20220329-vietnam-japan(C)YANMAR

東南アジア勢唯一のW杯最終予選進出。日本と対戦するベトナムサッカーの成長と背景を知る

 2021年9月2日にスタートしたカタール・ワールドカップアジア最終予選は29日、最終節を迎えることとなった。9試合目となる最後の一戦で日本代表が埼玉スタジアムに迎えるのはベトナム代表だ。

■国を挙げての強化策

 ベトナムは東南アジア勢で唯一、最終予選に進出しているチーム。ここまで1勝8敗とBグループ最下位に沈んでいるものの、2月の第7節では中国に3-1で勝利を収めている。これは東南アジア勢による「最終予選での初勝利」でもあった。この事実が示すとおり、ベトナムのサッカーは国を挙げての強化もあって、着実に成長を続けている。

 GOALベトナム編集部のホアン・ティエン記者は説明する。

「ベトナムサッカーの躍進は、2016年のAFC・U-19選手権でU-19代表が3位となり、翌17年のU-20ワールドカップ出場権を獲得したことが大きいでしょう。この偉業がモチベーションとなり、さらなる進化につながってきました」

「加えて、指導者の存在も大きいと思います。現在のA代表の指揮官でもあるパク・ハンソ監督は、17年末にVFF(ベトナムサッカー連盟)と契約を結んでU-23代表を率いると、18年のAFC・U-23選手権(現・AFCU-23アジアカップ)で準優勝を遂げました。この世代である1995年から1999年生まれの選手たちは、ベトナム代表の『ゴールデンエイジ』と呼ばれています」

 育成年代の強化の場も広がってきている。

「現在、PVF(地元財閥が設立したプロサッカー選手育成機関)始め、ホアン・アイン・ザライ、ハノイ、最近ではヌティフードなど各クラブのアカデミーが各地にあり、代表へ多くの選手を送り出しています」

■美しい練習場、日本企業の貢献

 そして、忘れてはいけないのが日本企業を含むスポンサーの貢献だ。ホアン記者は言う。

「日本企業の存在は、選手たちの生活の質から施設に至るまで、あらゆる面で良い影響をもたらしています。ご存知のように、ヤンマーはベトナムで最も美しい練習場を建設して支援しており、そのベトナムサッカーへの貢献を地元メディアも大きく報じています」

 東南アジア地域のサッカーの成長を願うヤンマーは、15年3月にベトナム代表とオフィシャルスポンサー契約を締結。天然芝の管理に必要なトラクターや、芝管理のノウハウの提供などの技術的な支援と、ベトナム人グラウンドキーパーの育成等を行ってきた。

 翌16年から『YANMAR FIELD』と名付けられたベトナム代表の公式練習場は、年代別含む、男女代表選手たちの練習拠点となっている。これら練習環境の改善が、前述したU-23アジア杯準優勝始め、東南アジアサッカー選手権、19年の東南アジア競技大会男女優勝、そして今回のW杯アジア最終予選への進出につながっているといえるだろう。

■海外移籍も噂される代表選手

 海外移籍を視野に入れるスター選手も育ってきた。今回、日本代表と戦うベトナム代表で注目すべき二人の選手たち、グエン・コン・フォン(背番号10)とグエン・クアン・ハイ(19番)だ。ホアン記者は二人の特徴をこう述べる。

「彼らはベトナムで最も人気のあるサッカー選手です。コン・フォンは強さ、スピード、技術が高く評価されています。しかし、創造性と仕事ぶりでは、クアン・ハイのほうが優れているでしょう。彼はベトナム代表にとって重要な選手で、常にスタメンに名を連ねています」

 現在27歳のグエン・コン・フォン(ホアン・アイン・ザライ)は、アーセナルFCと地元ホアン・アイン・ザライが設立したアカデミー出身。16年には水戸ホーリーホック、19年にはKリーグの仁川ユナイテッドとシント=トロイデンと海外でのプレー経験がある。

 そして、「ベトナムの王様」と呼ばれるようになったのが、24歳のグエン・クアン・ハイだ。

「かねてより、いくつかの海外チームからオファーがあったようです」とホアン記者は言う。タイのムアントン・ユナイテッド、バンコク・グラス、18年にはレノファ山口とアル・サッド、19年にはスペインのアラベスとコンサドーレ札幌。そして昨年はラトビアのリガFCからオファーを受けていたが、所属するハノイFCにとどまってきたとのこと。

 しかし、ここに来て様相が変わってきたようで、「ハノイとの契約延長にサインせず、海外でのプレー希望を表明しました。ベトナムではここ数週間この話題でもちきりです。信頼できる情報筋によると、彼がヨーロッパでプレーする可能性は高そうです」(ホアン記者)。

 そんな状況下で迎える日本代表戦となる。

「ベトナムは敗退が決まり、日本はW杯進出が決まっています。ある意味目標はありません」とホアン記者、しかしこの対戦には大きな意味があるという。

「ベトナムにとって、日本のような偉大なチームと対戦することは常に貴重な経験であり、名誉なんです。現在ヨーロッパでキャリアを積んでいるサッカースターたちと競い合うことになります。両チームとも、サポーターを楽しませるためにベストを尽くすことを願っています」

 アジア最終予選第9節。日本代表vsベトナム代表は本日19:35にキックオフの時を迎える。埼玉スタジアムで全力のプレーを見せるベトナム戦士たちにも、ぜひ注目してほしい。

広告

ENJOYED THIS STORY?

Add GOAL.com as a preferred source on Google to see more of our reporting

0