■“スーパーマン”
2017-18シーズン、マンチェスター・シティはプレミアリーグ史上初めて勝ち点100に到達し、圧倒的な強さでリーグを制した。そしてそのシーズンの途中で、ジョゼップ・グアルディオラ監督はチームの強さの秘訣について「このチームにはスーパーマンがいるからね」と告白している。
「誰もがそれはラヒーム(スターリング)やダヴィド(シルバ)、ケヴィン(デ・ブライネ)、セルヒオ(アグエロ)だと話すだろう。そうだね、彼らもそれに値する」
「だが、これまでやってくれたことで全面的にリスペクトすべき選手を1人挙げるとすれば、ニコラス・オタメンディだ。私が見てきた中でも最も競争力ある選手の1人であり、非常に重要な存在だ。ニコがいなければ、これは不可能なことだった」
Getty■オタメンディ全盛期
それから約4年後、アルゼンチン代表についても全く同じことが言える。2022年カタール・ワールドカップで決勝まで進んだ彼らにとって、このセンターバックは不可欠な存在なのだ。
確かに35歳の主将リオネル・メッシが全試合フル出場していることは、驚異的だ。だが同時に、もはや驚くべきことではない。彼がこの世の常識に当てはまらない存在であることは誰もが知っている。彼のような存在に、一般的なルールは通用しない。
だがオタメンディもまた、1秒たりとも休んでいないのだ。これは衝撃的である。
2020年、シティがルベン・ディアスの取引の一部としてベンフィカに放出した時、すでにオタメンディの全盛期は過ぎたかに思われていた。ペップは「たとえ筋肉に問題があっても、常に戦ってくれる存在だ。だが、もっと若い選手が必要と考えた。彼はもう30歳を過ぎているしね」と話している。
だがそれから2年後の今、オタメンディは驚くべきことに全盛期を迎えているのだ。
今季のベンフィカは、チャンピオンズリーグ予選から始まり、グループステージではユヴェントスを差し置いて決勝トーナメント進出を果たした。そしてその躍進の中心となっていたのが、オタメンディだった。
最初はベンフィカファンにも厳しい批判を受けていたし、カタール・ワールドカップでもアルゼンチンの弱点と見る向きも強かった。「もうだめなのかも」という声も少なくはなかった。
しかし、カタールでのオタメンディは1つも間違えていない。スタッツが示すように、文字通り一度も守備時におけるミスをしていないのだ。他のどのディフェンダーよりも空中戦を制し(20回)、鋭く強烈な意思を感じるタックルには記者席からも感嘆の声が上がる。最後方で圧倒的な存在感を放っている。
そしてまた、ビルドアップでの貢献も光っている。ペップはフィジカルとともにそのメンタリティを絶賛していたが、「ボールを持っているときも勇敢だった」と話す。そしてそれは。カタールでも確認できる。アルゼンチンで最多のパス成功数(462本)、ロングパス成功数(11)を誇り、オーストラリア戦ではメッシの先制点もアシストしていた。
多くのファンが、「クリスティアン・ロメロとリサンドロ・マルティネスの控え」としか見ていなかっただろう。そんなオタメンディが残すスタッツは驚異的だ。
Getty■「まだ終わっていない」
そして日曜日、彼はワールドカップ決勝で国際試合100試合目の出場を果たすことになる。
彼はクロアチア戦後に「なんて美しい狂気なんだ!」と叫んでいたが、この旅路は傷心に終わる可能性だってある。フランスの攻撃陣は強烈だ。止めるのは簡単ではない。どんな状況でも道を切り開く力を持っている。
しかし、オタメンディはルサイル・スタジアムでこう誓った。「我々はベストを尽くす。26人の戦士たちからなるチームなんだ。国民のため、自分のために戦うんだ」と。
確かに、厳しい戦いになることは間違いない。だが、間違いなく勝てる戦いでもある。決勝に立つアルゼンチンの選手において、メッシだけが百戦錬磨なわけではない。彼だけが“スーパーマン”ではない。ニコラス・オタメンディもまた、偉大なるキャプテンとともに、このワールドカップで物理学の法則に挑んでいるのだ。この2年間で何を教わったかと言えば、それは明らかに「まだ終わっていない」ということだった。

