブが関心を寄せていると伝えられる中、チームが残留したことでその去就にも注目が集まる。

  • Takumi_Minamino(C)Getty Images

    MF南野拓実(モナコ):S

    公式戦31出場9ゴール6アシスト

    リヴァプールから鳴り物入りでモナコに加入した昨季こそ苦境を味わった南野だが、今季から完全復活。パリ・サンジェルマンに次いで2番目に得点数が多かったチームの中で攻撃の中心を担い、主にトップ下や2トップの一角、両サイドハーフでプレーし、9ゴール6アシストを記録した。惜しくも二桁得点には届かなかったが、小気味よいタッチで強力な攻撃陣を操りながら、多くの試合でチームを勝利に導いた。

    活躍の裏には、ザルツブルク時代の恩師であるアドルフ・ヒュッター監督の存在が大きい。リヴァプール、そしてザルツブルクで見せてきた輝きを完全に取り戻し、特にリーグ戦でのアシスト数はチームトップタイ、得点数は2位。常に相手にとって最も警戒が必要な選手の一人となっていたが、守備での貢献も含め、これまでの経験に裏付けられた柔軟な対応で存在感を発揮した。ヒュッター体制の理解も進む来季は、チャンピオンズリーグ(CL)で再び欧州中に南野のプレーを印象付ける機会が訪れるかもしれない。

  • Keito_Nakamura(C)Getty Images

    FW中村敬斗(スタッド・ランス):B

    公式戦26出場4ゴール1アシスト

    今季からスタッド・ランスに活躍の場を移して欧州5大リーグ初挑戦となった中村。23歳の気鋭ドリブラーはすぐに適応力を示すと、第2節からレギュラーの座を奪取した。日本代表にも定着したことで多忙なスケジュールとなり、負傷に苦しめられる時期もあったものの、左サイドのアタッカーとして明確な役割を担うまで担っている。

    一方で先発していたとしても早いタイミングで交代となる試合も多く、特にアジアカップ後のリーグ戦折り返しごろからはなかなか結果を残せず。第29節、第31節で得点を記録するなど、最終的には調子を取り戻したものの、ドリブルだけではないシュート精度の高さといった本来の持ち味を踏まえれば、より適応が進む2年目は目に見える数字を残すことが求められる。

  • Junya_Ito(C)Getty Images

    FW伊東純也(スタッド・ランス):A

    公式戦31出場3ゴール7アシスト

    昨季からスタッド・ランスの中心選手となっていた伊東は、2年目も絶対的な存在として右サイドを支配。その快速を生かした突破を警戒してくる相手に対し、チームメイトを生かすようなプレーも目立ち、間接的に得点につながるような場面も多かった。

    もちろん初年度同様に独力でチャンスを作り出すようなプレーも度々披露。3ゴール7アシストという数字以上の存在感を示した。チームは9位フィニッシュで欧州カップ戦の出場権を逃すことに。リーグを代表するアタッカーの一人として、来季はスタッツ面をさらに向上させ、チームを勝たせることができる選手として活躍したい。

0