■冨安健洋『GOAL』独占インタビュー
冨安健洋にとって、2022-23シーズンは決して簡単なものではなかった。
絶好調アーセナルでの2シーズン目、ベン・ホワイトの右サイドバックへのコンバートによってポジション争いが激化すると、チーム状況や相手に合わせて様々な役割にチャレンジすることに。それでも依然としてチーム・ファンも頼れるプレーを見せていたが、3月半ばに右膝の負傷で長期離脱。昨季に続いて終盤戦の長期離脱により、結局そのままシーズン中の復帰は叶わなかった。
2年続けてシーズンの最も重要な時期に戦列を離れ、さらにチームとしても最終的にマンチェスター・シティに逆転優勝を許すなど、悔しい1年となった冨安。それでも、本人は「2、3年後に活躍できれば今のケガは誰も覚えていない」と前を向く。若くして欧州の舞台に飛び込み、強烈なプレッシャーの中で戦い続けてきた24歳が「トップレベルで戦い続ける」ために必要なメンタリティ、そして「世界トップ」のアーセナルファンについて思いを語る。
インタビュアー=吉村美千代
構成・編集=河又シュート
※インタビュー実施は6月
■「試合だからといって特別何かするというわけじゃない」
(C)Getty Images守備面で様々な役割をこなし、アルテタ監督の信頼も得ていた冨安。しかし、3月16日のヨーロッパリーグ・ラウンド16のセカンドレグ、スポルディングCP戦で右ひざを負傷。手術を受け、そのままシーズンを終えることとなった。
――シーズン終盤に負傷されてしまいましたが、リハビリ期間にどういったことを考えていましたか?
結局そういうケガだったり、ネガティブな事象はありますが、最終的に成功すれば、ネガティブなものは“過程”になります。2年後や3年後、例えばですけど、3年後にワールドカップがあって、そういった場所でしっかり活躍して成功すれば、今のケガなんて誰も覚えていない。「最後のところで成功するための過程」と捉えていました。
――負傷された後、冨安選手の『Instagram』の投稿に多くの選手から回復を祈るコメントが寄せられました。
僕がケガした時だけじゃなく、他の選手に対しても同じようなことがありますね。若い選手も多いですし、本当に雰囲気が良いチームなんです。ワイワイしながら、「やる時はやる!」という感じ。ただシンプルに、1人の選手としてそう言ってもらえることは嬉しいですし、結局ピッチ上で価値を示すのがサッカー選手なので。早く戻ってチームの助けになりたいです。
――普段の生活から練習や試合に切り替えるためのモチベーションをどう作っていますか?
結局、周りの選手を見ているとそんなに大きく変わらないというか、良い意味で淡々としてるんです。試合だからといって特別何かをするというわけではなく、練習も試合も普段も変わらないんです。
というより、そういう域にいかないと、1年間通してトップレベルでプレーできないと思います。だから特別意識し過ぎない、いつも通りやるっていうところは1つ大事な要素かなと。
■「世界的に見てもトップのファン」
(C)Getty Images19年ぶりのプレミアリーグ制覇への期待が膨らむパフォーマンスに加え、アルテタ監督をはじめ選手たちも積極的にファンに発信・コミュニケーションをとったことで、エミレーツ・スタジアムはかつてないほど素晴らしい雰囲気に包まれていた。そのサポートは、ピッチに立つ選手たちにもしっかりと届いている。
――今季のパフォーマンスや結果で、本拠地エミレーツ・スタジアムは最高の雰囲気だったと思います。チームや冨安選手自身悔しさはあると思いますが、ファンの中でも「2022-23シーズンの雰囲気は最高だった」と言う人が多かった。ファンとの関係性はどう感じていらっしゃいますか?
間違いなく、世界的に見てもトップのスタジアム、トップのファン・サポーターだと思っています。というのも独特というか、“失点した後にホームサポーターが沸くスタジアム”ってはなかなかないと思っていて。アーセナルですら数年前まではそんなことなかったですし、そういったものを実際に体感して、応援してくれているファン・サポーターのために「本当に勝ちたい」と思えます。一緒に戦っている感じを心から味わうことができる。ピッチ上では「彼らのためにプレーして勝つ」だけだと思います。
――ご自身のチャントは嬉しいですか?
嬉しいですね。加入してすぐチャントを作ってくれて。本当にありがたいです。でも、今は自分自身に相応しくないというか、もっともっとやらないといけないと思っています。シンプルにケガもあって、パフォーマンスも満足できないですし。そういう意味で次の年は勝負の年になりますし、やらないといけないと思っています。
――来シーズンは、ご自身にとっても初のCLに挑戦します。どういった姿を見せたいですか?
個人的に初めてのCLですし、特別な舞台、夢見てきた1つの舞台ではあります。でも、「アーセナルのユニフォームを着てピッチに立つ」というところは変わらないので、このエンブレムのためにプレーする。あとは本当に本質的なところ、結局ピッチ上でどれだけ自分の価値を示せるかっていうところなので。なのでやることは変わらないかなと思います。
――最後に、アーセナルファンへのメッセージをお願いします。
2022-23シーズンは優勝できなかったですけど、優勝できるポテンシャルは示せたと思いますし、間違いなく新シーズンはより良いチームになると思っています。一緒に優勝を、プレミアリーグ優勝を味わうことができたらいいなと思います。
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冨安健洋(とみやす・たけひろ)
(C)ASICS1998年11月5日生まれ、24歳。福岡県福岡市出身。アビスパ福岡ユース→アビスパ福岡→シント=トロイデン→ボローニャ→アーセナル。プロデビューからセンターバックでプレーし、日本代表でも同ポジションで起用されることも多いが、シント=トロイデン時代に起用された右サイドバックで高く評価され、ボローニャではDFラインすべてでプレー。アーセナルでも左右両サイドバックとして活躍するなど、海外ではサイドバックの選手として評価されることが多い。プレミアリーグ42試合出場、セリエA64試合出場(8/7時点)。
