■カオスに包まれた準々決勝
熱狂の中で行われた肉弾戦に次ぐ肉弾戦……と言ってしまうと何か素晴らしいエンターテインメントのように感じるかもしれないが、そうではなかった。AFC U-23アジアカップ準々決勝、開催国のウズベキスタンと中東の強豪イラクが激突した好カードは、カオスな空気に包まれてしまった。
立ち上がりから熱かった。危険なプレーも出ていた。あるいはそこでレフェリーが厳しく行くべきだったのかもしれないが、結果として開始8分で試合の流れは決まってしまった。ウズベキスタンのGKが、寄ってきたイラクの選手を肘で殴り飛ばし、VARの介入を経て退場することとなったのだ。
彼が実際に退場したのは13分のことで、それによって生まれたPKが決まったのが19分のことだという公式記録が、現場のカオスを静かに表していた。そこから大荒れの展開となった試合は、結果的に一人少ないウズベキスタンがPK戦の末に勝ち切るというエモーショナルな展開になるのだが、モノを投げ入れるなどの狼藉行為に及ぶサポーターが出て、カメラマンが負傷するというあってはならない事態に至ってしまった。
AFC結果、この試合には3万人の大観衆が詰めかけていたが、次の準決勝、すなわち日本との試合で観客を入れることを禁じられることとなった。幸い日本から来ている方を含めて日本側サポーターは入場を許可される見込みではあるのだが、スタジアムの外側を含め、ちょっと不可思議な空気感になる可能性もありそうだ。
完全アウェイのスタジアムで戦う経験を若い選手たちには味わっておいてもらいたかった気持ちもあるが、ウズベキスタンの一部サポーターの凶行は許されていいはずもない。「仕方ない」というのが正直なところで、変に気持ちを左右されることなく試合に臨みたい。
■ウズベキスタンは、“個”も球際も強い
GOALピュアにサッカーの試合として観るなら、ウズベキスタンとの対戦はかなり興味深いものになるはずだ。アジアの多数派とは異なるサッカー観で育成された選手たちは、総じて基本技術が高く、肉体的に強健で、組織的なプレーも見せる。イラク戦では暴走してしまったとはいえ、球際の激しさや強さも武器である。
また、「スピードや高さといった特長のある選手がいる」と大岩剛監督が語るように、“個”としても厄介な選手が多い。
その上での最注目は、身体的な特長を持つ選手を操る側の10番、ジャロリディノフ。MF藤田譲瑠チマは「自分が潰せたらいい」と意気込むが、ここのマッチアップは勝敗を左右するポイントとなりそうだ。また左SBの加藤聖は「自分は背がちっちゃいので、シンプルにクロスを入れてくることもあると思っている」と語るように、空中戦での強みを押し出してくる可能性もある。個々の対応はもちろん、こぼれ球の処理やカバーリングなどベーシックな部分を改めて徹底したい。
また、日本は選手3名が新型コロナウイルスに感染し、MF三戸舜介が出場停止。幸いにも稼働できないような負傷の選手はいなそうだが、選手層がかなり薄くなっているのは否めない。ベンチに座るフィールダーは5人交代枠を処理するのにギリギリの人数となりそうだけに、選択肢が少ない中でいかに有効なカードを切れるかという監督采配も問われることとなる。
■今大会で初めてとなる同世代対決
AFCもっとも、チームの雰囲気が何か暗くなっているなどということはまったくない。やるべきことは明確で、モチベーションも高い。大岩監督も、疲労の蓄積やメンバーの減少は「そこは勝ち残っていくなら、ノーマルなこと」と意に介していない。
「アクシデントは当然ある中でいろんな選択肢を持たないといけないと思って来ている」(大岩監督)
また、今回の準決勝は今大会で初めてとなる同世代対決でもある。ウズベキスタンが日本と同じく、パリ五輪世代でこの大会に臨んでいるからだ。今までは年下というある種のエクスキューズもあったわけだが、この試合に関してはそうではない。
大岩監督もパリ世代で参加してきたウズベキスタンのことを「(メンバーの)一覧を見たときから意識していた」と語り、この試合をパリ五輪予選で出場権を争うであろうライバルとの前哨戦と位置付ける。
「良いグループになってきた」と指揮官が語るように、確実にチームとしての階段を登ってきたU-21日本代表が臨むセミファイナル。パリ世代同士の対決であり、開催国を向こうに回しての戦いであり、そして決勝進出を懸けた大切な試合となる。
日本時間16日深夜1時から始まるのは、そんなゲームだ。
[試合情報]
AFC U23アジアカップ2022
準決勝
U-21日本代表 vs U-21ウズベキスタン代表
2022年6月15日(水)25時(16日午前1時)キックオフ
DAZN独占配信
