Roger Schmidt 2024(C)Getty Images

日本に感じる“疑いの余地がない”ポテンシャル。Jリーグアドバイザー就任のシュミット氏「中国のやり方だけは…」

ドイツ人指導者ロジャー・シュミット氏が先日、Jリーグのグローバルフットボールアドバイザーに就任した。ドイツ誌『キッカー』のインタビューで、その理由と狙いを語っている。

現在58歳のシュミット氏は、これまでにレッドブル・ザルツブルク、レヴァークーゼン、北京国安、PSV、そして2024年8月まではベンフィカの監督を歴任してきた。レッドブル流のゲーゲンプレスを重視するスタイルの代表的な指導者として知られ、ベンフィカ退団後にはドイツ国内のRBライプツィヒやバイエルン・ミュンヘン、ボルシア・ドルトムントなどから打診を受けていたと報じられていた。

しかしシュミット氏は、それらのクラブを率いることを真剣に検討しなかったという。監督ではなくアドバイザーとしての道を選んだ理由について、「私はサッカーを愛しているが、それと同じくらい“もうひとつの人生”も愛している」と前置きすると「2022年にベンフィカと契約した時から、その後は一度休みを取りたいと考えていた。エネルギーが尽きたとか、休息が必要だと感じたわけではない。ただ、人生のほかのこと、特に家族のために時間を使いたいという思いがあった」と説明した。

一方で、Jリーグのアドバイザー就任については「この仕事は非常に濃密だが、性質が異なる。クラブチームの現場業務ではないが、それでも大きな挑戦である」と強調し、こう続けている。

「日本のリーグは、国全体のサッカーを根本から発展させようという強い意欲を持っている。重要なのは、監督やスポーツディレクター、そして特に育成部門の責任者たちを育てていくことだ。変化を起こそうというそのビジョンと情熱には強く惹かれた。私がこれまで監督として赴いた多くのクラブも、“サッカーとメンタリティを変えたい”という思いを抱えていた」

招聘期間は2026年6月までの9カ月とされているが、同氏は「特に育成年代の発展は9カ月で達成できるものではない」と認めつつ、次のように語る。

「ただし、9カ月で“トレーニングのあり方”についての考え方を変えることは可能だ。我々は、将来的な発展につながる取り組みを打ち出すことができる。日本に大きなポテンシャルがあることは、まったく疑いの余地がない」

シュミット氏は、日本サッカーの課題の一つとして、若手選手への信頼の薄さを挙げる。「これは中国で指導していたときにも感じたことだが、あの国でも若い選手たちはトップチームで十分に信頼されていなかった」と指摘し、中国がスター選手や著名監督を高額で招いたのに対し、日本は同じ道を歩むべきではないと考えているという。

「中国は“ビッグネーム”によってリーグを発展させようとしたが、当然ながらうまくはいかなかった。外国人選手や監督が去れば、サッカーは元の状態に戻ってしまうからだ。私がJリーグに勧めたいのは、まさにそのやり方を選ばないことだ。短期的な発展を巨額の資金で押し進めるのではなく、監督やスポーツディレクター、育成の仕組みそのものを改善し、最終的に選手の質を高めていく。その道こそが持続的な成長につながり、私の理想とも完全に一致している。」

さらに「私は今、非常に意義のある仕事に取り組んでいるという確信がある」とも語るシュミット氏。「もし監督として働きたいのであれば、とっくにそうしていただろう。私はいま、別の次元で“発展を促す”ことに貢献したい」と述べ、仮にクラブからオファーが届いても、その誘いを受けるつもりはないと断言した。

広告