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女子初の「さいたまダービー」開催、埼玉県が育んだ女子サッカーの可能性

9月12日に開幕し、10月に入り第4節を迎えるWEリーグ。コロナ禍の緊急事態宣言による観客制限のなか、開幕試合であるINAC神戸レオネッサvs大宮アルディージャVENTUSは、5000人の制限に対し4123人が来場した。また、9月20日に行われた関東開催の3試合においては、前日のJ2の平均観客数を超える3380人となり、目標平均観客数5000人には到達していないものの、十分な手応えを見せている。

「なでしこジャパンの試合はテレビでよく見ていたが、現地での観戦はより楽しかった。スライディングなどの激しいプレーには、声が出そうになった」

「日本代表以外の選手にも、こんなにテクニックがある選手がいたのは知らなかった。代表選考も含めて、WEリーグ観戦が新しい週末の楽しみになる」

観戦者からはそんな声も聞こえ、女子サッカーの楽しさにサッカーファンが気付き始めている。

 ■記念すべき女子サッカーのダービー

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10月2日、WEリーグの歴史に刻まれるべき注目の一戦が行われる。女子プロサッカーリーグ初の同市で競い合うダービー戦、大宮アルディージャVENTUS対三菱重工浦和レッズレディースだ。

「サッカー特有の楽しみをついに女子でも体感できるのが嬉しい」

浦和サポーターとして、女子男子隔てなく応援しているというご夫婦はこう話す。

「数年J2から抜けられない苦しい時ではあるが、こうして女子選手たちが大宮に集まってくれたことが何より嬉しいし、サポーターとして応援したい。ぜひ私たちと一緒にさいたまダービーを戦ってほしい」。対する大宮サポーターもこのダービーに期待を寄せる。

■浦和と大宮、因縁のライバル関係

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「さいたま市」は、2001年に浦和市、大宮市、与野市が合併し、03年に政令指定都市となった。特に、隣接し合う浦和市と大宮市は、県庁所在地や新幹線が止まる駅の有無といった話題の街頭インタビューや、地元の小競り合いがメディアで取り上げられるほどのライバル関係にある。

もともとサッカーが盛んな埼玉県において、県の中心たる「さいたま市」にはサッカーをプレーする子どもが多い。浦和駅、大宮駅、いずれも駅に降り立てば、サッカーモチーフの旗や銅像が目に入るなど、サッカーが自然と街に根付いている。

そして、この2つの街に存在する男子チームは、もちろんライバル同士だ。

大宮、浦和、それぞれの一部サポーターに話を聞いたところ、現在、J2に所属する大宮アルディージャのサポーターは、J1時代シーズン通して成績は振るわなくとも、さいたまダービーで勝ち点を上回れば「今シーズンはよかった」と祝杯をあげてきたという。

一方の浦和レッズのサポーターは、「もっと上を見ている」と話すものの、試合当日にはユーモアセンスが光る“大宮煽り横断幕”をしっかりと掲げることもあったとのこと。そのくらい特別なダービーなのだ。

そんな両クラブの女子チーム、大宮アルディージャVENTUSと三菱重工浦和レッズレディースによる初のさいたまダービー。選手もフロントもファンも、この4年ぶりの一戦に心が燃えていることだろう。

■埼玉県における「女子サッカー」の歴史

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WEリーグには現在、浦和、大宮Vに加えてちふれASエルフェン埼玉(ホームスタジアム・熊谷市)も所属している。女子プロサッカークラブがひとつの県に3つも存在するのは全国でも埼玉だけ。埼玉がサッカーどころである一つの証とも言える。

驚くべきことに、大宮Vのホーム開幕戦での先発メンバー11人中6人が埼玉県トレセン(埼玉パロミーナ)OGだった。また、所属選手を見ると、浦和、大宮ともに埼玉県出身者が3〜4割を占め、“地元選手”を非常に多く有している。ここからも埼玉県と女子サッカーに強固な関係性があると分かる。

埼玉県には、現・なでしこジャパンメンバーでもある、長谷川唯(ウェスト・ハム/英国1部)や土光真代(日テレ・東京ベルディベレーザ)などを輩出した戸木南ボンバーズなど、女子リーグも代表も注目されなかった時代から存在する少女チーム(U-12)があり、他の都道府県に比べて少女サッカーはとても盛んだった。今でこそ全国大会常連高では当たり前の「高校寮生活」も、埼玉県においては珍しくなく、サッカーのために県外から訪れて生活を送る選手が多かったという。

こうしたバックグラウンドからも、県サッカー協会、競技を受け入れる環境、選手育成、全てにおいて「女子サッカー」に親しみ深い土台が埼玉県にはあると言えるだろう。

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大宮V総監督・佐々木則夫氏は語る。「大宮に女子サッカーチームを作るにあたり、背中を押した出来事がある。サッカーフェスティバルの際、一人の少女に『大きくなったら大宮アルディージャのユニフォームを着てサッカーをしたいけど、私は女の子だから着られない』と言われたことだ」と。

WEリーグ参加にあたって新設された大宮V。こうした思いをいだく地元の少女たちとともに、2日、隣町のライバルであり、昨年のなでしこリーグ覇者である、強豪・浦和をホームに迎える。

少年少女の夢、クラブの願い、地域のプライド。女子サッカーの血が色濃く流れるこの埼玉の地で、初めて開催されるさいたまダービーは“特別”以外の何者でもないのだ。注目の一戦は、NACK5スタジアムで14時キックオフ。

【試合情報】
2021‐22 Yogibo WEリーグ第4節
大宮アルディージャVENTUS vs 三菱重工浦和レッズレディース
日時:10月2日(土)14:00KO
場所:NACK5スタジアム大宮
TV放送:DAZN/テレ玉
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