Gabriel Martinelli FM GFXGetty/Football Manager

NxGn:原石を発掘せよ!『Football Manager』に学ぶスカウティング術

サッカー選手の移籍に関わる界隈は、ともすれば胡散臭いビジネスに見えてしまう。

最近では、移籍にまつわる仕事はすべて代理人によるものであることが多く、選手本人と同じくらい有名な代理人までいるほどだ。彼らがひとつのパイを巡って争う状況が広がる。

しかし、業界の内部を少し覗いてみれば、昔ながらのスカウティング方法がまだ深く根づいているのがわかるだろう。友人同士のツテで約束事を進めるのが非常に好まれている一方で、長期間に渡るリサーチやバックグラウンドの厳格なチェックに基づいた仕事があるのも事実だ。

そのようなアプローチは必ずしも結果に結びつくわけではないが、スカウト部門はリサーチを遂行し続けている。100%成果にならなかったとしても、クラブにとっては非常に有益な活動なのだ。

■マルティネッリ発掘の経緯

Gabriel Martinelli ItuanoMiguel Schincariol

ひとつ例を挙げるならば、ガブリエウ・マルティネッリのケースが最も適切だろう。まだ10代のブラジル人は、夏にアーセナルに加入した時には「未知の選手」であったが、その後の活躍はセンセーショナルなインパクトを与えた。

マルティネッリは1年弱前まで、イトゥアーノという州リーグに在籍するクラブに在籍する選手であった。しかしガナーズデビューを迎えた今シーズン、全公式戦で10ゴールを挙げる活躍を見せている。10代の選手がガナーズで二桁得点を挙げたのはニコラ・アネルカ以来20年ぶりのことだ。

マルティネッリが北ロンドンにもたらしたインパクトは、フロックではない。高いクオリティのスカウティングがその一端を担っているのだ。

Martinelli Arsenal GoalGetty

アーセナルのスカウト・ネットワークはマルティネッリを何百時間にもわたってウォッチしてきた。ロンドン・コルニー(北ロンドンに位置する地区)にある映像室を駆使したり、直接赴いたりもした。獲得を決断する前には、ピッチ外での態度についても分析した。

フランシス・キャギガオは10年以上前、セスク・ファブレガスをアーセナルに呼び寄せた際に大きな役割を果たし、数か月にわたるリサーチの末に決断を下す立役者となった人物だ。

アーセナルの国際スカウト部門で部長を務めるキャギガオは、マルティネッリ獲得の最終決定を下す前に、イトゥアーノでのプレーを直接見るために南アフリカに渡っていた。しかし現地には、最終合意前に状況を精査するべく彼が派遣したスカウトたちがすでに在駐していた。

マルティネッリの例が示しているのは、高いクオリティを持つスカウティング・ネットワークを世界中に広く張り巡らせることが重要だということだ。

「フランシス・キャギガオがまた当てた!レジェンドだ!」とツイートしたのはファブレガス。1月のチェルシー戦でマルティネッリが60m以上も独走し、記憶に残るゴールを挙げた直後のことだ。

普段は注目を浴びないスカウト陣が北ロンドンで公に認知された、珍しい瞬間であった。

アーセナルへ移籍する前は、マルティネッリはヨーロッパのトップクラブに全く知られていなかった。マンチェスター・ユナイテッドやバルセロナに招集され、プレーしたこともあったが、結局は完全移籍には至らず。グアルーリョスからやってきた若者はその程度の才能と見限られていた。

一方、アーセナルは獲得をためらわなかった。数か月のスカウティングを経てキャギガオは、この若いFWがイングランドで成功するに足るクオリティを備えていることを確信していた。そしてガナーズはマルティネッリの獲得に乗り出し、600万ポンド(約8億4000万円)で契約を締結したのだ。

契約締結時には不満の声もあった。このティーンエージャーはアーセナルのユースチームに合流することになるか、もっと悪ければすぐに期限付き移籍で放出されるのではないかと大半の人は予想していたからだ。

■予想されていた躍進

Martinelli GFXGetty/Goal

しかし、『Football Manager』でチーフ研究員を務めるブラジル人、パウロ・フレイタスにとっては、この若いFWの欧州移籍は何の驚きでもなかったという。

マルティネッリの才能はすでにブラジル国内では周知のことであり、フレイタス自身はロンドンへ到着するずっと前からこの才能に気が付いていた。

『Football Manager』はクラブマネジメントを経験できるシミュレーションゲームだ。サッカーゲームのトップであり続け、一時代を築いている。そして、Football Managerのスカウティングに関わるネットワークは、いくつかのヨーロッパのビッグクラブも利用しているという。

フレイタスは『Goal』の取材に応じ、Football Managerの組織について語る。

「国やリーグを担当するチーフ研究員と、特定のチームについてリサーチする研究助手がいます。例えば、私はブラジル担当のチーフ研究員で、フラメンゴについてリサーチする研究助手がついている、といった具合です」

「スカウティングチームの規模はまちまちで、小さい国の担当は2人しかいませんが、一方で大きいリーグや国の中には何百人も担当がついているところもあります」

「それぞれの研究員は様々なクラブ、リーグや国を担当していますが、情報を常に交換し合っています。そうすることで、特定のリーグや国を過剰評価したり過小評価したりしてしまう可能性を回避することができるのです」

■選手の評価方法とは?

加入時の能力という観点からだけではなく、選手の持つポテンシャルの高さまでうかがい知ることができるのが特徴だ。これはひとえに、Football Managerのスカウティング・ネットワークが世界中に張り巡らされているおかげである。

それでは、世界トップクラスの才能が注目を浴び、クラブに適応できることをどうやって保証しているのだろうか。『Football Manager』のプロセスは、世界有数のクラブのスカウティング方法とは少々異なるという。

「若干の違いはありますね。実際のクラブのスカウトは、選手がチームのニーズに合わせて選手を評価していますが、『Football Manager』では選手とチーム全体の両方を見て評価しています」

「ですから、実際のスカウトと比べれば選手個人にはそこまで注目していません。ですが、数人の選手に焦点を当て、選手たちがうまく作用し合えるかどうかという観点で着目しています」

「(選手をウォッチする)回数は状況によりけりです。あらかじめ決まっているわけではありません。しかし、少なくとも何回かはウォッチしようというのが基本の考え方です。そして、シーズン中に選手にまつわる状況が変わり次第適宜見直しています」

「私たちが集めた情報は数値に集約しデータベース化され、選手の能力を評価するパラメータとなっています」

「例えばいい成果を挙げた選手は14点と評価されるとすれば、ワールドクラスの活躍を見せた選手は18点というスコアがつく、といった具合になります」

EMBED ONLY Martinelli FM19 StatsFootball Manager現在では、クラブが海外のよく知らない若手と契約した際には、新加入選手の情報を得ようと『Football Manager』を参考にするサポーターも多い。

世界中の若き才能の獲得競争がこれまでになく熾烈になっている。そのため、契約合意への幸先のよいスタートを保証するためには、関係筋から内密に情報をキャッチすることが重要だ。Football Managerにとっても状況は同じである。

「ゲームのプレー人口によって状況は国ごとに違いますが、そういうことも時々ありますね」

「フルミネンセのユースでプレーしていたジェルソンの場合ですが、クラブでトッププレーヤーに成長した後、ヨーロッパに活躍の場を移しましたが、成功はしませんでした」

「ですが、今や彼はフラメンゴのキープレイヤーです。代表招集が期待されています」

それでは、マルティネッリの場合はどうだろうか?フレイタスはこう話す。

「私がリオにいる間彼はサンパウロ州でプレーしていたので、私が直接スカウティングしたわけではないですが、イトゥアーノのユースにいたときから成長ぶりを見続けていましたよ」

「コパ・サンパウロというユース最高峰の大会でプレーしたときには、彼のポテンシャルははっきりと見て取れました。チームはそこまでよい成績ではなかったのにも関わらず、です」

「数か月後に州リーグでプレーしたときには、チームを準々決勝に導きました。当時まだ17歳の若さにして、これだけの偉業を達成しているのです」

プロクラブと同等、もしくはそれ以上のスカウト力を誇る『Football Manager』。サポーターはもちろん、クラブの首脳陣も選手評価の参考にしていく、という流れは加速していきそうだ。

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