c-ronaldo(C)Getty Images

C・ロナウドに再び銃口が向けられるーーカタールは自身のW杯での成果を左右する大会に

クリスティアーノ・ロナウドは長い間多くの人を刺激してきたが、それと同じくらい多くの人を怒らせてきたことを自覚している。以前ロナウドはイタリア『La Repubblica』に対してこう語ったことがある。

「銃口を向けられ続けていることは分かっている。皆、僕がPKを外したり、大事な試合で失敗したりするのを待っているんだ」

幸いなことに、月曜日にカタールで行われた記者会見に即席で登場した彼は、今でも「弾丸のような強さ」を感じていることを改めて我々に教えてくれた。

確かにロナウドは、ここ数週間で数々の批判を受けてきた。マンチェスター・ユナイテッドが勝利したトッテナム戦では、まず途中出場することを拒否し、そして試合終了を待たずにベンチを後にした。

ロナウドの振る舞いはプロフェッショナリズムに欠くだけでなく、全く受け入れられないものであった。チームが演じた今季最高のパフォーマンスに水を差したとして、批判を浴びたのも当然のことだった。

しかし、謝罪はなく、ある種の告白があっただけだった。ロナウドは「その場の勢いで」2、3の誤った決断をしたことを遠回しに認めた。その後、ピアース・モーガンとの驚くべきインタビューで、ユナイテッドのボス、エリック・テンハーグを尊敬していないことを明かし、さらに大きな問題が起こった。

リオ・ファーディナンドでさえ、もはや元チームメイトの行動を擁護できないと認めたほど、不用意な行動であった。彼の意図は明確で、ユナイテッドに自分を契約から解放させることだった。そして、火曜日の夜、彼はその望みを叶えた。

ロナウドの退団への対応のひどさに衝撃を受け、完璧主義者として知られ、慎重に作られたイメージは崩れ去った。結局は人間なのだと理解された。

だが、全く驚くべきことかというとそうではない。ロナウドは以前にもタッチラインの外でかんしゃくを起こしている。再びそうなる可能性は十分にあったわけだが、今回はひとつだけ大きな違いがある。

ロナウドがこれまで見せたことのないようなフラストレーションがあるのだ。その理由を理解するのは簡単だ。ロナウドの人格が問われることはこれまでにも何度もあったが、チームにとっての価値が問われることはなかった。

だが、今季のチームはロナウドをベンチに置いた方が、スタメンとして起用するよりはるかによいパフォーマンスを見せている。これはロナウドのキャリアを通じて初めてのことで、戸惑いが苛立ちにつながっている。

しかし、本当に辛いのは、今夏オールド・トラッフォードを去る必要があるとわかっていながらも、欧州エリートクラブから具体的なオファーが1つもなかったことだ。

このストライカーは、もはやトップクラブでは必要とされていないのだ。大きなエゴを持つロナウドにとってこの事実は大打撃だっただろう。

さらに、移籍が決まらなかったことで、今シーズンCLでプレーするチャンスを断たれただけでなく、最後のW杯への準備も狂わせてしまった。

もちろん、ロナウドのフィジカル面はいまだに素晴らしい。だが、ポルトガル代表にとっては、ロナウドが試合勘を研ぎ澄ませられないままカタール入りすることは深刻な不安材料だ。

実際、代表でも先発起用されるかどうかは、自国でも議論の的になっている。

Cristiano Ronaldo Portugal Spain 2022 GFXGetty/GOAL

「ロナウドを減らして、もっとポルトガルを」という見出しをつけたのはポルトガル紙の『A Bola』。9月に行われたネーションズリーグでのスペイン戦前のことだ。

マウリツィオ・サッリがユヴェントスを率いていた期間で指摘していたように、チームにロナウドを入れると、ロナウド中心にチームを作らざるを得ないのである。サッリは『スカイスポーツ』でこう語っている。

「時々問題を引き起こすが、それを100%解決する王者を保有している。他のチームメンバーは、彼を中心に動かないといけないんだ」

しかし、オールド・トラッフォードで遅ればせながら気づいたように、一人の選手に集中することがグループにとって常に良いこととは限らない。

得点力不足に陥り始めると、特にこれが問題になる。ロナウドは今シーズン、プレミアリーグで1得点しか挙げていない。ポルトガル代表でも直近9試合で挙げた得点は「2」だ。

それでも、5度のバロンドール受賞者がガーナ戦でも代表の攻撃を牽引することになるはずだ。だが、その可能性が高まっているのは、ディオゴ・ジョタがケガで欠場を余儀なくされ、ジョアン・フェリックスがアトレティコ・マドリーでパフォーマンスを落としていることが理由だ。

フィジカル面と同様に、ロナウドのメンタル面のコンディションも関心の対象だ。ブルーノ・フェルナンデスは、ユナイテッドのチームメイトと代表で再会したとき、ほとんど嬉しそうではなかったし、ジョアン・カンセロもロナウドとはあまり関わりたくないと思っているようだった。

20年に渡って頂点に君臨し、常に成功を収めてきたロナウドだが、常に批判にさらされてきた。その対処はこれまでほぼ完璧で、「ゴール」という考え得る限り最高の方法で批判を鎮めてきた。

もちろん、ロナウドは批判に納得がいかなければ、声も上げてきた。

「学校で一番の劣等生に『一番の優等生は好きか』と聞いてみればいい。嫌いだと言うだろうから。僕はすべてを手にしている。それで、僕のことを悪く言う人のことを気にするだろうか? 夜はよく眠れている。どうぞ(批判を)続けてくれ。僕は口を閉じて勝ち取り続けるだけだから」

だが、ロナウドのような人物にとっても、常に自分を守らなければいけないことは負担になる。『El Pais』に対してロナウドは次のように語っている。

「批評家は、僕のことを『悩みや不安を抱えることがない人』、『悲しむことがない人』だと思っている。皆お金があれば悩みなどないと思っている。あれだけの大金を持っているのに、クリスティアーノが悲しむことなんてあるだろうか、ってね」

「毎年自分がとても強い人間だと示さなくてはいけないようで、疲れている。難しいことだよ。『頼むよ、ほっといてくれ』というときもあるだろう」

ロナウドはここ1か月の間に何度かそのような時期を耐えてきた。スポーツ界で最も脚光を浴びる舞台に戻るにあたって理想的とは言いがたい。

Cristiano Ronaldo Portugal 2022 GFXGetty/GOAL

カタールでは世界中の目がロナウドに注がれ、自身の才能に見合ったパフォーマンスを出さなければならないという強いプレッシャーが存在するのだ。

だがロナウドは、W杯でそれほど成功を収めているわけではない。

今回が記録に並ぶ5度目のW杯出場となるロナウドだが、初出場の際が最も成功した大会であった。2006年のドイツ大会でポルトガルは準決勝まで進出している。

だが、それ以来ポルトガルはラウンド16を超えることができていない。それどころか、2014年には屈辱のグループステージ敗退に終わってしまった。

ロナウド自身はW杯で7度得点している。前回大会でスペイン代表を相手に奪ったハットトリックもその中に含まれている。その夜、ソチでは素晴らしい輝きを放ち、その場に立ち会えたファンは忘れられないものとなったはずだが、ロナウドはグループステージのことを思い出すことはないだろう。

実際、彼にはもう証明する必要のあることなど残っていない。この男は、クラブでも代表でも欧州王者を経験しているのだ。

だが、ロナウドの性格を考慮すれば、最後のW杯ですべてを出し切る覚悟でいることだろう。自分がこれまで以上に厳しい目で見られていることもわかっている。批評家は失敗するのを待ち望み、銃口は自身に向けられているのだ。

ロナウドのピッチ上での“対応”こそが、自身の価値を示すものとなるだろう。

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