24日のラ・リーガ第2節オビエド対レアル・マドリー(0-3)で、FWヴィニシウス・ジュニオール、FWキリアン・エンバペに対して人種差別的なチャントが行われていた。
スペインでは2025年5月、フットボールスタジアムでの人種差別的チャントについて初めて有罪判決が下された。2022年12月のバジャドリー対レアル・マドリーで、ヴィニシウスに対して「クソの黒人」「売春婦の息子(クソ野郎などの意)」「ブラック」「クソッタレのオカマ野郎」などと叫んだバジャドリーのマフラーを着用した5人が、ヘイトクライムによって1年の懲役刑、1080〜1620ユーロの罰金を科されている。
この歴史的な判決により、スペインのサッカースタジアムにおける差別的なチャントは聞こえなくなるとの期待があったが、まだ完全に消えたわけではなかった。
スペインでラ・リーガの試合を放送している『モビスタール・プルス』の番組“エル・ディア・デスプエス”のテレビカメラは、オビエド対レアル・マドリーでヴィニシウス、エンバペに対して人種差別的チャントが浴びせられる様子を捉えていた。
2万9758人が観戦した同試合では、少なくとも2人が犯罪となる差別行為に及んだ。チャントがあったのは2回で、まず前半にエンバペが先制点を決めた際、猿の鳴き声を模した「ウー、ウー、ウー」が聞こえている。そして後半、ヴィニシウスが途中出場でピッチに立った際にも、誰かが同じように猿の鳴き声を真似ていた。これからスペインプロリーグ機構ラ・リーガが、スタジアムに設置している多数のカメラでもって、そのようなチャントを行った人物たちを特定することになるだろう。
なおヴィニシウスはそのチャントを聞いたためか、オビエドのスタンドに向けて二本指を立てて“2部へ落ちろ”のジェスチャーを行ったり、手を耳に当てるポーズをしたりしていたが、これについては否定的な見解も示されている。“エル・ディア・デスプエス”に出演していた実況者のカルロス・マルティネス氏は、番組内で次のように語った。
「ヴィニシウスがあのような行為をして、観客の何かしらのリアクションを求めたとしても、事態を鎮静化させる助けにはならないだろう」
「ヴィニシウスのように反抗心があり、どんなことにも屈しない人間も素晴らしいと思う。だが、そういったことに対して、どう対応するかはよく考えないといけないのではないか。現状では、火にガソリンを注いでいるだけのように思える」
また解説者のアルバロ・ベニート・ビジャール氏は、差別が絶対に許されないことだとしても、その報復としてスタンド全体を挑発するような行為は控えるべきと意見している。
「ヴィニシウスが何をしていたとしても、差別的チャントは絶対に正当化できないものだ。差別的チャントは訴えられて然るべきで、絶対に根絶しなければならない。とはいえ、ヴィニシウスがスタンドの不特定多数に対して挑発などの行為をしても、憎悪の連鎖が起きるだけだと思う」




