フランス・プロリーグ機構(LFP)は、給与未払問題に揺れるパリ・サンジェルマン(PSG)とフランス代表主将FWキリアン・エンバペに対し調停を勧告したようだ。
現在給与の未払い問題に揺れるエンバペとPSG。エンバペ側は6月30日に同クラブを退団する前に受け取る予定だった5500万ユーロ(約88億円)分の給与+ボーナスを受け取っていないと訴えたが、PSG側は選手との間に交わされた金銭的合意に基づいて正当な行動だと主張していた。そして両陣営の当事者は9月11日にLFP法務委員会で会合を開くことが伝えられていたが、『AFP』によると、その際に調停を勧告されたという。
しかし『AFP』は、エンバペ側はLFPの調停勧告を拒否したと伝えている。調停に進むかどうかは当事者の判断に委ねられているが、この調停を拒否する場合、エンバペ側は労働裁判所へと訴えを起こす可能性が高いようだ。
なお、PSG側は今回の会合後に「本日の委員会で行われた2時間に及ぶ審理に満足している。クラブの口頭および文書による議論を踏まえ、委員会は当事者間の調停を主張した。PSGとしてもこれを何カ月も前から求めてきた。そして委員会は今、選手に調停プロセスを検討するように要請している」と声明を発表。LFPの主張を支持している。
■PSGの主張と雇用法専門家の意見は…
『The Athletic』によると、PSGは2023年8月11日にエンバペの弁護士側に合意案を提出したと主張。昨夏にエンバペは契約の問題でチームを外れていたが、2023-24シーズンに5500万ユーロ分のボーナスを放棄することでチーム復帰を果たしていたという。しかしこの合意案は、フランスサッカー憲章で義務付けられた署名もリーグへの送付も行われなかった模様。この理由についてPSGは、ナセル・アル・ケライフィ会長とエンバペ側で口頭合意があったこと、またルイス・エンリケ監督やルイス・カンポスSD(スポーツダイレクター)立会のもとで行われたと主張しているようだ。
さらにこの際、2つのシナリオについても話し合われた模様。1つは、エンバペは契約を延長するが2024年夏に1億8000万ユーロ(約283億円)で退団し、8200万ユーロ(約129億円)のロイヤリティボーナスを受け取るもの。2つ目は、2024年6月にフリーで退団する一方で「ケース1で想定された投資収益率に合わせて、2023-24シーズンの報酬条件を下方修正する」というもの。『The Athletic』は、どちらのシナリオでもPSG側が9800万ユーロ(約154億円)分を得る権利があり、エンバペが労働裁判所へ訴えを起こした場合、PSGがこの金額を追求する可能性があると伝えられている。
なお、フランスの雇用法専門家であるデボラ・ダビド氏は『The Athletic』に対し、「フランスの法律では毎月給与を支払わなければならない。たとえ最終的に支払う金額を相殺するためであっても、給与を差し押さえることはできない」とコメント。他に承認された権利がない限り、エンバペ側は給与を受け取る権利があると主張している。