Man City defence GFXGetty/GOAL

3冠王者マン・Cが不安定さを露呈している理由。ヴィラに11倍のシュートを放たれ4位転落

ジョゼップ・グアルディオラは、バルセロナからバイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティまで、魅惑的かつ攻撃的なフットボールを展開してきた称賛されるべき名将だ。しかし、彼のスリリングなブランドは常に、堅固な守備の基盤の上に構築されてきた。グアルディオラがトップレベル指揮官として14シーズンを過ごした中で、リーグ最高の守備成績を残せなかったのは3回だけだ。

彼が敬愛するヨハン・クライフは「ボールを持っていれば相手は得点できない」という有名な言葉を残した。 グアルディオラのチームも何より、試合をコントロールし、支配することを大切にしてきた。グアルディオラのチームは現在もスリリングなフットボールを継続しているが、不安定さを露呈し、守り方を忘れてしまっている。

シティはプレミアリーグ第12節から第14節の3試合(チェルシー戦4-4、リヴァプール戦1-1、トッテナム戦3-3)で8失点を喫した。これはシーズン最初の11試合と同数の記録だ。6日のアストン・ヴィラ戦は1失点だったが、シティが2本のシュートにとどまったのに対し、相手には22本と実に11倍のシュートを浴びせられた。

とりわけ守備の不安定さを露呈するシティに何が起こっているのか――。

  • Ilkay Gundogan Manchester City 2022-23Getty

    ギュンドアン退団とロドリ依存

    イルカイ・ギュンドアンは完璧なミッドフィルダーだった。繊細なタッチやパスで試合のペースを掌握し、決定的なゴールを決める能力も十分で、2021-22シーズンの最終節や昨シーズンのFAカップ決勝のような緊迫した場面で躍動した。

    そのドイツ人がバルセロナに移籍したことで、シティには大きな穴が空き、それを完全に埋めることがここまでできていない。少なくとも、その穴を埋めるためにマテオ・コヴァチッチとマテウス・ヌネスを獲得した。だが新戦力は怪我に悩まされ、全コンペティションでの先発出場はわずか12試合にとどまっている。

    ジョン・ストーンズの長期離脱と相まって、この2人の欠場はシティを支えるロドリに大きな重圧をかけることになっている。彼自身はやるべきことをやっているが、負担は増している。昨シーズンと同じようにチームをコントロールしろというのが酷な話であるとともに、チームは彼への依存度を軽減する術を身に着ける必要がある。事実、ヴィラ戦だけでなく、今季チームが敗れた試合はすべてこのスペイン人を欠いているのだ。

  • 広告
  • John Stones Manchester City 2023-24Getty Images

    ストーンズの負傷

    グアルディオラが昨シーズンに施した戦術的微調整の一つは、ストーンズをホールディングミッドフィルダーとして抜擢し、ボール保持時にディフェンダーに前進する許可を与えたことだった。グアルディオラは当初、リコ・ルイスをこの役割で実験的に起用したものの、ストーンズの方がより適していることに気づいた。

    その結果、シティはポゼッションとコントロールの精度と質を向上させた。ストーンズは必要なときにゲームスピードを落としたり、逆に上げたりすることができるようになった。しかし、今シーズンの大半をケガで棒に振り、グアルディオラはディフェンスと中盤をつなぐ理想的なリンクマンを奪われた。ストーンズはコミュニティ・シールドで臀部の筋肉を負傷し、シーズン最初の2カ月を棒に振っている。

    グアルディオラはストーンズが不在の間、マヌエル・アカンジを主に起用。特にリヴァプール戦では、試合の大半を支配しながらもユルゲン・クロップのチームを仕留めきれず、トレント・アレクサンダー=アーノルドに同点弾を許している。その限界はトッテナム戦、とりわけ後半に顕著になった。

    「バーンズリーのベッケンバウアー」がヴィラ戦で戻ってきたのは今後に向けた明るい材料だ。だが、病み上がりの一戦としてはあまりに強烈な相手であった。

  • Kevin De Bruyne Manchester City 2023-24 sadGetty Images

    デ・ブライネの欠場

    シティのキャプテンであり、過去8年間のチームの象徴となってきたケヴィン・デ・ブライネも、開幕戦のバーンリー戦でハムストリングを断裂する前にプレーした20分間をのぞいて今季の欠場が続いている。

    守備面の貢献よりも攻撃面で相手の脅威となることで知られているベルギー人だが、彼の欠場はシティがピッチ上のリーダーの一人を失ったことを意味する。昨シーズンのチーム内でボールキャリー数と前進させるパスの成功本数で2位、そのパスの受け手となる数でチーム3位となった。ゴールやアシストといった分かりやすい指標以外にも、チーム全体のプレーに影響を与えていた。

    「攻撃は最大の防御である」という言葉を信じるのであれば、デ・ブライネの長期離脱はシティの後方における問題をさらに表面化させることになった。もしデ・ブライネが万全の状態でプレーできていれば、シティはリヴァプールとトッテナムの終盤の反撃の手前で試合を終わらせ、混乱を収拾していたであろうことは容易に想像がつく。

  • doku(C)Getty Images

    ドクの功罪

    ジェレミー・ドクは、今シーズンのシティで最もエキサイティングなプレーヤーの一人であり、プレミアリーグでインパクトを残すのに時間はかからなかった。このウインガーは瞬く間にエティハドのファンを虜にし、彼がボールを持つたびにファンは期待に胸を膨らませる。

    彼がいることで、シティはより意外性と活気に溢れる仕掛けを繰り出せるようになっている。しかし裏を返せば、この21歳の爽快なドリブルは、相手にとってはボールを奪った際のカウンターの脅威を強める要因になり得る。

    グアルディオラは攻撃的なアップサイドのために、グリーリッシュよりもドクを起用することでの守備のマイナス面も受け入れようとしている。昨シーズン、頻繁にタッチライン際でキープしてプレースピードを落とし、チームメイトの前進を促していたグリーリッシュはシティのベストプレーヤーの一人だった。だが、太ももの負傷で1カ月を棒に振り、リヴァプール戦の前には嘔吐に悩まされるなど、フィットネス面で問題を抱えていた。

  • Pep Guardiola Manchester City 2023-24Getty Images

    クライシスではない?

    シティの最近の問題に関して別の見方をするならば、単に強敵との連戦に見舞われただけという見方もあるかもしれない。リーグ戦では質の高い相手と立て続けに4度対戦しているし、もちろんRBライプツィヒも曲者だ。

    それでも、一つの敗戦から調子を落とし、それを取り戻せなくなることは往々にしてある。2本のシュート数に終わったヴィラ戦では相手に22本をシュートを放たれた。『Opta』によれば、ペップが指揮を執った欧州5大リーグの試合におけるシュート本数でワーストに。被シュート数も同じくワーストの記録だ。

    グアルディオラはヴィラ戦後、「より良いチームが勝利した。彼らは我々よりも優れていた。正しい道に戻す方法を見つけるのが私の仕事」と語っている。

    現在のシティの不調は時間が解決するもので、“クライシス”ではないのかもしれない。だが、無視できず注視すべき事象である。グアルディオラはこれまで同様、その解決にエネルギーを注ぐだろう。