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「フットボールを取り上げられた」アンドレ・オナナ。ドーピング疑惑による出場停止からピッチに戻ってくるまで/独占インタビュー

一見取るに足らないように思える選択が、人生を大きく変えてしまうことがある。

2020年10月に体調を崩したアンドレ・オナナは、不調を和らげるため薬を求めて棚の中を探した。

急いでいたため、間違えて妻の処方薬「ラシックス」を服用してしまった。このちょっとした行動が彼のキャリアを脅かし、名声を地に落としてしまったのだ。

以下に続く

UEFA(欧州サッカー連盟)は、このアヤックスGKが禁止薬であるフロセミド(※製品名ラシックス)を間違えて服用したことを認めた上で、出場停止を命じた。最初は12か月間だったが、主張が認められ9か月に減らされた。

停止期間の短縮は、愛するスポーツから追放され打ちのめされていたオナナにとって、少々ではあるものの慰めになった。

「友人、家族、フットボールから離れて過ごした。この期間は僕の人生の中で暗く厳しいものだった」。オナナは『Goal』の独占インタビューに対してこう答えた。

「あの出来事についてこう言っておきたい。ああいったことは誰にでも起こりうるから、若い人たちは気をつけないといけない。クソみたいなことが人生で起こってしまうのだから、本当に気をつけないと」

「アレが起こった時は『タバコを吸ったことも酒を飲んだこともないのに薬物で追放されたなんて、両親にどうやって説明しよう』と思ったよ。シーシャの味も知らないのにね」

「両親にとっても辛いものだった。僕のことを知っている人たちが聞いてきたんだ。『プロ選手だと思っていた彼が、薬物で人生を棒に振ってしまうなんて、何事なんだい』ってね」

「間違いから起こったことだし、UEFAもその事実は承知した。けれどそれではどうにもならなかったんだ。もう僕は罰を受けたんだよ」

■長い個人練習からの公式戦復帰

onana-traning(C)Getty Images

措置が下されるまで、アヤックスで獲得できるタイトルを総なめにしてきたオナナ。欧州の舞台でも、チャンピオンズリーグでは準決勝に進出、ヨーロッパリーグでは決勝でプレーした。

公式戦に出場できなくなってからは、かつて所属していたバルセロナに近いサロウで個人プログラムに取り組んでいた。「いろいろなことが禁止されていたんだ」とオナナは説明する。

「どこであってもスタジアムに行くことはできなかった。何をするにも自分で予約しないといけないし、アヤックスのコーチと練習することも許されていなかった。プロのコーチからの指導を受けてはいけなかったんだ。こういったことを9か月間すべて禁止されていた。何もかも禁止されてしまったから、最初のうちはフットボールから引き離されてしまったように感じたよ」

「『うわっ、なんて厳しいんだ!』という感じだった。そして、答えを見つけ出した。個人で契約しているGKコーチと、理学療法士、メンタルコーチを連れてスペインに行ったんだ」

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「僕のために働いてくれる人が7人いた。彼らが僕のことをいろいろ助けてくれたから、9か月は5か月くらいに感じたよ。こんなに早くアヤックスでプレーできるようになるとは思っていなかったけれど、ようやくチャンピオンズリーグでプレーできたんだ」

「ベシクタシュとのアウェー戦だったけれど、いい雰囲気だった。『くそったれ!また戻ってこれたぞ!』と思っていた。すべてが上手くいったことについて神様に感謝しているよ。仕事に戻ってこれたんだ」

■目指すは世界一のGK

onana-cl-ajax(C)Getty Images

復帰直後のオナナは「世界一のGKになるために、変わらぬマインドセットのまま戻ってきた」と再び世界の第一線に戻れることを強調した。

その野望は非現実的ではない。実際、2019年のバロンドール候補にリストアップされていたのだ。

チェルシーの守護神であるエドゥアール・メンディが今年『フランス・フットボール』主催のヤシン・トロフィーにノミネートされたということもあり、自身が世界一のシュートストッパーであることが認められる日もそう遠くないだろうとオナナは感じている。

「黒人のGKが賞を勝ち取るんだ。今日か明日か、それとも明後日かは関係ない。そのうちその日はやってくる」

「メンディは近いところまで行ったし、素晴らしいシーズンを送っていた。今回は獲得できなかったけれど、次回は受賞することを願っているよ」

「初めて候補に上がったのは僕だし、受賞するために戦いたいと思っているよ。僕たち全員にとってよい挑戦だと思っている。この世代には素晴らしい若手GKが山程いるからね」

「誰かはそこにたどり着くだろうね。(ジャンルイジ)ドンナルンマがもう一度受賞するかもしれないけれど、最後まで戦わなくてはいけないね」

■ピッチ外でも精力的な活動

onana-cameroon(C)Getty Images

フットボールでの野心の他にも、オナナにはピッチの外にも関心を寄せている。

オナナはアンドレ・オナナ財団を通じてカメルーンと強い関係を保っている。財団は目の見えない子どもたちを援助するものだ。

この活動をさらに支援するために、サッカー選手が給与の1%以上を慈善基金に寄付することを奨励する運動「コモン・ゴール」に参加した。「カメルーンで育ったことは僕にとって良いことだった」と話すオナナ。このように続ける。

「カメルーンは貧しい国で、多くの人にとっては簡単ではないという現実もわかっている。人々を助けて、笑顔にすることが人生で一番のことだ」

「目が見えない子どもや両親がいない子どもがいる。そういった子どもたちが夢を追うことは難しい。このプログラムに参加することは、厳しい一年を終わらせてよりよい一年を迎えるためのひとつの方法なんだ」

直近の目標について聞いてみた。オナナは今や自由の身。1月9日からヤウンデ(カメルーンの首都)でスタートしたアフリカネイションズカップで代表として戦っている。

オナナは「カメルーンには優勝のピースがすべて揃っている。僕たちは誰も恐れない。この国に誇りをもたらすためにすべてを捧げるよ」と意気込んだ。

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