4月1日のスペイン国王杯(コパ・デル・レイ)準決勝2ndレグ、サンティアゴ・ベルナベウを舞台としたレアル・マドリー対レアル・ソシエダは4-4のドローで終了し、2戦合計5-4でマドリーが決勝進出を果たした。日本代表MF久保建英は先発出場でアシストを記録するなどチームに貢献し、延長線前半までプレーしている。
2月26日に行われた1stレグは、19分のエンドリッキのゴールによって1-0でマドリーが先勝。それから1カ月以上の間隔を空けて行われるこの2ndレグ、ソシエダは久保、オヤルサバル、スビメンディら起用可能なだけの主力を先発させて逆転を目指す。
対して、チャンピオンズリーグ、ラ・リーガ含めてクラブ史上初の三冠達成の可能性を残しているマドリーは、それゆえの過密日程のためにエンバペやフラン・ガルシアを温存してベンチスタートに。1トップには1stレグ同様にエンドリッキが起用され、久保と相対する左サイドバックには本職ボランチのカマヴィンガを配している。
前半、立ち上がりにゴールを予感させたのはマドリー。9分、ペナルティーエリア内でゴールに背を向けたエンドリッキが、ボールを浮かせるや否や自ら跳び上がって左足のオーバーヘッドキックを放つ。しかしこのボールは枠の右に飛んでいる。マドリーはさらに10分、ペナルティーエリア内左のヴィニシウスが右足でボールを叩いたが、こちらはGKレミーロの横っ飛びに阻まれた。
そうして16分、スコアが動く。決めたのは流れに反する形で、ソシエダだった。スビメンディの浮き球のパスを前線のパブロ・マリンが頭で左サイドに送り、バレネチェアがDFラインを突破(マドリーはルーカス・バスケスが内に入り過ぎてバレネチェアをフリーにし過ぎていた)。ソシエダの背番号7はそのままペナルティーエリア内左に侵入して、左足のシュートでGKルニンを破っている。
2戦合計スコアはこれで1-1の同点となったが、30分に再び均衡が破れる。ホームのマドリーがヴィニシウス、エンドリッキの圧倒的な個人技からゴールを決めた。
左サイド、タッチライン際のヴィニシウスが右足アウトサイドで放った糸を引くようなスルーパスから、エンドリッキが最終ラインを突破。エンドリッキはそのままペナルティーエリア内に入り込むと、飛び出してきたレミーロを眼前にして左足でループシュートを放つ。ボールは緩やかな曲線を描いて、ソシエダ守護神の頭上を越えて枠内に収まった。
再び1点ビハインドを負ったソシエダ。久保はというと、ビッグマッチで発揮する勝負強さがここまでは影を潜めている。スピードも守備力も十分なカマヴィンガを相手にドリブル突破をほとんど見せられず、またヴィニシウスの対応に苦慮するアランブルをカバーするため、後方に戻ることも少なくなかった。前半終了間際には右サイドからペナルティーエリアにカットインして、後方から体に手を回してきたヴィニシウスに倒されたことを主張したものの、PKが取られることはなかった。
後半はマドリーとソシエダがそれぞれ追加点、同点を目指して攻め合う展開。マドリーのアンチェロッティ監督は65分にエンドリッキをエンバペに代え、前者への称賛と後者への期待によってスタジアムを大きく沸かせている。
しかし、その後に攻勢を見せたのはソシエダだった。70分に迎えたCKの場面、久保の送ったクロスからスビメンディがボレーシュートを放つも、このボールはGKルニンの好守に遭う。絶好のチャンスを逃したものの、その2分後、再び同点に追いつくことに成功した。ペナルティーエリア内右に侵入した久保が、相対するカマヴィンガを縦に抜いてクロス。このクロスは弾かれたものの、エリア内右のパブロ・マリンがこぼれ球を拾うと、久保に対応したばかりで浮き足立っていたカマヴィンガを突破して再度クロス。このボールが、アラバのオウンゴールを誘発している。
ソシエダの攻勢は衰えず、80分には一時逆転を達成する。途中出場のモドリッチが不用意に右足で触れたボールを久保が奪うと、そのまま右サイドを突破してペナルティーエリア内右に侵入。久保のグラウンダーのクロスに、2列目から走り込んできたオヤルサバルが左足で合わせると、ボールはアラバに当たってコースが変わり、枠内に転がった。得点はオウンゴールではなくオヤルサバルのものとなり、久保にはアシストがついている(今季公式戦の成績は7得点4アシストに)。
久保がゴールの直後に走り回るなどソシエダ陣営は大歓喜。だが、ここはサンティアゴ・ベルナベウ。マドリーが数えきれないほど劇的逆転勝利を収めてきたスタジアムである。彼らはこの夜も“逆転力”を発揮する。まず81分、ヴィニシウスが左サイドを突破してクロスを送ると、ベリンガムがその場で跳び上がり右足ダイレクトボレーを突き刺して同点。そしてその4分後には、ロドリゴの右CKからチュアメニがヘディング弾を決めて、2戦合計スコアを4-3とした。
マドリーが逆転した際の名物チャント、「コモ・ノ・テ・ボイ・ア・ケレール(どうして愛さずにいられようか)」が歌われるベルナベウ。しかしドラマはまだ終わらない。93分、ソシエダが流れに反して、執念の同点ゴールを決めたのだ。
久保がカマヴィンガに倒されたことで、右サイド深い位置でフリーキックを獲得。キッカーのセルヒオ・ゴメスが送ったクロスにオヤルサバルが頭で合わせると、ボールはルニンの迂闊な飛び出しで無人となったゴールに収まっている。試合は結局、延長戦に突入することに。アンチェロッティ監督は、後半に入って久保に手を焼いていたカマヴィンガ、さらにアラバをフラン・ガルシア、リュディガーと代えて左サイドの守備を建て直した。
延長戦はマドリーの一方的なペースとなり、まだまだ元気なエンバペが次々とフィニッシュに持ち込んでいくが、決め切れない。ゴールが生まれないまま最初の15分間は終わり、アンチェロッティ監督はロドリゴ、ラウール・アセンシオとの交代でブラヒム、ギュレルを投入。対してソシエダのイマノル監督はオヤルサバル、久保をマリエスクレナ、オスカールソンに代えた。久保は時間が経つに連れてプレーが良くなり、後半には3ゴールに絡む活躍で(オウンゴールの場面で起点となり、オヤルサバルの1点目をアシストし、オヤルサバルの2点目のきっかけとなるFKを獲得)、マドリーに食い下がるチームを牽引している。
そして115分、この試合の合計8ゴール目が、最後のゴールが、決勝ゴールが決まった。決めたのはマドリーだ。右CKの場面、ギュレルが左足で蹴った精度の高いクロスから、リュディガーが豪快なヘディングシュートを放ち、レミーロを破っている。試合は5-4で終了のホイッスルが吹かれ、マドリーが激闘の末、2シーズンぶりにコパ決勝進出を果たしている。
なお久保をはじめとしたソシエダの面々は試合終了後、「シ・セ・プエデ(イエス・ウィー・キャン)!」を何度も叫ぶなど、力の限りチームを応援していたアウェースタンドのサポーターのもとに駆け寄って、感謝の気持ちを伝えていた。サポーターは青白のマフラーを掲げ、再び大声でチャントを歌い、最後まであきらめずに戦った選手たちを誇っている。




