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メキシコのエースを完全封殺。強烈な“個”を無力化するためにU-24日本代表が遂行したミッション

■左サイドの連係で任務遂行

 グループリーグ突破に向けて重要な第2節。メキシコ戦で鍵を握ったのは、日本から見て左サイドの攻防だった。

 メキシコの右サイドはチーム随一のストロングポイントと言っていい。右のウイングに入る21歳のディエゴ・ライネスは、メキシコの未来を担う存在。巧みなドリブルと圧倒的な攻撃センスで初戦のU-24フランス代表戦でも切れ味鋭いプレーを見せており、強烈な個の力で勝利に貢献していた。

 また、右サイドバックのホルヘ・サンチェスも、すでにA代表の常連となっているプレーヤー。後方からの追い越しが脅威で、彼とライネスのコンビネーションをいかに抑えるかが失点を減らすためのポイントだった。

 このミッションを任されたのが中山雄太と相馬勇紀だ。対人能力に秀でた中山とハードワークできる相馬を縦に並べ、ボランチやCBのカバーもありつつ、相手の個を組織で封じにかかった。

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 注視したのはライネスにスペースを与えないこと。「ボールを良い状態で持った時に特徴が出る選手」と真正面で対峙することになった中山は、守備面で意識したことを明かす。

「ボールを持たれた時には、まずは(スピードで)ぶっちぎられないこと。なおかつ左利きなので右足に限定したり、もしクロスを上げられる状況になったら少しでも制限をかけていこうと思っていた」

 粘り強い守備を続けた。相手のドリブルにも、まずは個の守備で対応。「10番に入ったときにはしっかり縦を切って、僕がはさみ込む時間を作ってくれた」と相馬が言うように、相手を停滞させることで仲間の戻る時間を稼いだ。加えてサンチェスが上がってきた時にはダブルチームで応対し、相手を自由にさせなかった。

■相手指揮官もたまらず交代

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 一方で、カットインを狙ってくるようならボランチがコースを防いだ。

「とりあえずカットインさせてもシュートを打たせなければ問題ないかなという感覚があった。カットインした時にはなるべく足を出すよりかは、正対して縦パスなりを入れさせてということを意識していたし、そこは我慢強くできたと思う。(中山)雄太選手も少し中を切って縦で一対一の対峙をしてくれた。心強かったです」(田中碧)

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 結果、多少危ういシーンこそあったが、「ほぼ完璧に近い形ではめられるシーンや次のプレーを限定できる状況を作れた」(中山)ことで試合を通して相手のエースを完全封殺。たまらず相手指揮官も67分でライネスを交代させたが、フランス戦のような存在感を発揮させないままエースをピッチの外へと追い出して見せた。

「メキシコだけではないけど、(酒井)宏樹選手ともよく話しているのが、僕らは相手の一番上手い選手と対峙することが多い。そこで僕らがやられたら試合を持っていかれるという意識で取り組んでいる。今日の結果には手応えもありつつ、改善点も絶対にあるので、結果がついてきた中で反省できるような今の状態がすごく嬉しい状況だと思います」(中山)

 チャンスをしっかりとものにした久保建英や堂安律らが攻撃で個の力を見せたように、相手のエースを抑えた中山らも守備面で個の力を示した。個でも組織力でも相手を上回った日本。メキシコを破り、グループリーグ突破に一歩近づいている。

取材・文=林遼平

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